近年では、個人情報の漏洩問題や医療事故などが相次ぎ、様々な業界で「インシデント」の対策を行う重要性が高まりつつあります。
インシデント管理のツールを導入したり、人材採用でも「インシデントプロセス面接」を行う企業も増えてきています。
ビジネスシーンでは、「インシデント」と聞いて、「ヒヤリハットと何が違うのか?」「アクシデントと違うのかな?」と疑問に思ったビジネスマンが多いです。
企業が大きなリスクに発展する可能性のある重大インシデントを発生させないためには、正しい方法でインシデントを管理し、マネジメントする必要があります。
そこで今回は、インシデントとは何か、人材採用でもインシデント管理が重要な訳について解説します。
「あぶない所へ来ると、馬から降りて歩く。これが秘伝である。」
<徳川家康>
■インシデントとは?
インシデントとは、インシデントは、事故に至る可能性のあった「出来事そのもの」であり、言い換えるなら事故に至らなかった出来事です。客観的な事実として事故に至る可能性があった事実そのものがインシデントになります。
インシデント(incident)はもともと英語で「事件」「出来事」という意味で用いられるキーワードです。英語では「重大な事件に至る危険のあった小事件」というニュアンスでインシデント(incident)の語が用いられています。
医療機関の場合には、ミスをしたけど患者に影響は無かった場合をインシデントといいます。
厚生労働省はインシデントを次のように定義しています。
「日常診療の場で、誤った医療行為などが患者に実施される前に発見されたもの、あるいは誤った医療行為などが実施されたが、結果として患者に影響を及ぼすに至らなかったもの。」
インシデントという言葉は、航空、鉄道、医療、情報セキュリティの分野などで危機管理の用語としてよく用いらています。
【インシデントの例】
・コンピュータやネットワークの脆弱性を悪用して、内部へ不正にアクセスする攻撃されることを防いだ。
・業務で管理されている情報が外部へ流出することを、情報漏えいの対策を強化した。
・看護師が間違った薬剤を患者に投与しようとしたが、同僚の看護師がミスに気づき指摘したので、間違った薬剤を投与しなかった。
上記の場合は、インシデントとなります。
■インシデントとヒアリハットとの違い
ヒヤリハットとは、大きな事故やケガには至らなかったものの、事故になっていた可能性のある、一歩手前の出来事のことです。
ヒヤリハットは、文字どおり「ひやり」とした「ハッと」したというのが語源です。ヒヤリハットとは「ひやり、ハッと」とした出来事を発見したときに起きる人間側の感情です。
つまり、人間の主観です。たとえ誰も「ひやり」とも「ハッと」もしなくても、インシデントは起きている可能性があるということです。
ヒヤリハットには人間の不注意、誤認、判断ミスといった過ちが事故の要因になるもしくは、可能性があったという状況を指す意味で用いられる場合が多いです。
【ヒヤリハットの例】
・脚立などを使わず棚の上の資材を背伸びして取ろうとし、手を滑らせて資材を落下させぶつかりそうになった。
・高齢者が向上に入った際、作業現場の床が濡れていてすべりそうになった。
・金属の切削作業を行っているとき切りくずが勢いよく飛び、目に入りそうになった。
上記の場合は、ヒヤリハットとなります。
■インシデントとアクシデントとの違い
アクシデントは、「不慮の事故」「不意に発生する災難」といった意味の語であり、事故・災難・損害が(規模はどうであれ)実際に生じてしまった状況が念頭に置かれています。
事件(ミス)があったが事故に至らなかった場合がインシデントであり、事件(ミス)が事故に至った場合がアクシデントということです。
インシデントは、アクシデントに至りかねなかった手前の段階とも言えます。
アクシデントには必ずインシデントの段階が存在します。そして多くの場合、そのインシデントに人は気づかないからアクシデントへと変わるのです。
【アクシデントの例】
・優勝候補のランナーが負傷で棄権するというアクシデントがあった。
・チケットの日付を間違えるというアクシデントのせいで、入場できなかった。
・看護師が主治医の指示を誤認して、誤った薬剤の投与を行った。それによって、患者の容体が悪化した。
上記の場合は、アクシデントになります。
■インシデント管理とは?
