現在、ワークライフインテグレーションは、仕事とプライベートを切り分けて考える「ワーク・ライフ・バランス」 に次ぐ新しい考え方として知られるようになってきました。
ワークライフインテグレーションの考えを取り入れ、定着させることにより、企業、個人だけでなく社会全体にも様々な効果が期待できます。
今回は、ワークライフインテグレーションと、推進事例も含めて顧問という働き方について解説します。
■ワークライフインテグレーションとは?
ワークライフフインテグレーションとは、ワーク(職業生活)とライフ(個人生活)を別のものと分けて考えるのではなく、人生の構成要素としてあえて境界線を設けず柔軟、かつ統合的にとらえることで、双方の充実を求める働き方のことです。
仕事と生活を柔軟に統合する「ワークライフインテグレーション」は、仕事と私生活の2つでバランスをとるこれまでの「ワークライフバランス」を発展させた意味合いとなっています。
ワークライフインテグレーションは、慶應義塾大学の高橋俊介教授や経済同友会によって提唱された言葉で、「仕事もプライベートも人生の一部であると定義し、両輪を回すことで人生が豊かになるという考え方」です。
個人の生活の質を高めて幸福感を得ることができ、企業や社会全体では生産性向上や成長拡大などを狙えます。つまり、仕事と個人の生活それぞれがアップする相乗効果を期待できます。
■ワークライフインテグレーションが必要な背景
高度経済成長期の日本には「終身雇用」「年功序列」といった働き方が適していました。それは、働き続ければ年収が上がり続けると確約されていたからです。多くの社員は安定を求め、日夜働き続けました。
しかし、IT技術の登場によってグローバル化が進み、今までの「20世紀型働き方」では立ち行かなくなりました。
1990年代初頭にバブルが崩壊し、日本は「失われた15年」といわれる暗黒期に突入しました。さまざまな施策を講じるも、日本経済の悪い流れを断ち切ることは未だできていません。
スイスのビジネススクールIMDが発表した「世界競争力ランキング」を見ると、日本は1990年にランキング首位だったのが、1995年に4位、2000年に21位、そして2018年は30位まで順位が下落しています。
ワークライフインテグレーションを実現するために外部人材が求められる背景としては、最近の採用市場は完全な売り手市場で、特にマネジャー層の人材採用の難易度はかなり高くなっているからです。
仮に採用できたとしても、多くの会社は定着や育成といった人事課題をいくつも抱えています。
特に、ビジネスが急速に伸びている会社ほど、人材面での悩みを抱えていることが多いのが現実です。そこで、外部人材である顧問やプロに業務委託という形で優れたスキル・経験を持った方を即戦力で採用したいと考える企業が多いのです。
また、外部顧問に人材育成や人材マネジメントの役割を担ってほしいと考える企業も数多くあります。
■仕事にやりがいを感じている時は私生活も楽しい
今まで、仕事とプライベートはトレードオフの関係でした。しかし、ワークライフインテグレーションでは、仕事が充実すればプライベートも充実するというように相互に好循環をもたらします。
ワーク(仕事)とライフ(生活)をインテグレート(統合)させることで、多様で柔軟性のある生き方を設計できます。
私生活が充実している時ほど仕事が楽しく感じ、それぞれより意欲的に取り組む人は多くいます。仕事が休みのリラックスしている時間にふと仕事に活かせるアイデアが生まれ、仕事中に考えたアイデアよりも良い結果が出た、ということもあるかもしれません。
仕事、家庭生活の他、人生を充足させる要素である生きがいやコミュニティとの関係などにも注目し、仕事とそれ以外の人間の活動をインテグレート(統合)させることで、それぞれを充実させて、個人の人生を幸福に過ごせるようになります。
■ワークライフバランスとの違い
ワークライフバランスという言葉をよく聞くと思います。ワークライフインテグレーションは、ワークライフバランスの考え方を発展させた考え方ですので、この二つがまったく違うという訳ではありません。
ワークライフインテグレーションはワーク・ライフ・バランスを発展させたもので、根本の「人生を豊かにする」という目的は変わりません。
