企業を経営していくには、損益分岐点の把握は必要不可欠です。売上や営業利益だけでなく、事業の収益性を確認するための指標のひとつとして「限界利益」があります。
限界利益を使って経営状態を分析することで、今後の事業判断をするための指針が見えてきます。
新規事業の立ち上げには、新たなビジネスへの初期投資だけでなく、固定費や販管費など様々な販管費コストも必要になります。その事業が本当に儲かっているかどうかを判断する際には、売上高よりも限界利益の大きさの方が分かり易いと言えます。
そこで今回、限界利益とは?新規事業を推進する上で限界利益を計測する目的について解説します。
「企業にとって利益は目的ではなく、社会貢献を続けるための原資。利益とは、企業存続の条件。」
<ピーター・ドラッカー>
■限界利益とは?
限界利益とは、商品やサービスを販売した売上に連動する形で得られる利益を指します。会社が儲かっているかどうかを確認するための指標として活用されてます。限界利益が大きいほど、会社の収益も大きくなるため、限界利益は会社の儲けの基本となる値となります。
限界利益は、売上高と変動費の差のことで、すべての固定費を回収できる地点を示す管理会計上の指標です。そして限界利益率は、売上高のうち限界利益が占める割合を示します。
限界利益は損益計算書には表示されない、損益分岐点分析における特有の利益です。固定費を賄う利益であり、固定費の回収に貢献することから、貢献利益と呼ばれる場合があります。
限界利益の「限界」は「ぎりぎりの」「極限の」といった意味ではなく、「1単位追加で増えるごとに」という経済学上の意味合いで使われています。限界利益は、以下の式で求められます。
限界利益=売上高-変動費
例えば変動費が100万円で売上高が120万円の場合、限界利益は20万円となり、20万円の収益性の見込める事業であることが分かります。一方で変動費が200万円、売上高が150万円の場合、限界利益はマイナス50万円となります。売れば売るほど赤字の金額が膨らみ、会社に与える損失が大きくなります。
このように事業に収益性があるかを判断するうえでは、限界利益は売上高より重要な指標となります。売上高が大きくても収益性が低い場合には、費用や販売方法を見直すなどの判断が必要になります。
■限界利益率とは?
限界利益率とは、売上高に対する限界利益の割合のことを指します。つまり、売上高が増加したときに、限界利益がどれだけ増加するかという割合を示します。
この限界利益率は、数値が高いほど収益力のある会社ということができます。
限界利益は販売価格や販売数量に大きく左右されるものであり、固定費は限界利益の多少にかかわらず一定金額が発生するものだからです。
固定費が売上高とは無関係に一定であるため、限界利益率こそが売上高の増減に伴う企業の利益の増減そのものとなります。
つまり、限界利益率の高い会社は、限界利益が大きいということとなるので、限界利益率は高ければ高いほど良いということが言えます。
限界利益率=限界利益÷売上高×100(%)
限界利益率を高めるには、製造、仕入れ、営業のそれぞれの場面でコストを意識して数値を管理する必要があります。
■限界利益と粗利益、営業利益の違い
限界利益は、売上原価・販売管理費の別はなく、売上高から総費用の中の変動費を引いた利益です。一方、粗利益は固定・変動の別に関係なく、売上高から売上原価を差し引いた利益です。
限界利益と営業利益の違いは、利益額から固定費を引いているかどうかです。限界利益の場合は固定費を引かずに変動費のみを差し引いているため、もし限界利益から営業利益を求める場合には、限界利益の計算結果から固定費を引く必要があります。
営業利益=限界利益-固定費
利益を高くするためには限界利益率を高くしなければなりません。また、発生する固定費を回収するために十分な限界利益額を把握することも重要です。
■限界利益を理解する3つのメリット
限界利益には「事業の存続の判断」「適性な価格を決める」「予算を作成する」という3つの役割があります。
1、事業の存続の判断ができる
限界利益を把握することで、以下の判断が出来ます。
・限界利益が赤字
⇒撤退
・限界利益が黒字、営業利益が赤字
⇒存続できる可能性がある
・限界利益、営業利益ともに黒字
⇒問題なしだが、「利益を圧迫しているモノ・サービス」があるかもしれないため、調べてみるのも良い
