ビジネスの世界では成果主義を前提とした人事評価への移行により、多くのストレスの元となる外部の刺激を受けて、心に何らかの歪みが生じる機会はどんどん増加しています。
経済面や社会などさまざまな面で激しい変化の起こる時代に突入したことで、業界や企業規模を問わず起業家や労働者など組織を取り巻くビジネス環境も複雑化の一途を辿っています。
これらのストレスや歪みから跳ね返って回復できるチカラとして、「レジリエンス」という言葉が近年注目を集めています。そこで今回、起業家や組織にレジリエンスが大事な理由について解説します。
「失敗は必ず何かを教えてくれる。だからそれをめげずに、素早く動き続けていく限り、成功が待ち受けていることでしょう。そのスピードが、あなたに失敗という『贅沢』を与えてくれるのです。」
<ダラ・コスロシャヒ>
■レジリエンスとは?
レジリエンス(resilience)とは、跳ね返り、弾力、回復力、復元力という意味を持つ言葉です。レジリエンスは困難や脅威に直面している状況に対して、「うまく適応できる能力」「うまく適応していく過程」「適応した結果」を意味します。
レジリエンスを語る中で多く用いられる言葉に、ストレス耐性(stress tolerance)があります。
ストレス耐性とは、ストレスを感じた個人が心理的・精神的に受けたストレスに耐えられる程度を意味する概念のことです。
心理学の分野だけでなく、組織論や社会システム論、さらにはリスク対応能力、危機管理能力としても広く注目される用語でもあります。
近年では個人・組織ともに通用する「さまざまな環境・状況に対しても適応し、生き延びる力」として使われるようになりました。
■レジリエンスが注目される背景
レジリエンスが大きな注目を集める背景としては、「時代の変化の速さ」「労働環境の変化」により、ストレスを抱えている人が増えていることがなどが挙げられます。
厚生労働省の調査(平成28年度)によると、仕事で強いストレスを感じているという割合は59.5%にも上っており、前年よりも上昇しています。
ストレスの要因としては、「仕事の質・量」が最も多く、以下「仕事の失敗、責任の発生等」、「対人関係(セクハラ・パワハラを含む)」の順になっています。
仕事の量や質、対人関係の悩みだけでなく、目まぐるしく変わっていく時代や状況に対応しなければならないなど、ビジネスパーソンは大きなストレスにさらされている状況です。
変化していく環境にうまく対応していくための力=レジリエンスが個人だけでなく企業にも求められているのです。
今後もビジネスパーソンを取り巻く環境が一層厳しくなることが予想されるため、レジリエンスは従業員の育成や組織・システムの最適化の手段としても画期的な概念と位置付けることができます。
■レジリエンスを高めるメリット
精神的回復力とは、逆境やトラブル、あるいは強いストレスに直面したときに、適応する精神力と心理的プロセスを指します。企業が突然の状況やリスクに対抗するには、組織レジリエンスの強化が大切です。
レジリエンスには、下記のような効果が期待できます。
・集中力やパフォーマンスの向上
・創造的、包括的な問題解決
・限定されたリソースの有効活用
・周囲に対する効果的な働きかけ
・リスクの特定
・ネガティブな事象への的確な対応
・営業能力の向上
レジリエンスには、「集中力」「パフォーマンス」「創造力」「問題解決力」「対応力」などを高める効果があります。企業が活動と成長を続けるために、社員一人ひとりのレジリエンスを高めていくことも必要です。
■組織レジリエンスとは?
組織がビジネス環境の変化や自然災害などの混乱や危機を乗り越え、繁栄・存続していくためには、それらを予見、準備、対応、適応する能力が不可欠となってきます。
この適応能力を「組織レジリエンス」と言います。
組織を存続させ繫栄させるには、突然の状況・社会的な変化、リスクなどに対して対応できなければいけません。組織レジリエンスはこれらのリスクに対する対応能力を表します。さまざまなリスクが存在する現代では、柔軟に対応できる力が重要です。
そのため、あらゆる企業にとって、組織レジリエンスを高めることは、企業評価指標の一つとなっています。
その理由としては、組織の適応力や耐久力、逆境力などは、企業の存在価値に直結するすなわちレジリエンスが企業評価指標を左右する大きな鍵になるからです。
■組織レジリエンスが革新的な事業の創出にも関係する訳
組織レジリエンスの向上に取り組むこと、新しい価値の創造に寄与することを証明することにも繋がります。
欧米ではすでに多くの企業が、レジリエンス理論に基づいた人材育成、組織開発を進めています。
変化が激しい時代にあって、どれだけの適応力や耐久力、逆境力などがあるかは、企業の存在価値に直結してきます。組織レジリエンスが高い企業は、様々なステークホルダーに対して信頼を構築しやすくなります。
英国ロンドン・ビジネス・スクール教授のリンダ・グラットン氏が執筆した『未来企業』では、レジリエンスを「不確実性の増す世界において最も重要な能力」と位置づけています。
そのため、企業が自社の企業価値を示す根拠にレジリエンスを活用している背景にはこういった事柄があるのです。
■レジリエンスを高めるための3つのポイント
レジリエンスを高めると、目的を達成するために感情や行動をコントロールする力を養えます。集中力や業務遂行能力が向上し、目的を達成しやすくなります。
1、自己効力感を高める
レジリエンスは、自分を客観視することから始まります。自身を正しく自己評価できるようになると自分に対する自信を持てるようになります。
また、自分に足りない部分にも冷静に向き合うことができようになります。
