演繹法と帰納法の違いとは?ビジネスで演繹法と帰納法を使うコツ

投稿日: 作成者: KENJINS運営会社社長 カテゴリー: 専門家インタビュー   パーマリンク

あらゆる論理的展開は、「演繹法」と「帰納法」によって成り立っています。

経営者やマーケッター、営業マンが筋道立てて結論を導き出し、それを相手に伝えようとする時、ビジネスマンの多くは自然に論理的な展開を行っています。

リーダーであれば、因果関係をもとに結論付けるプロセスは、大事な局面では日常茶飯事であるため、「ロジカルシンキング」のスキルを身に付けることが不可欠だと言えます。

そこで今回、演繹法と帰納法の違いとは、ビジネスで演繹法と帰納法を使うコツについて解説します。

■演繹法と帰納法の違いとは?
帰納法と演繹法の違いとは、既に判明している事実に基づき「一般論」を推測に使うかどうかになります。

帰納法は複数の事象の共通点から結論付ける方法ですが、演繹法は複数の事象を関連付けてから結論を導き出します。

帰納法:「複数の事象の共通点」から結論付ける手法。
演繹法:「複数の事象の関連付け」から結論付ける手法。

ビジネスシーンでは、普遍的なデータと根拠をともなう論理的展開を行う「ロジカルシンキング」が重視されているため、帰納法と演繹法を巧みに使い分けることで、組織は成果を上げ、利益を生み出しやすくなります。

企業は、経営方針をベースに、新たなサービスを提案を行います。また、顧客の課題や将来のビジョンをベースに保険や投資などのライフサービスの提案が行われています。

これはニーズ(≒方針に必要なもの)に沿って提案する際に演繹法を使うと説得力が増すからです。

つまり、営業活動の多くは、顧客の願望やニーズをベースに、演繹法が活用されているということです。

ビジネスシーンでは、帰納法と演繹法を利用する場面が沢山あります。

新規事業立上げや営業、マーケティングでも帰納法と演繹法の違いと理解した上で、正しく理解し実践できる会社は、多くの企業に興味を持って貰えます。

■演繹とは?
演繹(えんえき)は、一般的かつ普遍的な事実となるルールやセオリーを前提として、そこから結論を導きだす方法です。「複数の事実を足し合わせて結論を出す」考え方になります。

物事を分かりやすく説明するには、相手が納得のいくように自分の主張を通すために論理展開が大切です。

演繹は「ルール」もしくは「一般論」と「観察事項」、必然的に導き出される「結論」から構成されています。

すなわち、演繹は、「観察事項=新しく知った情報」をルールや「一般論=すでに知っている情報」に照らし合わせて、その観察事項がルールに合っているかどうかで結論を出す自然な思考方法です。

あらゆる論理展開は、「演繹法」と「帰納法」という、2つの基本パターンの組み合わせによって成り立っています。

アリストテレスが確立した「三段論法」は、演繹法の代表例になります。

三段論法とは、ある事実やその前提となる正しい情報を起点として、推理を重ねて結論を導き出す手法のことです。

三段論法は、大前提⇒小前提⇒結論という3つの命題から構成されます。

以下のものが良く例として挙げられています。

・大前提:すべての人間は死すべきものである。
・小前提:ソクラテスは人間である。
・結論:ゆえにソクラテスは死すべきものである

演繹法とは、誰もが正しいと思える事実を起点として妥当な結論を導き出す手法です。この演繹法を行うための具体的な手段のひとつが三段論法であると理解しましょう。

■演繹法はどのようなシーンで活用すると良いのか?
演繹を駆使することで、誰もが納得できる自明の前提からスタートし、その結果を元に結論を導き出して行きます。

そのため、以下のような複雑なテーマにおいても結論付けることが可能になります。

・新商品開発で会社に企画を通すシーン
・新規事業立上げの予算を確保する時
・物事を戦略的に考える必要がある際
・多くの人を動かすことが不可欠なシーン
・組織構成を立案する立場にある場合
・投資家から資金調達を行う必要がある時

といった場合にも「演繹法」が適していると考えられます。

スタートアップの新規事業立上げや革新的なプロダクトを開発する際には、ビジネスの実績をもとに次の戦略を決定し、利益(結論)に繋がるという流れを作ることが不可欠になります。

なぜなら、新しい商品やサービスを開発するためには、その素となる知識や技術が必要で、いくら商品やサービスが画期的であっても、知識や技術を当てはめることができなければ、商品として成立しえないからです。

