アンダーマイニング効果とは?エンハンシング効果との違いと意味

投稿日: 作成者: KENJINS運営会社社長 カテゴリー: 企業インタビュー   パーマリンク

企業の成長のためには、従業員だけでなくフリーランスのモチベーションや生産性の向上が非常に大切になります。

働く人のモチベーションが下がってしまう心理状態のことを「アンダーマイニング効果」と言います。

ビジネスマンのやる気や仕事をする意欲を高めるためには、「アンダーマイニング効果」を知り、なぜ、人のモチベーションが下がるのか、マインドが変化する仕組みを理解することが重要になります。

そこで今回、アンダーマイニング効果とは何か、エンハンシング効果との違いと意味について解説します。

■アンダーマイニング効果とは?
アンダーマイニング効果とは、達成感や満足感を得るために行っていたが報酬を受けた結果、「報酬を受けること」そのものが目的になり、結果として本来の内的な動機が失われてしまう心理状態のことを指します。

アンダーマイニング効果は、弱体化させるという意味を持つ「undermining」から来ている言葉になります。

アンダーマイニング効果は、「過正当化効果」とも呼ばれ、内的な達成感のために行っていた行為において、外的報酬などによってモチベーションが下がることを意味します。

「アンダーマイニング効果」は、1971年に「内発的動機づけ」研究の第一人者、エドワード・L・デシ氏と、同じく社会心理学の主要な理論家、マーク・R・レッパー氏の実験によって判明しました。

内発的動機づけによって行動していた働きに対し、外発的動機づけを提示したことで、もともと持っていたやる気や関心が下がる現象が「アンダーマイニング効果」になります。

■アンダーマイニング効果が出る原因
アンダーマイニング効果が引き起こされる原因としては、自己決定感や有能感の低下が原因だと考えられてています。

自己決定感や有能感は内発的動機づけを支える要素で、自己決定感は「自分のことは自分で決定している」という感情、有能感は「頑張れば自分でもできる」という感情を指します。

「物質的な報酬を与える」以外では、「締め切りを定める」や「罰を与える」なども、自己決定感や有能感の低下に影響を及ぼし、アンダーマイニング効果につながるとされています。

ベイン・アンド・カンパニー社とプレシデント社の共同調査によると、「やる気にあふれた社員の生産性は、そうでない社員と比べ2~3倍もの差が生じる」そうです。

このようにアンダーマイニング効果は、企業の生産性に大きく影響します。

■エンハンシング効果とは?
エンハンシングは英語の「enhancing」に由来しており、「強化すること」や「高めること」を意味します。

アンダーマイニング効果とは、動機がすり替わることで本人のモチベーションが下がってしまうことを言いますが、その反対にあるのが「エンハンシング効果」です。

エンハンシング効果とは、外発的動機付けによって内発的動機付けをより刺激して高めていくことです。

エンハンシング効果が引き起こされる仕組みは、言語的な報酬(外発的動機づけ)によって内発的動機づけが高められることになります。

例えば信頼している上司に褒められると、部下は「もっと評価されたい」という気持ちが強くなりやすいくなります。その結果、モチベーションがアップして求められた以上の結果を残す可能性が高まります。

また、信頼している人から褒められる、尊敬している人から評価されるといった外部からの刺激があると、本人のモチベーションが一層高くなる効果があります。

ただし、人の褒め方、評価の仕方については、結果だけでなく過程やその人が持つ素質などに触れることが大切です。

■内発的動機づけと外発的動機づけの違い
そもそも動機付けとは、行動を起こし目標に向かわせるまでの心理過程のことです。簡単に言えば『モチベーション』や『行動する理由』とも言えるでしょう。

アンダーマイニング効果を理解する上で正しく把握しておかなければならないのが内発的動機付けと外発的動機付けです。

1、内発的動機づけ
モチベーションを生み出す動機づけのうち、好奇心や向上心などの個人的な満足感に起因するものを内発的動機づけと呼びます。

内発的動機づけに基づく行動は外的要因の影響を受けておらず、やりがいや興味などの内面的な欲求によってモチベーションが向上するのが特徴になります。

例えば「人の役に立つ仕事がしたい」、「自ら設定した目標を達成したい」などは、内発的動機づけに基づく行動だと言えます。

2、外発的動機づけ
内面から発生する内発的動機づけに対し、外的要因によって引き起こされるものは外発的動機づけと定義されます。外的要因として挙げられるのは、報酬や評価、懲罰などになります。

