現在、海外同様に日本でも終身雇用の崩壊から働き方が多様化し、人生100年時代と言われる中、いつ何が起こるか想像することが難しくなりました。
ITテクノロジーの発展・グローバル化などにより、様々な業界や会社のビジネスが予測不能なVUCAの時代と言われています。
つまり、5年後10年後は、何が起こるか分からない世の中でキャリア計画を立てても、殆ど予定通りにいかないという時代背景にある言えます。そのため、「プランドハップンスタンス」という考え方が、起業家だけでなくビジネスマンにも受け入れられ始めました。
「現在の仕事から一歩、ステップアップをしたい」「現在とは異なる仕事に挑戦したい」など、理由は違えど新たな道へ進むためにフリーランスの顧問や副業のプロ人材として、活躍したい考えるビジネスマンが、多いのではないでしょうか。
そこで今回、プランドハップンスタンスとは何か、天職と言える仕事を見つけるコツについて解説します。
■プランドハップンスタンスとは?
プランドハップンスタンスとは、「キャリアは意のままにコントロールできない。就職活動やビジネスのキャリアの8割は、狙いを定めた行動によるものだけでなく、偶然の出会いによって左右される。だから偶然をチャンスに変える行動をしよう。」という理論になります。
プランドハップンスタンスは、英語で「Planned Happenstance」と表記されます。
日本語では、「意図された偶然」を意味します。仕事を選択する際に、「計画された偶発性理論」と訳される、比較的新しいキャリア論です。
例えば、有名大学に入り大手企業に就職することが将来が安泰だと考えていた若者が、固定観念に縛られずに「オープンマインド」を受け入れ、ベンチャー企業の起業家との面談をしてみたことで、天職というものに出会い自身の新たなポテンシャルに気付くことがあります。
例えば、ある人物がスタートアップの起業家にに才能を見込まれ、若くして取締役に抜擢され、非常にやり甲斐のある新規事業の立ち上げを任され、大きなチャンスを得たことで沢山の貴重な経験をしました。
その後、その起業家から紹介を受けた会社で知り会ったメンバーとオンラインゲーム会社を作ります。立ち上げたゲーム会社がわずか、数年でマザーズに株式公開を果たし、現在は、東証1部上場企業の常務取締役にまで駆け上がりました。
この話は、私との出会いが発端となり本当にあった出来事ですが、このように人と出会いにより運命が動き出し、新たな可能性の扉が一気に切り拓くことがあります。
つまり、常にオープンマインドで人との出会いを大切にしたり、自分とは関連性が少ないと思えるような会社の社長と打ち合わせをしたりしたことで、偶然の出来事によって良い方向に導かれていくという考え方になります。
これをハップンスタンス・アプローチとか、偶発性アプローチと言います。
■プランドハップンスタンスが生まれた背景
世の中には、大きな富と名声を手にいれ、人生において大成功を収めた起業家が沢山います。1999年にスタンフォード大学のクランボルツ教授らは、その成功者たち数百人を対象に、「成功の秘訣」をインタビューしその内容を徹底的に分析しました。
すると、成功者のうち約8割の人は、今の自分の成功は「予期せぬ偶然によるもの」によってもたらされたと答えたというのです。飛躍のターニングポイントと思える「勝ちパターンの方程式」の80%が、本人の予想しない偶然の出来事による結果から得られたものだったそうです。
大富豪と言われる人の多くは、「目標に向かって寝る間も惜しんで頑張った結果だ」とか、「普通以上の能力・実力があった」などといった回答が出揃うだろうと予測されていた中、この結果は意外だったようです。
更に驚くべきことに、彼らが18歳のときに思い描いていた「憧れの職業」に実際に就いて働いている割合は、全体のわずか2%に過ぎなかったという結果が出ました。
この結果から導き出された偶発的な出会いが、「プランドハップンスタンス」理論になります。
「計画的偶発性」の理論が起きる上でポイントとなるのは、次の3点です。
1、キャリア形成にとって重要なターニングポイントの多くは、偶発的な出来事に影響を受けるものであること。
2、偶発的な出来事からチャンスを掴むには、常に努力を怠らず最善を尽くし積極的に機会をものにする態勢を整えること。
3、偶発的なチャンスが訪れるのをただ待つのではなく、自らが意図的に行動してチャンスを増やしていくこと。
■キャリア創出の機会を生む5つの行動指針
