現在、日本の企業では、年功序列という人事制度が当たり前のように採用されてきており、今でも多くの企業に根深く浸透しています。
ですが、高度経済成長期に導入された年功序列制度に代わり、現在、多くの企業が成果主義を導入し始めています。
そこで今回は、年功序列制度と成果主義との違い、年功序列のメリットとデメリットについて解説します。
■「年功序列制度」と「成果主義」の違い
「年功序列」とは、「年功賃金」とも呼ばれるように、年齢や勤続年数が高い社員ほど「賃金」が高くなり、同時に課長・部長といった「役職」も高くなりやすい人事制度です。終身雇用が一般的である日本では、よく知られた言葉です。
「成果主義」は、能力や会社への貢献度によって賃金や役職が決まる人事制度です。年齢や勤続年数に関係なく、仕事の成果によって昇進したり昇給する制度になります。
成果主義導入の背景には、これまでの年功序列型の賃金制度の維持が困難であることに加え、若手社員のモチベーションアップを図りたい企業側の思惑があります。
一方では、成果主義を導入した企業の中には、成果主義がうまくいかず従来の年功序列型の賃金体系に戻した企業もあると言われています。
年功序列を廃止して、成果主義の企業に移行していくためには、年功序列のメリット・デメリットを理解して自分の会社に合っているのかを良く考える必要があります。
■年功序列のメリット
年功序列とは、勤続年数や年齢などの要素を重視して、組織の中で役職や賃金などを決定する人事制度・慣習システムのことです。
1つの会社に長く勤務することで、自動的に役職や高収入を得られる年功序列の制度は、社員が会社を辞めない要因となりました。
そのため、高度経済成長期では多くの企業が労働力確保のために年功序列を導入しました。
1、社員の会社への帰属意識を高められる
近年、社会的にクローズアップされている問題が若手社員の早期離職です。企業の人事担当者は社員の帰属意識をいかにして高め、社員の定着を図るか頭を悩ませています。
年功序列の最大のメリットは、会社への帰属意識を高め、社員の定着を促すことです。年功序列は、勤続年数が長いほど経験によって知識が増え、技能レベルが向上するため、会社への貢献度が高くなるといった観点からは、合理的な人事制度になります。
年功序列制度では、勤続年数や年齢に応じて給与がアップしキャリアも上がります。そのため、社員が会社に不満を感じている場合でも、「将来出世できるのだから我慢しよう」と考え、大半の社員は転職せず現在の会社にとどまります。
厚生労働省が平成26年9月に発表した『若年者雇用実態調査の概況』によると、大卒新入社員が3年未満で退職する割合は58.5%に上っています。
2、良いチームワークが生まれる
成果主義の場合は年齢や勤続年数に関係なく、能力のある社員が上位の役職に就くため、場合によっては若年者が年配者に指示を出す可能性もあります。ベテラン社員の中には、若手上司から指示を受けることに抵抗を感じる社員もいるのではないでしょうか。
一方、年功序列主義の場合、上司は必然的に年長者となるため、部下は上司に敬意を持って接することができます。もう1つの年功序列制度のメリットは、社員の連帯感が強まることです。
日本は他国に比べて長期雇用の色合いが強く、アメリカなどの成果主義国に比べて、勤続年数が10年以上の労働者の割合が明らかに高いです。
これは、一つの会社に留まる期間が長く、転職などの労働移動が少ないことを示しており、日本の終身雇用制度の結果であるからだと考えられています。
■年功序列制度のデメリット
高度経済成長期では、企業側に大きなメリットを与えた年功序列制度ですが、現代ではデメリットが大きくなってきています。
1、事なかれ主義の風土を生み出す
企業は他社との激しい競争に打ち勝つために、新しい試みにチャレンジすることが必要です。
企業を取り巻く環境が目まぐるしく変化し、企業は常に変革を求められています。
しかし、年功序列主義の場合は「大きなミスさえしなければ、確実にキャリアアップできる」という事なかれ主義の風土が作られてしまいます。事なかれ主義は組織の硬直化につながり、会社の発展は望めません。
2、人件費の高騰
年功序列主義の恩恵を最も受けられるのは年長者です。
年功序列制度で高い賃金を得ているベテラン社員の定着率が高い一方、ベテラン社員と比較して賃金が低い若手社員の定着率は低くなります。
また、社員の高年齢化が進行することにより、人件費が増大します。人件費増加に比例して生産性も高めることができれば問題ありませんが、勤続年数が長いから生産性が高まるわけではありません。
昔の右肩上がりの経済成長は終わり、人件費の抑制に取り組みたい企業としては、人件費の高騰は避けたいところです。
■「年功序列」から「成果主義」への転職が不安なら、副業で腕試し
「成果主義の会社に転職してみたいけれど、うまくやっていけるかどうか確信が持てず、転職に踏み切れない」という人もいるでしょう。
そういう人には、副業で腕試しをしてみることをおすすめします。近年は、副業OKの会社も増えていますし、個人の成果が求められる副業は、自分が成果主義の会社でやっていけるかどうかの格好の判断材料になります。
この場合の副業は、昼夜で別の会社に勤めるようなダブルワークではなく、本業に従事しながら自分の成果が収入に結び付く個人事業主としての副業であることがポイントになります。
もしも、あなたが独立が可能なフリーランスに近い個人事業主としての副業ではなく、会社に所属しながら固定報酬で働くダブルワークを選ぶようなプロ人材ならば、成果主義の働き方はあまり向いていないと判断したほうがよさそうです。
「成果主義」から「年功序列」への転職は、経験値を身に付けて
意外に難しいのが、成果主義の会社から年功序列の会社への転職です。
ポイントは、まずは成果主義の会社でAIに取って代わられない経験やスキルを身に付けているかどうかを再確認することです。
年功序列制度は「勤務年数や年齢が高くなるほど経験やスキル、ノウハウが蓄積される」という考えに基づいて運用されています。年功序列制度により人材を確保しやすくする手法は、日本的経営の特徴です。
英語では「年上・先輩であること」という意味から、「seniority system」と表現されているようです。
このようなことから、自分が培ったスキルが志望する年功序列の会社に通用するかどうかを見極める必要があります。年功序列の会社にとって、年齢以上に技術やスキルを身に着けているかどうかが、大きな評価基準になるからです。
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■まとめ
「年功序列」か「成果主義」か。自分がどちらに向いているかわかったら、志望する会社がどちらの人事制度をとっているのか、入社前にきちんと調べておきましょう。
基本的には、「年功序列」「成果主義」、どちらでも順応できる心構えがあると良いです。募集要項で判断がつかなければ、面接で人事の評価基準などについて確認することで入社後のミスマッチを防げます。
とはいえ、年功序列を長年貫いてきた会社でも、経営危機や経営トップの交代、AIの導入などによって、成果主義に転換していく可能性がないとはいえません。重要なことは、自社にはどのような人事制度が合っているのかについて、慎重に検討することです。
どんなにテクノロジーが進化し、AI導入などによって世の中が変わっても、企業の中で人が行う経済活動の根幹を支えているのは人事制度です。
一方で、成果主義だったベンチャー会社が大きく成長し、新卒社員の帰属意識を高めようと年功序列を導入していくことも考えられます。
変化の激しい現代、「会社の看板がはずれたら、自分に何が起こるのか」を常に意識して仕事に臨み、どちらにも順応できる心構えをしておくことをオススメします。
年功序列や成果主義のメリット・デメリットを理解して、自社に合った人事制度を採用することにより、企業・社員双方にとってメリットのある職場環境をつくっていきましょう。
■最後に
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