「限界利益が赤字」というのは、「売れば売るほど赤字になる」という最悪なケースになります。変動費を改善しても「限界利益の黒字化」が見込めないのであれば、撤退を考慮した方が良いでしょう。
2、価格を決める時に使う
商品・サービスの価格は、市場における「競争優位性」を左右する重要な要素になります。そのため『少しでも安く提供しよう』と考える方もいらっしゃると思いますが、そもそも利益が出なければ意味がありません。
そこで「限界利益率」や「損益分岐点」を駆使することで、「利益も確保しつつ優位性を持てる最適な価格」を導き出します。
仮に現時点で営業利益が赤字の受注であっても、限界利益がプラスなら、受注数を増やすか固定費を削減することで、営業利益もプラスになります。特に以下のことを把握するために重要な役割を果たします。
・商品やサービスを販売したときに得られる直接的な利益
・会社に最終的な利益(経常利益)がどれくらい残るか
3、予算を作成する時に使う
目標の売上がある場合、「その売上目標に対していくら費用が必要になるのか」を把握しておく必要があります。原則「固定費は変わらない」と考えると、売上目標に対する「変動費」を予め把握しておけば良いということです。
また、大前提として限界利益率は予め「過去の実績」もしくは「目標値」をもとに考えておく必要があります。また、限界利益率を利用して求められる損益分岐点からは、以下のことが分かります。
・限界利益がいくらになれば固定費を回収することができるか
・利益を生むために必要な売上高
・収益性を上げるために何を改善すべきか
限界利益と損益分岐点を理解し、今後の会社の事業展開や、受注数の増減の決定に役立てましょう。
■限界利益を知るうえで欠かせない「損益分岐点」とは?
限界利益を利用して損益分岐点を求めると、利益を生むために必要な売上高を把握することができます。限界利益は、売上から変動費を差し引いたものになります。
損益分岐点と限界利益をあわせて考えることで、経営状態や経費見直しの指針が見えてきます。損益分岐点は、事業にかかる費用をすべて売上で回収でき、損益がプラスマイナスゼロとなる売上高のことです。
売上が損益分岐点に達していないと損失が出ることになり、損益分岐点を超えれば利益が出ることになります。損益分岐点は以下の計算式で計算できます。
損益分岐点=固定費÷{1-(変動費÷売上高)}
例えば損益分岐点に達していなくて限界利益が黒字の場合には、売上高を増やすことで実際に利益が発生する可能性があります。また、損益分岐点に達していて限界利益が低い場合には、薄利多売を強いられているので、販売量を増やしたり、収益性を高めたりなどの対策が必要となります。
■限界利益率の計算方法
売上高から変動費を差し引いた利益の金額を示す限界利益に対して、売上高のうち限界利益が占める割合を示すのが「限界利益率」です。
限界利益率を算出することで、売上高の増減に伴って限界利益がどれだけ変動するかを把握することができます。
限界利益率が大きくなると損益分岐点が下がり、収益性が向上します。限界利益率を求める計算式は次のとおりです。
限界利益率=限界利益÷売上高
限界利益率は、損益分岐点を求める際にも使われます。
損益分岐点=固定費÷限界利益率
限界利益は、販売価格や販売数量によっても大きく左右されますので、製造、仕入、販売の各担当者がコストを意識して目標を設定・管理する必要があります。
■限界利益率の目安
限界利益とは、会社の収益力のキーポイントとなる利益です。つまり、売上高-変動費=限界利益です。
理想的なのは、限界利益から会社が確保すべき経常利益を差し引いた金額を、固定費とすることです。
なぜなら、限界利益がそのまま会社の儲けとなるわけではなく、限界利益からその商品の販売にかかった人件費、店舗代、広告宣伝費などの固定費を差し引いて営業利益が求められるからです。
限界利益率はその会社の業界・業態やビジネスモデルによって大きく異なり、一般的な水準はありません。ただし、事業として内部で付加価値を生んでいる業種ほど、高い傾向があります。
そのため、卸売業のような流通のみを担う企業などでは限界利益率が数パーセントということがあります。また、コンサルティング会社のように、提供するものが知的サービスなど人間が提供する付加価値の場合には、限界利益率が100パーセントとなる場合もあります。
限界利益を求めることで、企業の売上状況を把握し収益構造を改善するための指針とすることができるようになります。ですので、限界利益は、会社の儲けの基本となる値と言えるのです。