起業家や経営者など、ビジネスの失敗が許されない責任重大な立場に置かれた人ほど、演繹を使うシーンが増えてくるでしょう。

■帰納とは?
帰納とは、思考法の一つで、様々な事実や事例から導き出される傾向をまとめ上げ、結論につなげる「論理的推論方法」を指します。

帰納法とは、ルールと観察事項から結論を導くのではなく、観察されるいくつかの事象の共通点に注目して、ルールまたは無理なく言えそうな結論を導き出すものです。別名を「帰納的推論」とも言います。

帰納法は「複数の実例を挙げてその共通点を導き出し、共通点から結論を出す論理展開手法」と定義されています。

帰納法に対して、演繹(えんえき)法という思考法が引き合いに出されることがありますが、演繹法は帰納法とは結論の導き出し方が違います。

複数の事実や事例を挙げることによって相手に納得感を与え、導き出される結論が一般論になるのが基本です。ただし、演繹法と違い、自動的に結論が導き出されることはなく、結論を導くための想像力が求められます。

PESTや3Cなどのフレームワークは、「複数の実例を挙げて」「実例をもとに共通点を見出し」「共通点を根拠に結論付ける」という帰納法の使い方に沿っています。

■帰納法を活用するメリット
ビジネスの必要スキルと言われているロジカルシンキングについては「帰納法」を活用することでビジネスシーンでの活用範囲は広く利便性が高いと評価されています。

帰納法で重要視されるのは、多くの事例に共通することを「まとめる」ことで、聞く者に「納得感」を与えることになります。

そのため、帰納は、三段論法で必然的に結論が出てくる演繹法とは異なり、帰納法で有用な結論を出すためには、特定の分野に関するある程度の知識が必要になります。

帰納法で重要視されるのは、「実例から共通を導く」ことです。これにより、聞く者に「納得感」を与えることが可能になります。

マーケティングやアンケートの結果を重視し、論理展開を行うのが帰納法です。前提に普遍的事実があるかないかよりも、観察した結果から導き出される納得感を重視するため、一定以上のサンプルや事例の量があれば帰納法は効果的だと言えます。

人間には「共感性」「論理性」「創造性」の 3つの要素があり、その中でも「共感性」が高い人が多いです。

人が話に共感するとき、それは大抵「経験談」ではないでしょうか?

つまり、経験などから一般化していく手法である帰納法は、多くの人に伝わりやすいと言えます。

■帰納法と営業提案資料
製品/サービスを検討する際、クライアントは自分たちのニーズに合っているかどうかを判断することが必要になります。

大手企業を対象にした法人営業の場合、取引先に新しい商品を進める時に役立つのが、「導入事例」や「お客様の声」などの営業資料になります。

実際に営業として活動されている方は、効果があるかどうか分からないものを売ることが、いかに大変かを実感されているんじゃないでしょうか。

ある調査によると、IT製品/サービスの検討の際、「最も参考にするコンテンツが導入事例」という結果も出ています。

新しい商品をすすめると取引先は、

・導入前に、どのような課題や目標があったか?
・なぜその製品/サービスあるいは御社を選択したのか?
・どのように課題解決・目標の実現ができたか?
・導入決定から稼働まで、どのようなプロセスや苦労があったか?
・どのような数値的なデータとして導入効果があったか?

などと聞いてきます。

その時に「導入事例」や「お客様の声」をまとめた資料があれば、受注の可能性は一気に上がります。

その理由としては、取引先の担当者が、営業資料の内容を材料に勝手に推論を行なってくれるからです。

■導入事例が重要な理由
導入事例は、製品/サービスの提供企業のメッセージではなく、製品/サービスを検討している企業と同じ目線・立場から、客観的に特長・機能や導入効果が語られるため、信頼性の高い説得力のあるコンテンツとなります。

営業時に一番望ましいのは、数値的な裏付けがある「演繹法」での説明です。

過去の統計データから「導入企業の〇〇%がコスト削減に成功しました!」と言えたら説得力があります。

しかし、スタートアップの新規事業で、導入実績が少ない時点では、演繹法で使えるような根拠(一般論)が手に入るまでには時間が掛かるため、初期の営業活動では使えません。

そこで登場するのが「帰納法」を使った説明です。

帰納法では、いくつかの少ない事例があれば、受け手の方が「うちの会社も成功事例のようになるかも」という仮説を立ててくれます。

導入事例は、いわば「製品/サービスのサンプル」です。

ただ導入の経緯を述べるだけではなく、「ある企業がその製品/サービスを使って問題解決/目標を実現した実例」を「生の声」で「具体的」に伝えましょう。

■アブダクションという推論法もある
「アブダクション」とは、アメリカの哲学者のチャールズ・パースが、「帰納法」「演繹法」と並ぶ「第三の推論」として提唱した推論法です。