ワーク・ライフ・バランスは仕事とプライベートを切り分けて考えるのに対し、ワークライフインテグレーションは、境界線をなくし、もっと俯瞰的な視点から生き方を設計します。
ワークライフバランスは、仕事と生活を両輪にたとえ、双方でうまくバランスを取る働き方を目指しました。しかし、どちらか片方に偏りすぎた場合は、もう片方を犠牲にするやじろべえのような不安定な構図、どちらかを選ばなければならないことをイメージする人が多かったのではないでしょうか。
一方、ワークライフインテグレーションでは、仕事と家庭、そのほか個人の生き方そのものを一つのものとして捉えます。
すべてを別々に考えるのではなく、敢えてそれぞれの要素の線引きをしません。
そうすることで、仕事が家庭生活の満足感につながり、趣味でリフレッシュして気力が充実し、仕事への集中力ややりがいがアップします。このような相乗効果が期待できるのです。
■企業から見た「ワーク・ライフ・インテグレーション」の3つのメリット
企業が得られるメリットとしては、私生活で充実感を感じリフレッシュした社員がもたらす新しいアイデアや生産性の向上、ダイバーシティの推進が挙げられます。
1、新しいアイデアがうまれる・生産性の向上
これまでの歴史を見ると、日本では「長時間労働=勤勉」と捉えてきた面があります。
戦前まで産業のメインであった農業・水産業といった第一次産業や、戦後から高度経済成長期に増加した製造業等の第二次産業など、実際に人間の手によって物が生産・製造される時代にはマッチした働き方でした。
しかし、第三次産業のサービス業など、人とコミュニケーションをとる機会が多い職種は、顧客それぞれによって全く異なるニーズが要求され、相手の真意をうまくくみ取るような感性が必要になってきます。
仕事と生活を線引きしないことで、プライベートの時間で得た新しい知識や体験、出会いを仕事に活かしていくことができます。幅広いニーズに応えることが可能となり、新しいアイデアがうまれるきっかけにも役立ちます。結果、企業としての生産性向上も期待できます。
2、ダイバーシティの推進
「仕事」と「生活」の統合である「ワークライフインテグレーション」を実現させるためには、様々な働き方に対応できる人事制度の見直しなども必要になってきます。
従業員のより働きやすい環境が整うことで、多様性のある働き方「ダイバーシティ」の推進にもつながります。
現代のビジネス環境では、顧問やコンサルタントなどから、新たな視点や新たな情報を迅速・的確に取り入れることが欠かせません。
また、現役で大手企業の管理職などに従事している30代、40代の働き盛りのハイキャリア人材に、「複業」の外部顧問として、一定期間の協力を依頼する企業も出てきています。
3、働き方改革などの影響で複業できる方が増えた
最近では、働き方改革などの影響で複業できる方が増えてきており、企業が「複業顧問」を雇いやすくなったのです。
その結果、現役でバリバリ働きながら、別企業の顧問を務めるという方が増えてきています。
現在、フリーランスで顧問をしている方は人口全体では5%しかいないのですが、一方で、現在顧問に就いていない方のうち、副業で顧問に就きたい方は76%もおり、実は現役の若い世代でも顧問への意欲が高い方が多いことが分かっています。
自社で不足している知識や経験、ノウハウ・技術を外から補うことができるフリーランスの顧問やプロフェッショナル人材は、企業にとって大きなメリットにつながる可能性があります。
■個人から見た「ワークライフインテグレーション」の3つのメリット
個人から見たメリットは大きく2つあります。「人生をより幸せに生きることができる」「柔軟な働き方ができる」です。
1、人生をより幸せに生きることができる
「仕事」と「生活」を統合して相乗効果を得るということは、いろいろな解釈ができます。
例えば、休日にしっかりと体を休めることができ、プライベートの時間が充実しているからこそ、その分仕事の生産性を高めることができるというのも一つです。
仕事と生活(家庭)の壁をなくすということは、優先順位をつけるストレスもなくなります。結果として、どちらも充実感を持ちながら毎日を過ごすことができるでしょう。
幸福感に繋がると言われている「自己実現」においても、自分の人生や生き方を大切にし、仕事とともにずっと続けていく「インテグレーション(統合)」が重要なのです。
2、柔軟な働き方ができる