自己効力感が高まると、困難に立ち向かう自信が芽生え、課題を解決するごとに成長を感じられます。自己効力感を高めるには、多くの成功体験が必要です。
多くの経験を積ませるために、プロジェクトにアサインする、新たな業務を割り振るなど、企業が社員に対して挑戦する機会を与えることが重要です。
2、ABCDE理論を理解する
ABCDE理論はアルバート・エリスが創始した論理療法におけるカウンセリング理論です。
『人間の不適応な感情・気分・行動』は、客観的な出来事から直接引き起こされるのではなく、物事の捉え方や解釈の仕方である認知傾向(信念体系)によって、引き起こされるとするのが基本的な考え方になります。
アルバート・エリスは、基本的な心理モデルとして定義した論理情動行動療法を支える以下の「ABCDEモデル」を提唱しています。
A(Affairs,Activating Event)
→客観的な外部の出来事・生活環境・人間関係。
B(Belief)
→客観的な外部の事象をどのように受け止めるのか、どのように意味づけして解釈するのかの信念・認知・考え方。
C(Consequence)
→信念や解釈を経て起こった結果(気分・感情・感覚・行動)
D(Dispute)
→非合理的な信念(イラショナル・ビリーフ)に対する反論・反駁・論理的否定。
E(Effective New Belief,Effective New Philosophy)
→効果的な新しい信念体系や人生哲学。
ABCDE理論を活用すると、ものごとを多面的に捉えられ、前向きな行動を選択できるようになります。
3、自尊感情を高める
自尊感情とは、自己に対して肯定的な評価を抱いている状態を指す「Self-Esteem」という心理学用語を訳した言葉として定着し広く使われています。
自尊感情は、「自分のよさや可能性を認識するとともに、あらゆる他者を価値のある存在として尊重し、多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え、豊かな人生を切り拓き、持続可能な社会の創り手となることができるようにすること」だと定義されています。
レジリエンスは持って生まれた能力ではありません。努力を続けていけば、誰しもその力を高めていくことが可能です。
そのためには、一人ひとりがレジリエンスを正しく理解し、日々意識していくことが欠かせません。
自尊感情が高まると、ありのままの自分を受け入れ「自分には価値がある」と自信を持つことが出来るようになります。自分の強み・弱みを的確に把握できれば、困難を乗り越えるために必要となる自己効力感を発揮できます。
互いに承認しあい、認めあう社内風土が必要です。互いが安心して発言をしあえる、「心理的安全性」の高い職場づくりが重要となるでしょう。
■まとめ
個人としてのレジリエンスだけでなく、組織の適応力や耐久力・逆境力などは、企業の存在価値に直結します。 いまや組織レジリエンスは、企業評価指標のひとつとなっています。
またコロナ禍など予期しない危機により事業環境が大きく変動する現在においては、組織レジリエンスはリスク対応や危機管理能力などのひとつであり、あらゆる場面・レベルで備えておくべきものといえます。
個人としても会社としても変化の波にさらされる現代において、素早く環境適応し永続的に成長し続けていく「基礎筋力」としてのレジリエンスは不可欠です。
新たなイノベーションを起こす起業家には、沢山のチャレンジをするため、時には失敗することも当然あります。そのような中でも逆境に挫けることなく常に前向きに考え挑戦を続けていけることが大事になります。
誰しも挑戦の結果、何かに失敗してしまうと、「諦める気持ち」が込み上げてくる。ですが、レジリエンスの高い起業家は、悲観的に考えたりはしません。
むしろ、失敗を糧に「ここをこう変えたら、次は成功するに違いない」と考えます。だからこそ、創意工夫をしながら何度でも挑戦し成功を掴み取ることができると言えます。
■最後に
米国スタンフォード大学教授のケリー・マクゴニガルは、著書「スタンフォードのストレスを力に変える教科書」のなかで、「ストレスこそが強さと成功の源だとビジョンを示しました。
つまり、ストレスを避けるのではなく、受け入れてうまく付き合っていくことでレジリエンスが身につく」といった見解を述べているのです。
一般的にはストレスは心身に悪い影響をもたらすと考えられがちですが、適切に向き合えば、起業家に決して消えない無限のチカラを与えてくれるばかりか、大きく成長していく原動力にもなるのです。
起業家とって、レジリエンス力を強化する一環として、エグゼクティブコーチングを受けることやメンターとなり得る顧問との1on1ミーティングが効果的です。
定期的な面談の実施も、起業家がビジネスで抱えるストレスを軽減し、目標を達成するのに役立ちます。
■エグゼクティブ・コーチングの投資に対する経済的価値
数々のリサーチにより、エグゼクティブ・コーチングへの投資に対する経済的影響が浮き彫りになっています。
100人のエグゼクティブを対象とした調査では、コーチングへの投資に対して、なんと、570%の収益に繋がったという報告がされており、具体的な収益は10万ドルから100万ドルの範囲となっています。
同じ時期にフォーチュン500企業の幹部を対象にした別の調査では、529%の収益アップが見られたそうです。また、その研究は、以下への間接的な影響も示しています。
・生産性の向上(回答者の60%アップ)
・従業員満足度の向上(53%アップ)
・より良い作業品質(40パーセントアップ)
・より多くの作業出力(30パーセントアップ)
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