長時間労働が当たり前のような、「24時間戦う」時代はもう終わりました。
2019年4月から「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(働き方改革関連法)」が施行され、「長時間労働の是正」が進められるようになりました。
とはいえ、それは「表向き」という企業も多いようで、仕事の持ち帰りや、部下を早く退社させるために上司が残務処理に追われるなど、弊害も起きています。
OECD(経済協力開発機構)の調査でも、欧米の平均睡眠時間は8.3時間に比べて日本人は約7.3時間しか寝ておらず、調査対象となった国では最下位の睡眠時間となっています。
昼食後に強い眠気に襲われ、デスクで昼寝したいと思ったという経験は誰でもあるでしょう。眠い状態で仕事を行なっても作業効率は上がらず、集中力が散漫になってしまいます。
その改善策として「パワーナップ=積極的仮眠」を推奨する大手企業が増えています。
そこで今回は、パワーナップとは何か、NASAが認めたパワーナップの驚くべき効果について詳しく解説します。
■パワーナップとは?
「パワーナップ」とは、昼寝やうたたねを意味する「nap」と、「power up(パワーアップ)」を掛け合せて作られた造語です。日本語では「積極的仮眠」と呼ばれています。
このパワーナップとは、社会心理学者ジェームス・マース氏が提唱した昼間の短時間仮眠を指しています。
通常私たちがとる夜の睡眠に加えて、日中に短時間の仮眠をとると睡眠の効用が最大化され、集中力が増し、疲労が緩和されるというのがマースの説です。
記憶は脳が休んでいる間、つまり眠っている間に定着するとか、睡眠によって情報が整理される、人間の体は眠っている間に効果的に修復されるなど、睡眠の効果と重要性に関する研究は多くあります。
パワーナップの効果も大学や研究機関で様々な検証が行なわれ、その効果に科学的裏付けが成されています。
要するに「パワーナップ」は、「効果的な昼寝」のことですが、仕事のパフォーマンス向上に直結する習慣として、Google、Apple、Microsoft、NIKEなどの世界的企業では、オフィスに仮眠スペースを設けたり、睡眠装置を置くなどして積極的に推奨しています。
■NASAの研究結果で実証されたパワーナップ
NASAによる研究結果では、「パワーナップは効果的である」ということが明らかになっています。NASAの仕事、特に宇宙飛行士や航空機のパイロットには極度の集中力が求められます。
そこでNASAは1994年に、集中力を維持させるための睡眠研究「Naps」を行ないました。
具体的には、航空機のパイロットを「パワーナップをとる人、とらない人」の2組に分け、その後の認知力や注意力を計りました。結果、認知力は34%、注意力は54%も向上したと報告されています。
■昼食後14時~16時に眠気が来る原因
昼食後に眠くなる原因として「満腹になって幸せホルモンが出ている説」「消化に血液が使われ、脳への血流が少なくなっている説」などが有名ですが、それらの医学的根拠はありません。
そもそも、生命にかかわる脳への血流が少なくなってしまうのは、大変危険な状態です。
実は、食後の眠気に関する研究でこの謎が明らかになってきたのは1990年代のこと。ようやく脳内にある「オレキシン作動性ニューロン」と食後の眠気の関係が判明されました。
オレキシン作動性ニューロンから分泌される物質をオレキシンといい、以下4つの特徴を持っています。
1、人間の覚醒状態に関与する物質である
2、オレキシンはニューロンがONのときに分泌される
3、ニューロンがONの場合は覚醒状態、OFFの場合は次第に睡眠状態へと切り替わる
4、ニューロンは身体の栄養状態によって活動が切り替わる
食事のあとは、血糖値が上がります。上昇幅は食べたものによりますが、血糖値が上がると脳脊髄液中にあるブドウ糖の濃度も変わり、ニューロンがスイッチをOFFに切り替えるのです。
するとオレキシンが分泌されなくなり、身体は次第に睡眠状態へと誘われていきます。逆に、血糖値が低くなるとニューロンがONへと切り替わり覚醒状態へと誘われるのです。
■パワーナップの効果
実際、昼寝は夜の睡眠の3倍の効果があるとされています。なぜ、ここまで効果があるのでしょうか。それは入眠時に訪れる、深い眠りのノンレム睡眠に秘密があります。
ノンレム睡眠は、深さに応じて4つのステージがあります。
カリフォルニア大学の神経科学者マシュー・ウォーカーの研究では、入眠20分ほどで訪れる軽い睡眠レベルの「ステージ2」は、脳内の“キャッシュ・メモリ”がクリアされて、情報を整理・記憶したり、優先順位をつける脳のワーキングメモリが強化されることが明らかになりました。
これが短時間睡眠で、頭がスッキリ冴えわたる理由の一つです。
ただし、仮眠が30分以上になると、ステージ4に進み、深い眠りに到達してしまいます。すると、寝覚めが悪く、起きてからもボーッとした状態に。パワーナップは20分前後の短時間で済ませることが、スッキリ目覚める最大の秘訣です。
「パワーナップ(積極的仮眠)」は食後の眠気に大きく効果があるといわれており、そのメリットは以下の通りです。
● 疲れが取れる
● 認知力、注意力が上がる
● 作業効率の向上
現に日本でも、厚生労働省が2014年3月に公表した『健康づくりのための睡眠指針2014』において、午後の早い時刻に30分以内の短い昼寝をすることは眠気による作業能率の改善に効果的であると書かれています。