「成果を挙げれば報酬がもらえる」、「〇〇をすれば褒めてもらえる」のように、外発的動機づけには他者の存在が絡んいます。

内発的動機づけは自発的な意欲によって発生するもの、外発的動機づけは評価や罰など他者の干渉によって発生するものだと覚えて置きましょう。

■アンダーマイニング効果が起こる原因

1、目的がお金に変わってしまう
アンダーマイニング効果が起こる原因のひとつが「目的が報酬に変わってしまうこと」。会社全体の満足度やモチベーションを高めるためには、成果を出した社員に報酬を与えなければなりません。

しかし一般的に外発的動機は内発的動機に比べて持続しにくいといわれています。

社員の行動や成果に対して褒章を与える場合、当人の内発的動機を損なわないよう注意しなければなりません。

2、周囲からの評価
「周囲からの評価」もアンダーマイニング効果が起こる原因のひとつです。業績や業務効率、能力や精神性で社員を評価している企業も多いでしょう。

この場合は周囲からの評価や昇格のためだけに業績を上げ、結果として自己決定感や有能感を低下させないよう注意が必要です。

周囲から尊敬されたいと思っている社員や、プライドが高い社員はアンダーマイニング効果が起きやすいため、特に注意しなければなりません。

3、従業員同士の競争
よりよいアイデアを生み出すために、よりよい成果を出すために従業員同士を競争させるのは、多くの企業でおこなわれています。
ノルマの達成率などを比較することで個人のモチベーションが上がる、ライバル意識が高まりさらにいい結果が生まれるという考えもあります。

ですが、その競争がかえって従業員に対してストレス、プレッシャーになっている可能性があります。

楽しみながら仕事をしていたはずなのに、それだけでは相手に負けてしまう、数字でしか評価されないと感じると従業員のモチベーションは下がってしまいます。

4、やらされていると感じる。
モチベーション向上のため、よかれと思って与えた金銭的報酬が結果として内発的動機づけを下げる場合もあります。

金銭的報酬(外発的動機づけ)によって、もともと楽しかった、自発的に行っていた行動が「報酬のためにやらされている行動」になってしまうのです。

なかには報酬によって意欲的に取り組む社員もいるでしょう。それと同時に「やらされている感」が高まり、自主性や積極性が低下する社員もいる点を覚えておかなければなりません。

5、監視が厳しい。
従業員がきちんと仕事をしているか、遅刻や欠勤を監視しすぎたり、休憩時間の態度などを監視しすぎたりすることで、従業員のモチベーションを下げてしまう可能性があります。

企業の業績をアップさせるためにはある程度従業員を監視することは必要ですが、度が過ぎないように注意しなければなりません。

常に監視されていると感じることで従業員がプレッシャーに感じたり、ストレスに感じたりして、本来の能力を発揮できなくなることもあります。

6、締め切りやノルマがある。
締め切りやノルマの達成もアンダーマイニング効果が起こる原因です。

もともと楽しんで取り組んでいた業務に期日が近づいてしまい、結果として投げやりに終わらせてしまった、経験もあるのではないでしょうか。

短期的に見ればモチベーションの向上に寄与する締め切りとノルマですが、達成できなかった際のストレスも生み出すのです。

エンハンシング効果を意識し、内発的動機づけを高める方法
報酬の与え方や評価の仕方を工夫して社員の自発的な意欲を刺激すれば、モチベーションの維持や生産性の向上に繋がります。

1、金銭的報酬ではなく、言葉で褒める。
アンダーマイニング効果を防止するためのキーワードは、「言葉による評価」になります。

金銭的な報酬を与えることによって評価する仕組みが根付いていると、部下は「管理されている」、「仕事をやらされている」という意識になりやすいです。

これでは自己決定感や有能感が低下してしまい、意欲的な態度で仕事に取り組むのは難しいくなります。

部下の意欲が削がれることを防ぐためには、部下の自己決定感や有能感を尊重する必要があります。そのために有効なのは、賞賛や期待の気持ちを言葉にして伝えることです。

金銭などの報酬と言葉による報酬とを比較すると、言葉による報酬のほうが自己決定感や有能感を保ちやすいと言われています。

その理由としては、特に尊敬している上司や先輩から褒められるとエンハンシング効果が増大するため、モチベーションの維持に大いに役立つからです。

社員が内発的動機づけによって行動を起こしているのならば、その行動に対して正当に評価する必要があります。

その際は金銭的な報酬を与えるのではなく、「高く評価していること」や「能力を認めていること」を言葉にして伝えましょう。そうすれば部下の内発的動機づけがさらに高まり、やりがいや意欲をキープしたまま仕事に取り組んで貰えるはずです。