「アブダクション」も「帰納法」も、思考を実際に観察した事象から進めるものですが、違いが両者にはあります。

「アブダクション」は観察した事象とは違った何かの種類を推論することで、見えないものを推論することもときにはありますが、「帰納法」は観察した事象と同じものを別のシーンにおいても推論することです。

「Abduction」(アブダクション)の日本語の意味としては「仮説形成」であり、「仮説」を生み出す思考法です。

主題が問題を解決することであるビジネスの文脈の中においては、「仮の答え」に「仮説」をして、「仮説」を検証して解決策のレベルをアップする方法論や思考が紹介されています。

推論の文脈からこれを考えれば、「観察した事象に関して、仮の理論をこの理由を説明するために考えること」になります。

「万有引力の法則」など、科学的な発明とか発見には、このアブダクションが関わっています。

特に大きなパラダイムシフトになったような、なにかしら価値観の転換に関わるような発見には、アブダクションという推論の方法が関与していると言えます。

■「演繹法」と「帰納方」をビジネスで使う注意点

1、「演繹法」を使う際の注意点
根拠となる一般論を考える時には、より広い視野を持った上で根拠を選ぶ必要があります。

・最初に思いついた一般論に固執しすぎない。
・常識と思っていた一般論も覆されることがある。
・一般論が変われば仮説も大きく変わってしまう。

特に「一般論」が「業界の常識」のような凝り固まったものである場合は、他社の常識破りの戦略に足元をすくわれてしまう可能性があります。

企画や開発から、営業や販売までのプロセスが密接に結びついている組織では、筋道をまっすぐ描ける演繹法が適しています。

2、「帰納法」を使う際の注意点
帰納法の考え方では、これまでに起こったことや自分で観察している範囲でしか仮説を立てることができません。

・新しい事例で「仮説」が簡単に書き換わってしまう。
・「正しい現象と計測」を踏まえなくてはならない。

そのため、現象そのものが事例として不適格だったり、計測が間違っていたりしたら帰納法は成り立たないのです。

帰納法を正しく用いるには、データの質と量が問われます。

十分なデータ収集を怠った状態で帰納法を用いても、整合性のある結論を導けないでしょう。帰納法で結論を導く前には、手元にあるデータが信用できる内容なのかを見直すことが大切です。

■まとめ
演繹法と帰納法は、いずれも「論理的推論」になります。この論理的思考のことを、英語でロジカルシンキング、日本語で「垂直思考」と呼ぶこともあります。

演繹法と帰納法による思考法は、結論の求め方は異なりますが、さまざまな場面で役に立つ方法です。

演繹法と帰納法の違いを整理すると、以下になります。

1、演繹法:ゴールにたどり着くために用いる。
演繹法はルールや法則に基づく物事に当てはめて結果を導き出すものです。

相手の話がおかしいと思ったときに、三段論法で言い直してみる。自分の言いたいことが見えてきたら、「主張」「ルール」「観察事項」に分けてみる。

事業方針や戦略立案など過去の実績の上に次の展開を積み重ねるときは演繹法を使うと効果的です。

2、帰納法:新発想や新事実を生むために用いる。
帰納法は複数の事実や事例から共通点を導き出し、一般論となる結論にたどり着くための方法です。

様々なデータが集まったら、まずは「共通点は何か」を考えてみる。集めたデータから「新たな発想や気づき」を生み出してみる。

営業やマーケティングなど数多くのサンプルから傾向を導き出すときは帰納法を使うと効果的です。

このように、演繹法と帰納法の大きな違いは、既に判明している事実に基づき「一般論」を推測に使うかどうかになります。

演繹法と帰納法の思考法を状況に応じて使い分けることで、より正確な結論を導き出すことができるでしょう。

「良質とは、高みを追求する意志、地道な努力、聡明な方向性と熟練した技術を積み上げた結果。多くの選択肢を賢く選び出すことを意味するものだ。」

<アリストテレス>

■大手企業の新規開拓の課題がある企業様へ
固定観念が強すぎる社長や、経験値のある範囲でしか物事を判断できないビジネスマンは、イノベーションを伴う事業開発時に過去の出来事に引っ張られてしまい、ロジックの誤りに気づきにくいとされています。

