新規事業の立ち上げや事業方針を検討する際に、競合はどの企業か、自社の立ち位置はどこか、などを把握しておきたい時に役立つ競合調査になります。
しかし、競合調査の結果、強力なライバルとの闘いと避ける方向性を導き出す結果に至る可能性もあります。また、沢山の競合と戦うフィールドを拡大し過ぎると自社の優位性が薄れてしまうこともあります。
そこで今回、競合調査の方法やコツについて解説します。
■競合調査とは?
どんな商品やサービスも、他に先駆けてビジネスを始めた頃は、競合が少なかったはずです。そのため、ある程度の顧客を獲得することができ、売り上げを伸ばすことが可能でした。
しかし、新規サービスがヒットすればする程、その市場は早々にレッドオーシャン化してきます。
なぜなら、儲かる市場には必ず新規参入が相次ぎ、次第に他社が参入し競争が激化してくるからです。その結果、市場がコモディティ化してしまい、ライバルとの値下げ競争に陥ります。
そうなると独自のサービス、新たな機能や顧客に役立つ価値など、あの手この手で他社との差別化を図らなければ生き残ることが難しくなります。
そのような際に競合調査を行うことで、他社の商品やサービスの強みや弱みを把握するのに有効です。同義語として、競合分析とも呼ばれています。
競合調査が必要なシーンとしては、新規事業の立ち上げ時や既存サービスの競争優位性が失われ、新たなポジショニングが必要なケースになります。
競合他社の商品やサービスをベンチマーキングすることにより、自社の立ち位置や強みが何なのかを確認し、自社が狙うべきターゲットや価格設定などを絞ることが出来るようになります。
特にベンチャー企業の場合には、経営資源が限られているため、今現在自分たちの事業がどのような競争環境にあり、自社がどのようなアクションをすべきであるかを想定し、その想定を検証することが大事になります。
そのため、有効なアクションを組み立てるためにも競合調査は必要不可欠だと言えます。
ですので競合調査は、データを収集すれば調査が完了という訳ではありません。調査結果を自社と突き合わせることで、自社の強みや弱みを把握し、今後改善すべき課題などの洗い出し具体的な対策を講じアクションを行ないと何の意味もありません。
■競合調査をすべき理由
ほとんどの業界では、新興市場といえどもライバルとなるような企業が必ず存在しており、競争相手が全くいないマーケットは皆無だと言い切れます。
製造メーカーの中には、強力なパテントポートフォリオを武器に参入障壁を構築している優れた会社もありますが、その殆どが大なり小なり自社と類似した商品やサービスを提供して会社と競争環境の中にいるはずです。
ですので、競合他社を調べ、ポジショニングを「いかに上手くやるか」が優劣に繋がる一歩になると言えます。
しかしながら、時として「競合として認知していいなかった会社」や、異業種から市場に新たに参入してきた企業が、どうも自社の顧客を奪っているようではあるのだが、ビジネスモデルが自社と異なるため良く分からないこともあります。
■新たな競争優位性を構築するために
競争優位性の高い戦略を打ち立てるには、ライバルが具体的にどのような商品やサービスを提供しているのかをベンチマークし、多様な商品やサービスの中から自社を選んで貰う必要があります。
商品やサービスの品質さえよければ選んで貰えるとは限りません。
価格が安い、機能が充実している、手厚いサポートがあるなどのように、競合他社より優れているところがなければ、顧客に選んで貰うことは厳しくなるのです。
また、自社にとって有利な立ち位置を見極めるためには、価格競争だけでなく、他者が未だ参入していない分野で空白のブルーオーシャンを見つけることも大きなカギになります。このためには、
1、自社のビジネスモデル全体の再構築を考える。
2、経営管理や人事制度・体制を改善する。
3、仕入れや販売の商流を改善する。
4、商品の仕様やコスト、ラインナップなどを改良する。
5 販売戦略やサービスを改善する。
なお、競争環境が激化している際には、競合調査ばかりをしてもあまり効果が薄く、早い段階で事業の縮小やビジネスの撤退を考えた方が良いケースも多々あります。
そのような際は、別な分野で新規事業を立ち上げるために、マーケットの動向を把握するための市場調査を行うことも大事な取り組みになります。
■競合調査のやり方
競合調査をどのように実施すればいいのか、具体的な方法について解説していきます。
1、競合調査の目的を決める。
まずどのような目的で調査を行うのかを検討する必要があります。目的を明確にしておかなければ、調査を行うことを目的化してしまうため、調査結果を有効に活用できません。
また、網羅的に調査対象を絞らずに実施すれば、膨大な時間とコストを無駄にしてしまいます。効率よく実査するためにも、あらかじめ目的を明確にしておきましょう。
競合調査の目的が決まると、調査すべき項目も絞り込みやすくなります。
2、調査対象を明確にする。
次に、競合になる企業や商品・サービスなどを明確にし、調査対象を絞り込みます。
