起業家として新規事業を立ち上げる場合には、サンクコストとオポチュニティーコストという相反する二つの物差しを持ち両者の「トレードオフ」を考えることが欠かせません。
トレードオフは、何かを達成するためには何かを犠牲にしなければならない関係のことを指します。
そこで今回は、起業家が新規事業を立ち上げる際のトレードオフを踏まえて、新規事業のオポチュニティーコストとの説明と事業撤退のサンクコストについて解説します。
「自己の権威や自尊心、プライドを守るために、目の前の事実や採用すべきアイデア、優れた意見を無視してしまうリーダー。このような人物は、最終的には自ら組織全体を失敗へ導いている。」
<鈴木博毅>
■トレードオフとは?
トレードオフ「trade off」とは、基本的に「両立できない関係性」を指す言葉として使われています。
言い換えると、一方を尊重すればもう一方が成り立たない状態のことです。つまり、2つの物事がある状態で1つを選択すれば他方が成り立たない状態や、一方が得をすれば他方は損をしてしまうというような状態や状況を表します。
似たようなニュアンスの日本語では、【一得一失】という四字熟語があります。この意味合いとしては、一方で利益があると、他方で損失があることになります。また、物事にはよい面と悪い面がともにあるたとえとして使われています。
ビジネスシーンにおけるトレードオフを表現する事例としては、品質と価格の関係を表したものが一般的です。消費者はクオリティの高いモノを好む一方で、低価格を求めがちです。
しかし、実際に高品質で低価格なものが市場に増えると消費者は得をします。ですが、反対に売る側は、損をしてしまいます。お互いがWINWINにならず継続的にビジネスを推進するという意味では、理想的な商売であるとは言えないでしょう。
新商品を企画し開発する場合には、「低コストでリーズナブル、かつ高品質」であれば、爆発的に売れる可能性があります。しかし、メーカーが実際にモノを作る際は、一つの特徴を訴求することでポジショニングを取る必要があるため、実現が難しいという考えが一般的です。
そのため、最適なバランスを取れるかどうかが、ビジネスの成功を左右する要になると考えられています。
■オポチュニティーコストとは?
オポチュニティーコスト(Opportunity Cost)は、ある行動を選択することによって失われる、他の選択可能な行動のうちの最大利益を指す経済学上の概念をいいます。
日本語で「機会費用」とも呼ばれ、ある行動を選択した場合、実際に選択しなかった他の行動は実現されないことから、仮に選択しなかった他の行動をした場合に得られたであろう利益が犠牲になっていることを意味します。
一般にオポチュニティーコストは、日々、様々な選択肢がある中、現実的に行動する上で全ての選択肢を実現できないことから生ずるものであり、意思決定の際には非常に重要な概念となります。
■オポチュニティーコストの3つの具体例
ビジネス上に関わらず、意思決定のときには埋没費用を無視しなければなりません。どちらにしても取り戻せないコストについては、考えても次に繋がらないからです。本来、検討すべきは「機会費用」です。
機会費用は、新規事業に今後も費やすコストを他の事業に振り分けた時に得られる利益です。
1、働く機会収入面の機会損失
個人において、仕事に就く能力があるのに働く意思のない人は、本来働いて得られるであろう収入面のオポチュニティーコストを失っている。
2、時間効率の機会損出
企業において、給料の高い管理職が、部下に仕事を任せず、単純な事務作業で時間を浪費するのは、本来すべき付加価値の高い業務(成果)面でオポチュニティーコストを失っている。
3、投資する機会損出
資産運用において、マーケットで利益を上げられる機会があるのに、何もしないことによって収益面のオポチュニティーコストを失っている。
■サンクコストとは?