営業活動でクライアントに対して一番訴えやすく、信頼感を獲得に繋がる要素が、顧客に提案する製品やサービスが大手企業で導入された実績の紹介です。

なぜなら、大手の○○社でも導入し、活用しているという実績があると「それなら安心できる、うちでも導入してみよう」という流れを汲みやすくなるからです。

特に同じ業界、自社と同様の規模の他企業が該当製品/サービスを導入しているという実績があると、「うちと同じような規模・業種で効果が出ているのなら、検討して導入してみよう」と検討の機会と購買意欲が拡大します。

しかし、中小企業やベンチャー企業の場合、大手企業の最終決裁者に若手の営業マンが代表電話からアプローチしを行い役員クラスとアポイントを取得し、有効商談を行うのはなかなか難しい場合も多いでしょう。

そのような際には、大手企業の経営トップとのアポイントやキーマンとの商談設定を推進することが可能な営業顧問の人脈を借りることが、限界を突破に導く大きな武器になります。

日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」では、知識・経験・人脈・スキル・ノウハウを持つ、5000人を超える顧問やプロ人材をネットワークし、様々な企業の経営課題の解決に取り組んでいます。

営業活動の強化に必要な営業プロセスを改善することを目的に、顧問契約をベースに営業顧問のチームビルディングを行い、新規開拓や販路拡大に必要な実行サポートを行っています。

【無料お試し】が可能ですので、まずは会社アカウントを登録し、是非、どのような営業顧問がいるか選定をしてみてください。

【人数無制限】複数の営業顧問が大手企業の役員クラスを成果報酬型で紹介!
https://kenjins.jp/lp/saleslep/

本田季伸のプロフィール

Avatar photo 連続起業家/著者/人脈コネクター/「顧問のチカラ」アンバサダー/プライドワークス株式会社 代表取締役社長。 2013年に日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」を開設。プラットフォームを武器に顧問紹介業界で横行している顧問料のピンハネの撲滅を推進。「顧問報酬100%」「顧問料の中間マージン無し」をスローガンに、顧問紹介業界に創造的破壊を起こし、「人数無制限型」や「成果報酬型」で、「プロ顧問」紹介サービスを提供。特に「営業顧問」の太い人脈を借りた大手企業の役員クラスとの「トップダウン営業」に定評がある。

経営者・採用担当者の皆様へ 日本最大級の顧問契約マッチングサイトのKENJINSでは、年収700万年収1500万クラスのハイクラス人材を、正社員採用よりも低価格で活用可能です。顧問のチカラで圧倒的な成果をコミットします。

この記事にコメントする


この記事の関連記事

アンバサダーとは?法人営業でもアンバサダーの活用が有効な訳

近年、様々な企業で「ブランドアンバサダー」を起用して行う「アンバサダーマーケティング」が盛んに行われており、その効果の高さからアンバサダーは、マーケティング業界で大変注目されています。 海外ブランドでは、多くの会社がアンバサダーセールスやアンバサダーマーケティングを戦略的に活用...[続きを読む]

営業リストとは?新規開拓を行う際の営業リストを作るポイント

中小企業やベンチャー企業を問わず、企業が売上を上げ、持続的な成長を実現するためには、既存顧客をフォローしながら、定期的に新規顧客を開拓し続ける必要があります。 ですが、新規開拓が大事だとは言え、あらゆる企業に対してに無差別にアプローチしても良い成果は出ません。 そこで役に立つ...[続きを読む]

ダイバーシティインクルージョンとは?多様性が成長の鍵になる訳

労働人口の減少により、企業では働き手不足が深刻化しています。 短時間勤務や自宅勤務、また65歳以上の勤務などの働き方をさらに柔軟にし、フルタイムの勤務が難しく、現在働いていない、といった方に対し、「職場に復帰・進出して貰いたい」という意見を数多く耳にするようになってきました。 ...[続きを読む]

ブレイクスルーとは?中小企業の社長がブレイクスルーを起こす鍵

ビジネスで成功を勝ち取ったシリコンバレーの起業家やCEOの多くは、新規事業の立ち上げやビジネスの課題に対してブレイクスルーを起こすために、複数の「壁打ち相手」を外部に持っていると言われています。 スタートアップの創業期には、「魔の川」「死の谷」「ダーウィンの海」と呼ばれる3度の...[続きを読む]

マーケティングミックスとは?新商品開発に4Pが基本になる理由

非常に有名なマーケティングのフレームワーク(考え方の枠組み)のひとつに「マーケティングミックス」と呼ばれるものがあります。 発表からもうすでに半世紀以上経過しているにもかかわらず、マーケターがマーケティング計画/戦略を行う際にかなりの頻度でこのフレームワークを使用します。 そ...[続きを読む]