2、褒める際は、結果ではなく、過程や努力を褒める
エンハンシング効果を実践する際には言葉による評価が重要になります。その際、「何を褒めるか」にも気を配ると効果的です。

特に効果的とされているのは、結果ではなく結果に至るまでの過程や努力を褒めることになります。

例えば、部下が頑張って進めていた企画を成功させたとします。その際に「よくできたね」と褒めるよりも、「大変なこともあっただろうに、たくさん努力したから成功したんだね」と褒めるほうが相手の心に響きやすいくなります。

言語的報酬を活用して部下のモチベーションを向上させるのならば、部下が頑張ってきたことや努力してきたことを具体的に褒めるように意識すると良いでしょう。

また、部下を高く評価していても、心からの称賛だと伝わらなければエンハンシング効果は期待できません。部下を褒める際には言葉の抑揚や仕草などにも気を配り、本心で褒めていることが伝わるように工夫することが不可欠になります。

3、個別ではなく人前で褒める
アンダーマイニング効果を防止するためには、部下と1対1のシチュエーションで褒めるのではなく、ほかの社員がいるときに褒めるのが有効になります。

例えば、他者に見られている中で叱責や注意を受けると、心理的に大きなダメージを受ける可能性が高くなります。

なぜなら、「怒られている姿を他者に見られている」という事実に自尊心が傷つき、モチベーションを保ちにくくなるからです。

反対にエンハンシング効果では、「他者に見られていること」を自尊心の向上に作用します。

周囲にほかの社員がいる環境で褒めることで、部下の自尊心や褒められる喜びを刺激するからです。自尊心が満たされるとモチベーションが上がり、やりがいや意欲の高まりが期待できるでしょう。

■まとめ
アンダーマイニング効果は、本来は好奇心や喜びといった「内発的動機づけ」によって行動していた相手に対し、報酬や褒美といった「外発的動機づけ」を提示して、結果として当人のモチベーションが低下してしまう心理現象です。

アンダーマイニング効果が発生してしまう原因は、報酬、評価、競争、罰則、監視、締め切りなど、非常にさまざまです。

社員を評価する仕組みとして、モチベーションを維持するものとして、取り入れていたことが、アンダーマイニング効果を誘発させてしまっている可能性があります。

アンダーマイニング効果が発生すると個人のモチベーションが低下するだけでなく、企業にとっては離職率が高くなる、生産性が低くなるなどの問題を抱えることになってしまいます。

何が従業員のモチベーションを下げるのかを正しく理解し、その予防方法も確認しましょう。

「ステップ・バイ・ステップ。どんなことでも、何かを達成する場合にとるべき方法はただひとつ、一歩ずつ着実に立ち向かうことだ。これ以外に方法はない。」

<マイケル・ジョーダン>

■最後に
フリーランスの顧問の場合、報酬を支払うといった外発的動機づけ自体は悪いことではありません。

しかし、経営者のビジョンに魅力があり社会貢献活動の一環として支援したい場合など、内発的動機づけが高まっている顧問に対して、高額な報酬というニンジンをぶら下げ、外発的動機付けを促すと、アンダーマイニング効果が起こってしまう可能性が高まります。

アンダーマイニング効果を防ぐためにも顧問1人1人のモチベーションを日々観察し、そのプロ人材の内発的動機付けに合わせた対応をすることが大切でしょう。

外発的動機付けをうまく活用すれば、エンハンシング効果が期待できます。

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顧問料の相場を鑑み、アンダーマイニング効果と、エンハンシング効果の両方の視点から、顧問やプロ人材への対応を心がけ、ビジネスと会社の発展に繋げていきましょう。

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本田季伸のプロフィール

Avatar photo 連続起業家/著者/人脈コネクター/「顧問のチカラ」アンバサダー/プライドワークス株式会社 代表取締役社長。 2013年に日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」を開設。プラットフォームを武器に顧問紹介業界で横行している顧問料のピンハネの撲滅を推進。「顧問報酬100%」「顧問料の中間マージン無し」をスローガンに、顧問紹介業界に創造的破壊を起こし、「人数無制限型」や「成果報酬型」で、「プロ顧問」紹介サービスを提供。特に「営業顧問」の太い人脈を借りた大手企業の役員クラスとの「トップダウン営業」に定評がある。

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