「ワークライフインテグレーション」を取り入れている企業は、時短勤務・在宅ワーク・フレックスなど、柔軟な働き方を取り入れているところが多数です。
その結果、自分の生活にあった働き方を選択していくことが可能です。
仕事とプライベートに境界線がないため、休みたい時に休めます。残業して無理やり終わらせることがなくなり、企業全体の生産性が向上します。
プライベートの時間も柔軟に確保できるので、ストレスフルな状態から解放されます。
3、生産性が向上する
ワークライフインテグレーションは、仕事とプライベートに線を引く必要がないため、自宅に仕事を持ち込む、いわゆるリモートワークや在宅勤務といった柔軟な働き方ができます。
育児中や介護中の方、療養中の方など、働きたいけど働けない人も、自分の生活レベルにあった働き方を選択できます。
仕事とプライベートに境界線がないため、休みたい時に休めます。残業して無理やり終わらせることがなくなり、企業全体の生産性が向上します。プライベートの時間も柔軟に確保できるので、ストレスフルな状態から解放されます。
■社会全体に波及する効果
ワークライフインテグレーションが広まることにより社会に及ぼす影響は、個人が生き方を変えることにより社会に活力が生まれ、これまでとは異なるパターンの消費や、少子化対策の効果も期待できることが挙げられます。
余暇を過ごすための消費はレジャーや外食がメインでしたが、学びなおし(大学院への通学)による学習費やコミュニティ活動をすることで発生する消費が拡大することも考えられます。
日本では大学を出て働き始めると、企業の研修以外に学びの場を持つ機会がほとんどありません。ワークライフインテグレーションを取り入れることで、有給休暇を使い、大学院や異業種の人の集まるセミナーに参加し自己啓発を行うという選択もできます。
社会全体の流れがわかることで、新たなアイデアがうまれたり、共通の目的を持った新たなコミュニティに属して学習することで、人間としての成長にもつながります。
また男性の育児休業取得率についても、育児を通して男性が新たな経験を得ることや人生を充実させることで、育児休業後の仕事の取り組み方ややりがいにつながります。
また、男性目線での新しい商品の開発、消費の拡大も期待できるでしょう。
ワークライフバランスからワークライフインテグレーションに変化していくことで、休暇の使い方の幅が広がります。社会・コミュニティとのつながりのためのライフスタイル変更が休暇取得意欲につながり、結果として政府の有給取得率目標70%に近づいていくのではないでしょうか。
■ワークライフインテグレーション推進の3つの注意点
ワークライフインテグレーションは従業員の幸福感と企業の成長の相乗効果も狙うものですが、言葉の受け取り方によっては「私生活全てを仕事につなげる」という誤解を生みやすい一面があります。そこで、推進には以下の注意が必要になります。
1、自己管理能力が重要になる
ワークライフインテグレーションとは、仕事と私生活双方の充実を狙うもので、決してすべてを仕事につなげる考えではありません。
これまでの評価方法が「労働時間」を重視しているようであれば、人事担当者や経営者は人事制度を見直し、「成果」による評価に切り替えるよう必要があります。
仕事とプライベートの境目がないため、従業員は今まで以上に自己管理能力を問われます。自己管理能力が低い人は、慢性的に長時間労働に陥り、プライベートの時間を確保できなくなる恐れがあります。
2、制度の目的を理解してもらう
ワーク・ライフ・バランスと同じく、「従業員の人生を豊かにする」ことが本目的です。「仕事中心の生活をしてほしい」と誤解されないよう、継続的に社内向けに説明会を行うなどして啓蒙していきましょう。
管理システムを設計することは重要ですが、社員の行動を過度に制約する仕組みは逆効果で、ワークライフインテグレーションが上手く機能せずに形骸化します。社外でも社内と同じ状態で仕事できる環境を整備することが重要です。
3、従業員を信頼し「管理しない」ことが重要
ワークライフインテグレーションには、経営者従業員全ての人の思考の転換が必要です。
それにはまずリーダーが率先してワークライフインテグレーションを成し遂げること、自らがその成功例を示して行くことが、後に続く社員の理解につながります。