■パワーナップの効果を最大限に引き出す6つの方法
パワーナップの効果を最大限に出し、メリットを活かすにはいくつかルールがあります。
以下の項目を参考にしてみてください。
1、仮眠時間は20分~30分未満
眠りの深さには、浅めの「レム睡眠」と深めの「ノンレム睡眠」の2つがあります。
普段眠るときはこれら2つの睡眠状態が90分周期で訪れるのですが、眠り始めだけノンレム睡眠に変わる時間が30分と短くなっています。
そのため仮眠も最大でも30分未満にしておかないと、身体がノンレム睡眠に切り替わってしまい覚醒できなくなってしまうのです。パワーナップは「短時間で効果的な睡眠」を心掛けましょう。
2、体を横にして眠る、無理な場合は机に突っ伏す
パワーナップには脳だけでなく体の疲労をとる効果もあります。仮眠なので眠りすぎないようにあえてリラックスできない体勢で眠りたいという人もいると思いますが、効果を最大限引き出すためには体を横にして眠った方がいいと言われています。
30分未満でも、眠れば体も休めることができます。
そのため、本来は横になって寝た方が良いのですが、仕事場に仮眠室があるというところは少ないでしょう。もし横になって眠ることが難しい場合には、机に座って突っ伏して寝るようにしてください。
3、光を遮断する
光があるところで眠ろうとすると、眠気促進ホルモンと呼ばれている「メラトニン」の分泌が減ってしまい、眠りの質が悪くなります。普段の睡眠時に光を遮断するのと同様、パワーナップ時も光を遮断してください。
夜の睡眠でも同じことが言えますが、光と騒音は睡眠の質を大幅に下げます。
できるだけ静かなところ、照明を落とせるところで仮眠をとりましょう。オフィス環境ではデスクに顔を伏せ、ジャケットやタオルケット、ブラウンケットなどをかぶってしまうのも効果的です。
4、パワーナップの仮眠は午後3時までに
睡眠時間が20分で良いとなるとお昼休みでも十分対応は可能。午後の就業開始に合わせてリフレッシュというのが理想的です。というのも、パワーナップの効果は午後3時までの仮眠に限定されるという説が一般的だからです。
3時を過ぎてしまうと、夜の睡眠に影響を与えてしまい、不眠や睡眠障害につながるおそれがあります。大切な“本睡眠”とでも言うべき夜の睡眠時間に悪影響を与えるようではパワーナップとは呼べません。
5、仮眠前にカフェインを摂取する
コーヒーや紅茶に含まれるカフェインには覚醒作用があるといわれており、これらは飲んでから効果が現れるまで約20~30分かかるのが特徴です。
一方、パワーナップの適正時間も20~30分であるため、時間的にぴったり。パワーナップ前にはカフェインを取るようにしましょう。
6、同じ時間、同じ環境でとる
パワーナップとして仮眠を取り入れる場合は、できれば同じ時間、同じ環境で仮眠を取るのが望ましいようです。
パワーナップは、眠くなったときに20分眠れば復活という対処療法的な使用よりも、スケジュールに組み込んで計画的にとった方が効果を引き出せます。
また、会社で「やむを得ず眠っている人」を見ると、「仕事大変なんだなあ」と思うと同時に、「セルフマネージメントができていないのでは?」という疑問がわき上がってくることもあるでしょう。
眠っている側も罪悪感がありますよね。そうした職場への感情面での悪影響をなくすためにも、効果的なパワーナップがスケジューリングされている状態にしておくことが大切です。
■パワーナップで業績アップ、職場環境の改善を!
「日本人は働き過ぎ」「過労死」「ビジネスパーソンの健康リスク」と言った問題の文脈で必ず表れるのが「睡眠の重要性」を訴えるフレーズです。
よく眠れた朝はすっきりする、質の良い睡眠がとれればもっと効率が上がる、ということを実感している人も多いのではないでしょうか。
しかし、実際に“良い眠り”を得ようと思っても、「忙しすぎて、削るとしたら睡眠時間」「ゆっくり眠れるのは週末くらい」と断念していたのではないでしょうか。
短時間で効果が得られるパワーナップなら、誰でもすぐに実践することが可能です。職場で昼寝はちょっと抵抗がという問題はあるかもしれません。
まだ「眠る」ということが浸透していない企業であれば、思い切ってパワーナップを推奨し、そのためのスペースを設けてしまう方がよほど論理的です。
パワーナップがこれまで以上に社会に浸透すれば、働く人だけでなく、企業にも大きなメリットがあります。経営者やマネージメントに携わる方がパワーナップに目を向けることで、作業効率アップ、業績アップ、職場環境の改善に繋がります。
世界的企業が取り入れる注目の業務効率化メソッド、パワーナップ。個人の実践はもちろん、企業全体で取り組むことでさらに効果が上がること、間違いなしです。
■まとめ
企業として成果や結果を出すためには、社員がいかにストレスや疲労を軽減させた状態で働けるかにかかっているでしょう。
パワーナップの結果を出し続けている「グーグル」や「ナイキ」などの大手企業には仮眠室が導入されており、これらの企業ではパワーナップはもはや仕事の一環なのです。
日本でも徐々に浸透しつつありますが、「仕事中に寝るなんて」という声もあるようです。
しかし、パワーナップは仕事の効率を上げ、企業の成果を底上げするための取り組みになります。まだ導入していない企業の総務担当者も、導入を検討してみてはいかがでしょうか?
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