自社の商品やサービスの既存競合もしくは、今後競合となりうる企業を見極める場合は、商品やサービスの内容や訴求ポイント、ターゲット、提供にあたって与える価値や解決できることなどについて比較しましょう。
ただし、調査対象が多くなり過ぎると、ビジネスの多角化に繋がり強みが弱くなる可能性を引き起こすため、競合調査の対象としては、以下の項目を参考にして、3~10社程度に絞りましょう。
・類似商品、サービスを扱っている企業
・シェアのトップにいる企業・最も低い企業・成長している企業
・自社と同じポジションに位置する企業
・同じ価格帯で商品・サービスを提供している企業
・ビジネス基盤が似ている企業
・同じマーケティング戦略を実施している企業
・ターゲットの属性が同じで、シェアを拡大している企業 など
■競合調査のフレームワーク
ビジネスで利用しているフレームワークの中には、競合調査で活用できるものも多数あります。ここでは、競合調査を実施する準備段階や実査に生かせるフレームワークを紹介します。
効率よく調査を行うためにも、以下で紹介するフレームワークを活用してみてください。
1、ファイブフォース分析
ファイブフォース分析は、5つの脅威から事業環境を分析し、自社を取り巻く外部環境を明らかにする際に利用するフレームワークです。
5つの脅威とは、「販売者の交渉力」「購入者の交渉力」「新規参入者による脅威」「代替の商品・サービス」「競合」です。
競合との比較分析の実施により、価格の設定や商品戦略を決める際に役立てることができます。
2、4C分析
4Cとは、「Customer Value:顧客価値」「Customer Cost:顧客が消費する費用や時間」「Convenience:利便性」「Communication:企業・顧客間のコミュニケーション」のことで、4つの視点から分析する手法です。
4C分析により、顧客の視点から、自社の商品やサービスがなぜ選ばれているのかを客観的に分析する際に活用できます。これにより、自社の商品やサービスの訴求ポイントの洗い出しも可能です。
後ほど紹介する4P分析と併用して実施されるケースも多いです。
3、バリューチェーン分析
バリューチェーンは、「価値連鎖」を意味する言葉で、自社の強みを洗い出す際に活用するフレームワークです。
バリューチェーン分析の特徴は、企業活動を「主活動」と「支援活動」に細分化する点にあります。
主活動は、仕入れた原材料を加工して販売し、顧客の手元に届くまでの活動を指します。一方、支援活動は、主活動を支えるための活動を意味しており、資材の調達や技術開発などがその一例です。
分類した活動ごとに、強みや弱みを競合と比較することで、競合よりも優位になれる自社の付加価値を洗い出せます。
4、4P分析
4Pとは、「Product:商品・サービス」「Price:価格」「Promotion:販売促進」「Place:流通」のことで、自社のマーケティング戦略を立てる際に利用するフレームワークです。
また、競合他社との販売戦略や差別化につながる要素を比較分析する際にも活用できます。
5、SWOT
SWOTとは、内的要因となる「Strengths:強み」と「Weaknesses:弱み」のほかにも、外的要因にあたる「Opportunities:機会」と「Threats:脅威」を含めて分析できる手法のことです。
内的要因と外的要因の2×2軸に分けることで、競合と自社の立ち位置を整理できます。
6、Points of X
Points of Xは、競合調査後に、自社の差別化戦略を検討する際に有効なフレームワークです。
3つの視点(Difference:相違点、Parity:類似点、Failuer:脱落点)によって、分析を行います。
Points of Xの特徴は、競合と自社の強みを明確にするだけでなく、ないと選ばれないとされるポイントに加え、あると選ばれないポイントを同時に分析できる点です。これにより、過度な差別化戦略を避けることができるうえに、ターゲットの選択肢から外れることも防止できます。
■まとめ
競合調査は、競合先の強みや弱みを分析できるだけでなく、自社の強みや弱みを明確にし、競合との差別化戦略を立てる際に有効な手段です。
また、調査目的を明確にすることで、よりピンポイントの競合分析を実施できます。
ただし、調査を実施することを目的とするのではなく、あらかじめ仮説を立てておきましょう。その上で、仮説に基づいた調査項目を調査して分析し、仮説を検証するところまで行うことが重要です。
既存市場がレッドオーシャン化して来たと感じた際には、顧客ニーズがあることは明らかですが、既に多くの競合がひしめき合い、コモディティ化している状態にあると言えます。
大手企業で経営資源があるならば、新たなブルーオーシャンを見つけるか、それともレッドオーシャンで競合他社と血みどろの勝負するか、それぞれの競争相手の特徴を理解した上でビジネスに挑みましょう。
効率よく競合調査を実施したり、ビジネスモデルをピポッドするためにも、フレームワークや分析ツールを活用しましょう。
■最後に
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