プランドハップンスタンスの理論では、人生におけるキャリアを好転させるために必要なことは、偶発の出来事が起こるのを待つのではなく、自ら良い出来事を引き起こすべく積極的な行動をすることが鍵となります。
具体的には、以下の5つの行動特性を持つ人にチャンスが訪れやすいと考えられています。
1、好奇心:たえず新しい学習の機会を模索し続ける(Curiosity)
人生の成功は、予期しない偶然によってその8割が形成されます。
興味関心のある分野だけでなく、普段から広い視野で持ち続けること。新しいことに挑戦したり多くの場所に足を運んだりすれば、それだけチャンスや出会いが増える考え方です。
偶発的なチャンスを増やすには新しいものに興味を持つ必要があります。朝起きて会社に行って仕事をして、帰ってきて食事をして寝る。この生活をただ繰り返しているだけでは、新しいものに出会う機会はまず増えません。
最初は、それほど興味を引かれなくても、新しいことを一度は試してみましょう。それが新たな出会いにも繋がります。
2、持続性:失敗に屈せず、努力し続ける(Persistence)
様々ななものに興味を持ち、試してみたもののなかで、「楽しい」「勉強になる」などと思ったものは、うまく行かなくても諦めずに継続してみることが重要です。
何度か失敗してもあきらめず向き合い、納得いくまでやってみること。好奇心を持って挑戦したことでも、困難を避けたり苦手意識を持ったりすると、その先にある可能性が閉ざされてしまうことがあります。
仮に直接的に仕事に繋がらなかったとしても、あとになって思わぬところで役に立つ可能性があります。
これこそ、計画的偶発性となるプランドハップンスタンスを生かすためのポイントであると言えるでしょう。
3、柔軟性:こだわりを捨て、信念、概念、態度、行動を変える(Flexibility)
こだわりや理想にとらわれて、行動や思考を狭めないこと。計画的偶発性は、従来のキャリアプランのように自分が立てた計画に沿って進めていくものではありません。
そのため、自分のキャリアプランに必要ない仕事でも、なぜやらなくてはならないのかなどと悲観的になれば、偶発的なチャンスも逃げてしまうでしょう。
運命の出会いを起こすには、ただ偶然を待つのではなく、自分にとって良い偶然が起きやすくなるように行動したり、偶然が起きそうな気配を敏感にキャッチすることでラッキーチャンスを増やすことができる。他人の意見や新たな視点などを受け入れる続けることが大切です。
重要な仕事であればあるほど、失敗してはいけないと不安や責任感にさいなまれてしまう方は多いのではないでしょうか。
そうした際も、「心配ない」「何とかなる」といったポジティブな意識を強く持つことで新たな自分に気づける可能性が高まります。
4、楽観性:新しい機会は必ず実現するとポジティブに考える(Optimism)
失敗や困難もポジティブに捉えること。一歩踏み出してみて、うまく行かないからといってすぐに不安になっては持続は困難です。多少の不安や、不満は受け流すスタンスも必要です。
仕事にこだわりを持って取り組むのは非常に重要ではありますが、ひとつのやり方、考え方に固執しすぎてしまうと、突然のトラブルに対応できません。
プランドハップンスタンスによる計画的偶発性を起こすには、自分のこだわりに固執しすぎず、常にいくつかのパターンを考えたうえで取り組むことが欠かせません。
5、冒険心:結果が不確実でも、リスクを取って行動を起こす(Risk-taking)
プランドハップンスタンスを生み出すためには、リスクを恐れずとにかく行動すること。
チャレンジするときは一歩踏み出す勇気が大切です。目の前に大きなチャンスが訪れても、少しでもリスクを考えると二の足を踏んでしまう。これでは、「計画的偶発性」も「引き寄せの法則」という奇跡も起こせません。
仮に、「失敗する可能性が高い」「思ったような結果が残せないかもしれない」と思っても、冒険心を持って挑戦してみましょう。
失敗はつきものなので、ある程度のリスクは引き受ける心構えをしておきましょう。
■起業家として必然とも言える幸運を引き寄せるために
起業家としてプランドハップンスタンス理論を駆使し、「必然の縁」に巡り会うために必要なことは、志や目標を立てることが重要です。
なぜなら、志や目標がある人の行動は一貫しており、周りから良い縁を与えて貰いやすくなるからです。
例えば「いつか経営者になる」という志があるのであれば、周囲の人も「経営者を目指しているなら、この人に会うと良いよ」と良い縁を勧めてくれます。