ワークライフインテグレーションの推進は、政府が推進する「仕事と生活の調和」の数値目標達成のためにも有効な手段になりましが、ワークライフインテグレーションの推進は、現行の休暇制度などを利用し、リーダーが率先して体現することが欠かせません。
■社員の評価制度を設計するのが難しい
これまでにワークライフインテグレーションを推進している企業の例を見ても、もともとある制度を拡充させていることがわかります。
夏期休業のような大型休暇と一般休暇を連続取得できるようにするなど、既存の休暇制度の範囲の拡大や、補完する制度を見直すだけでも十分にワークライフインテグレーションにつながります。
しかし、ワークライフインテグレーションは、従業員に多様な働き方の選択肢を提示できますが、企業側は平等に社員を評価することが難しくなります。
ですので、導入には、綿密な評価制度の設計が重要になります。
長期休暇を労働者全員に取得させるためという目標だけをとっても、年ベースの取得計画の調整や、人員配置計画、チーム内での業務の共有方法など、多くの人材マネジメントの課題が発生します。
人事担当者や経営者は新しい制度を導入しようととするのではなく、自社の制度と課題を見直し、職場環境や制度の運用方法など課題解決をすることが重要です。
■まとめ
ワークライフインテグレーションとは、個人の人生観を軸に仕事とプライベートを統合させ、双方の充実感を高めることに繋がります。企業のメリットは従業員が私生活を充実させることで、創造的なアイデアを産み、さらに生産性の向上も期待できることです。
日本は少子高齢化を迎えています。今後、ますます労働人口は減り、外国人労働者やシニア世代、現役ママ社員など、多様な人材を活用することが必須になります。
従業員の人生を充実させることは企業の成長にとっては縁遠いことに思えますが、長期的に見れば実は重要なことです。
ワーク・ライフ・バランスは、仕事とプライベートを区別する働き方ですが、近年は、仕事とプライベートを統合して考える「ワークライフインテグレーション」という働き方に注目が集まっています。
この考え方が主流になった背景には、「労働人口の不足」が挙げられます。シニア世代、外国人労働者、ママ社員など、多様な人材を有効活用することが必要になっています。
人材が多様化すれば、働き方や生活のニーズも多様化します。今までのように出社を義務付ける画一的な労働条件では上手く機能しません。リモートワーク、フルフレックス制度、ワーケーション、フリーランスの活用など、さまざまな働き方の選択肢を用意することが重要です。
■最後に
日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」では、ワークライフインテグレーションの取り組みの一環として、年齢を問わず、専門知識や経験が豊富なハイキャリア人材に対して、フリーランスや副業として、「企業顧問」や「複業顧問」になるという選択肢を提供しています。
顧問とは、「豊富な専門知識や経験に基づいて、経営陣や社員に実務的な助言をする仕事」です。
経営顧問は、中・長期にわたる事業計画の策定や人事・組織の改革など、現在抱えている経営上の課題の分析や解決に向けてアドバイスや実行支援サポートを行うのが主な役割です。
具体的には、新規事業の立ち上げや海外進出の提案、利益率向上についての施策などが含まれます。
経営顧問には、過去に同じ業界で優れた実績を示した経営者や役員の経験者などが選ばれる傾向がありますが、これはその人の持つ業界内での影響力や人脈コネクションを活かした大手企業の役員クラスとの商談機会の創出や効果的なアドバイスが期待できるからです。
それだけに、外部顧問やプロ人材の導入は、自社の経営課題とプロ人材のスキルなどを鑑み、よく見極めた上で慎重に行なわなければなりません。顧問契約するメリットの方が圧倒的に大きくですが、顧問やフリーランス人材に仕事を依頼することに懐疑的な会社や意見もあります。
日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」に相談しながら、適材適所で顧問やプロ人材を設置することで、ワークライフインテグレーションを実現するための知見をフル活用できる体制を整えましょう。
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