「インシデント管理」とは、発生したインシデントに対応して終息させること。何らかの原因で正常な企業運営ができなくなってしまったとき、正常に戻すための対策を取らなければなりません。
インシデントが発生したら緊急度や重要度で分類し、優先順位を決めて対応に当たります。
早急な解決が最優先事項のため、インシデントが起こった原因についての言及はありません。インシデントが終息したら、インシデントの経緯を報告して対応を完了するのです。
■インシデント管理のメリット
インシデント管理を行うと、インシデントが起こった際に対応できる人材が増えます。インシデント管理では日常的なインシデントとその解決方法を記録するもの。そのため現場の担当者はどのようなインシデントでも対応できるようになるのです。
結果、上司が手を煩わされる場面も減ります。ユーザーは迅速な対応を受けられるため、顧客満足度の向上にもつながるでしょう。
インシデントを解決するには、スキルをもった人材の確保が必要です。スキルのある人材を確保できれば、インシデント管理を正常に行えるため、大きな問題へと発展してしまう可能性も低くなります。
それと同時に、誰でも対応できるようにツールを作成したり、解決法を共有したりするのも重要です。
■インシデントプロセス面接とは?
インシデントプロセス面接は、インシデントの解決を通して推理力や対応力、判断力や意思決定力などをはかるための面接方法です。
インシデントプロセス面接は、1950年、マサチューセッツ工科大学のポール・ピゴーズ教授によって考案されたリーダー人材の教育研修などで使われる事例研究法の一つです。
誕生から半世紀以上たちますが、近年は能力向上の訓練だけでなく、教育現場の教師のカウンセリングなどにも利用されている伝統的な手法です。
企業はインシデントプロセス面接を行う目的としては、マネジメント人材にふさわしい、優秀な人材を確保するためになります。
面接官がインシデント事例を提示し、面接者は質問を重ねてインシデントの原因や解決方法を提示します。面接官は面接者が提示した原因究明から解決までの過程を評価するのです。
■まとめ
インシデントとは、「事件」や「出来事」という意味で使われている言葉です。使い方としては「重大な事件に至る危険な状況」を指す場合に使われています。
ビジネス上では、「企業にとって好ましくない事件、できごとが発生している場合」に使われます。
事故の一歩手前の重大な結果に繋がりかねない出来事や状況、異変、危機という意味で用いられることが多いです。
企業にとって好ましくない事件、重大事件が発生している場面で問題を解決していくことを「インシデント管理」と呼びます。
インシデントが発生した際に行われる被害把握や原因特定、正常な状態への復旧、利害関係者への報告や連絡といった対応業務を「インシデントレスポンス」(incident response)と言います。
■最後に
採用面接と言っても様々な手法があります。それらの中から募集ポジションや候補者の属性、どの選考過程で用いるかによって、適切なものを使い分ける必要があります。
日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」では、正社員だけだけでなく顧問やプロ人材を採用する際の「インシデントプロセス面接」を推奨しています。
その理由としては、将来リーダーとなるような人材や、管理職人材を採用したい場合は、若手社員や新卒社員とは異なる能力に注目する必要があるからです。
候補者に問題となるインシデント(事例)とその諸状況を提示した上で、候補者が関連する質問を重ねながら問題の原因を究明し、その解決法を提示するまでの過程とその結果を観察するのがインシデントプロセス面接になります。
身近な問題事例を提示して、候補者に質問して貰うことにより、組織のリーダーとして必要となる能力を備えているか見極められるというメリットがあります。
インシデントプロセス面接で提示する事例は、ビジネス現場で起きている実際の問題事例です。
【インシデント事例】営業マネージャー候補の募集面接の場合
「5人のチームメンバーのなかでA氏1人だけが売り上げ目標を達成できませんでした。この事実に対して、自由に質問し、課題とその解決策を考えてください。」
面接官の力量が問われやすいインシデントプロセス面接ですが、リーダーとしての素質を評価するためにはとても効果的です。
ハイクラス人材、エグゼクティブ人材に求められる問題解決力、思考力を評価するのに適したインシデントプロセス面接ですが、運用には留意しておきたい点もあります。
これだけでは最終的な判断できないので、他の選考方法と組み合わせたりしながら、総合的に評価していきましょう。
マネジメント層の獲得に課題を抱えている担当者は、リーダーシップを持つ人材の採用に力を発揮するインシデントプロセス面接をぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。
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