しかし、この縁は志を立てていなければ、周囲が提供することはないでしょう。
このように自分の志や目標を立て、目標に向かって努力している人を周囲は応援してくれます。同じように仕事に人生の時間を投入するのであれば、より高みを目指して志や目標を立てていくのも重要です。
経営者になるまでにやって置くことは「人脈作り」「業界や職種の経験」「経営スキル」を磨くことです。
起業すると非常に多くの業務を行う必要があります。そのときに人脈があれば、人や会社を紹介して貰えたり、優秀な顧問やプロ人材に仕事を手伝って貰うことが可能になります。
ただし、ここで1つお伝えして置きたいことは、「成功すること」と「成功し続ける」ことは全くの別物だということです。わかりやすく「一時的な成功」と「持続的な成功」と表現します。
「一時的な成功」の大きな要因として挙げられるのが単なる「運」です。「偶然、スキルが高い社員は入社してきた」など偶然の要素が大きいことが挙げられます。
一方で「持続的な成功」は、「社長としてのスキルが高く全身全霊で努力している」ことが大きな違いとなる要素になります。
成功し続ける社長は、それに早くに気づき「成功し続ける」という目標を達成するために「経営」の勉強を行っています。
また、社長が失敗してしまう大きな理由の1つに「経営を知らない」ということがあります。
一時的な成功で終わらないためにも、人との出会いを大切にするだけでなく、謙虚な姿勢で常に経営を勉強しビジネスの改善をし続けることこそが、千載一遇のチャンスを増やし「運命の扉」を開けるマスターキーなるのです。
■まとめ
キャリアの8割が偶然の出来事によると考える「プランドハップンスタンス」は、ただ待っているだけで良いというキャリア理論ではありません。
偶然という形で舞い込むチャンスを増やし成功を確実なものとするには、自分自身の中に眠っているチャレンジ精神を呼び起こすことが欠かせません。
「縁」とは、「繋がり」や「関わり」、「巡り合わせ」といった意味を持ちますが、縁の中にも「偶然の縁」と「必然の縁」があります。
誰かと偶然出会うのも縁の一つではありますが、求心がない行動によって得た縁は偶然の産物です。
たまたま良い人の縁に巡り会えるかもしれませんが、同じように別の良い人と巡り会えるかどうかは偶然に左右されてしまいます。
就職活動や営業活動においてどんな企業と出会うのか、どんな社長と出会うのかは自分の行動次第で大きく変化し好転します。仕事の鉄則は人から何かを教わることを待つのではなく、自身でチャンスを掴み取りに行くことです。
会社から与えられた目標だけでなく、自らの目標を立てることでビジネスにおける成功確率を高めていきましょう。
「キャリアの80%は、偶然の出来事によって支配されている。その人の偶然の出来事の80%は、それまでの行いによって支配されている。」
<ジョン・クランボルツ>
■最後に
キャリアの成功には、起きた出来事や周囲の変化を意識し、「プランドハップンスタンス」の理論を理解し、受け止める姿勢が大切です。
これは、新しい出来事や成功体験ばかりではなく、新規事業の失敗体験にも同じことが当てはまり、様々な出来事を前向きに捉えることが今後に繋がるチャンスを引き寄せて来ます。
誰しも年齢を重ねていくと、自分の才能やできることに限界があると感じるようになってきます。その結果、将来がある程度見えてしまい、そこから新しい挑戦をしなくなってしまう人が多いです。
しかし、その考えこそが自分の可能性を狭めてしまっているのです。
多くの場合、従来の仕事やこれまでの経験で得たものに限界を感じているだけで、新しい未知なるもの中には大きな可能性を秘めているものが隠れています。
現在、人手不足の中小企業やベンチャー企業では、フルタイム以外のワークスタイル(産休や育休、時短勤務、復職制度、テレワーク制度など)の許容や長時間労働の改善は、女性、シニア、場合によっては外国人の登用も増えています。
人生100年時代に突入した今、何歳になっても、新鮮な気持ちで新しいものに挑戦して行けば、自分の将来はまだまだ明るいと期待を持ちましょう。
その結果、計画的偶発性が起こる機会も増え、複数の会社の顧問に就任したり、正社員とは異なるフリーランスのプロ人材として大きなチャンスを掴めるようになるはずです。
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