■まとめ
限界利益は、「事業を存続できる見込みがある否か」を判断するための指標になります。なぜなら、限界利益率を見ることで、売上高の増減に伴って限界利益がどれだけ変動するかが分かるからです。
限界利益率が高くなるほど損益分岐点が下がるため、収益性が高く固定費を回収しやすい事業であるといえます。限界利益では「サービス・モノ」そのものの収益力(ポテンシャル)を測ることもできます。
自社の限界利益の状況を知ることで、商品やサービスを販売した時、直接的にどれくらいの利益を得られるかがわかります。
固定費を抑えても限界利益率が低い場合には必要な利益を得るためには大きな売上高が必要となり、限界利益率の向上のために過大に固定費が増加してしまっては、意味がありません。
また、限界利益で固定費を回収し、営業利益を黒字にするために必要となる売上高は、損益分岐点を計算して求めることが可能です。
その理由としては、営業利益が赤字でも、限界利益が黒字であれば、「生産数を増やす」「固定費を削減する」などで最終的に黒字にできる可能性があるからです。
ビジネスを通じた利益を最大化するためには、売上高、変動費、固定費のどの部分を改善すればいいのか、限界利益や損益分岐点、単位毎の貢献利益などを分析して、経営判断をしていくことが重要となります。
■最後に
限界利益率を把握し、コスト改造をするためにはどの費用を見直すべきかが分かるだけでなく、さらに分析することで目標とする利益を出すための売上高を計算することも可能となります。
限界利益率が低ければ、仕入値を引き下げて変動費を下げるのか、人件費や地代家賃を引き下げて固定費を下げるのかなど、会社の経営方針を考えるうえで非常に重要な数値を視覚化することができます。
変動費を減らせることができれば、限界利益(粗利)も増えて、経営はさらに安全になります。
例えば、これから経営拡大して従業員を増やそうとするのであれば、固定費である正社員ではなく、変動費となるアルバイトやパートを増やすなどの対策を検討することができます。
限界利益は、売上高から変動費を差し引いた利益です。変動費を抑えて限界利益率を向上させることで固定費を回収し、営業利益や経常利益を上げられるので、目標とする利益を明確に設定することが可能になります。
新規事業の立ち上げや既存のビジネスでも企業の収益性を改善するための方法が分からない場合には、顧問やコンサルタントに相談することが非常に効果的です。
なぜなら、損益分岐点と限界利益をよく理解することで、利益率の高いプロダクトを新たに開発したり、広告費などのコスト削減を実現する具体策を練り上げることが可能になるからです。
日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」では、多くの顧問紹介会社の間で横行している極端な顧問料のピンハネ問題を解決するために、企業様から頂く顧問報酬の中から中間マージンを搾取せず、「顧問報酬100%」を担当する顧問やプロ人材にお支払いすることをコミットしています。
また、現在、相談や依頼が増えている営業支援では、顧問紹介業界で唯一、「複数の営業顧問」を「定額料金」でかつ、「人数無制限」の「サブスクリプション」モデルとして活用できる仕組みを作り上げました。
日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」は、他の顧問紹介会社と異なり、顧問報酬は一律の料金体系ではありません。クライアント企業側で月額の顧問料やアポイント成果報酬、売上成果報酬など、自由に設定することが可能です。
そのため、成果に応じた報酬体系をプロジェクト毎に組み合わせることで圧倒的にリーズナブルな費用を実現することができます。
また、営業支援ではピンポイントで特定の大手企業を指定し、役員クラスとの人脈ネットワークを持つ営業顧問にリファラル営業によるオンラインでの商談設定や対面による紹介を依頼することを可能にしています。
特定のプロ顧問や複数のプロ顧問との顧問契約前だけでなく、顧問契約後もKENJINSのコンサルタントが、ハンズオン型で手厚いフォローアップを実施します。
【無料お試し】が可能ですので、まずは会社アカウントを登録し、是非、どのような顧問がいるか選定をしてみてください。
【人数無制限】複数の顧問が成果報酬型でリファラル営業を支援
https://kenjins.jp/lp/saleslep/