「サンクコスト効果」とは、既に莫大な投資コストが発生していて取り消すことができない際に、投資したコストに気を取られ、合理的な判断ができなくなる心理傾向のことを指します。埋没費用効果やコンコルド効果、サンクコストバイアスとも言われています。
新規事業立上げ時において、投資を継続することが損失をさらに拡大する可能性が高くても、それまでに費やした労力やお金、時間などを惜しんで引き返せなくなる、言わば「もったいない」という感情に縛られている状態です。
経営者や事業の責任者は、新規事業を立ち上げる前は、誰でも魅力的な売上予測を立てますが、思うようにビジネスが立ち上がらないことも当然あります。
そのため、大手企業の新規事業の場合には、売上目標の設定と同時に、3年で黒字化しないならビジネスから撤退するなど、最初から冷静な撤退の基準を設けることで、回収不可能なサンクコストが意思決定に影響しないよう取り決める会社もあります。
■サンクコストを考え過ぎると機会を失うことも
新規事業を立ち上げた際には、サンクコストに目を奪われ過ぎるあまり、暫くビジネスをしてみたが売上が上がらないため、簡単に事業を諦めてしまったことで、もう少し頑張れば大きな勝機があったにも関わらずそれを逃してしまうもあります。
サンクコストの考え方は、過去に投資した費用は授業料だと割り切って、その事業は思い切ってスパッと辞め、新しい機会に挑戦した方が良いという事業撤退の教えです。
例えば、既に3000万円を投資したけれども、未だ立ち上がっていないビジネスがあり、そのビジネスに資金をつぎこんだ影響により、本業の既存ビジネスが影響を受けることもあります。
そのような際は、一旦、そのビジネスを現状維持し、既存事業を伸ばすという選択が正しいこともあります。
世界には、最初の事業をピポッドしたことで成功を勝ち取った有名起業家も沢山存在しています。
ですので、一度、投資した事業コストを諦めても何も残らないという訳ではありません。つまり、投資した資金を諦めたとしても、ビジネスに挑んだ経験やノウハウ、努力までが無駄になるとは限りません。
その失敗の経験や努力は、新しいビジネスに役立つものになります。むしろ、一時的なビジネスの成功よりも、挫折の経験が後に非常に役立つ意味のあるものであったりします。
ですので、その経験が次のビジネスで本当の成功を勝ち取るプロセスなのだと信じて、前向きに進むことが重要です。
また、新規事業を立ち上げたが、未だ市場が追い付いて来ないと感じた場合には、参入のタイミングが良くないケースもあります。その際は、アイデアを一度寝かせ、同じ仕組みを新たなコンセプトで再度、他のビジネスに転用したことで大きな成功を勝ち取ることもあるのです。
■ピボットするリスクとしないリスク
ピボットとは、「pivot」とは、本来「回転軸」を意味する英語で、転じて近年は企業経営に企業経営の方向転換や路線変更することを意味します。
起業したてのベンチャー企業が事業戦略に行き詰まり、軌道修正を余儀なくされることは、新規事業立上げの成功確率から鑑みるとピポッド当たり前です。
新規事業立上げの成功確率は、豊富な資金があり新規事業が得意な会社ですら90%が失敗し、10%が成功すると言われています。ユニクロの柳井社長も10回新規ビジネスに試みても9回は失敗に終わると明言しています。
もしろ、ピボットを別の角度から見ると全く異なる視点でアイデアのブラッシュアップに取り組むことは、現在の企業戦略や市場ニーズといった両者の適合性を確認するための当たり前の通過点であると言えます。
なぜなら、世の中に革新をもたらすスタートアップの新規事業立上げの場合、ビジネスを何も立ち上げない状態で顧客の反応や市場ニーズを明確に確かめることは困難だからです。
ベンチャー企業にとって、競争相手の少ないニッチな市場を見つけることは生き残りの武器となります。
最初は上手く行かない時でもピボットの重要性を理解し、サービスを改善することを惜しまず実行すれば、プロダクトやマーケットそのものの変更を通して自社の存在意義を見つけることができるのです。
つまり、何らかの前向きなアクションを起こし実際にテストした結果から、市場ニーズを掴んででいたか、市場ニーズとのズレがあったかが分かるものだと言えます。
そこでピボットを成功への道筋を探るために必要なプロセスだと考えれば、そのメリットは大きいでしょう。よって、連続起業家の間では、数多くそして素早くピボットを行うことこそが成功への鍵だと考えられているのです。
■まとめ
シリコンバレーでは、IT領域でスタートアップ期にあるベンチャー企業が沢山います。そこでは、暗礁に乗り上げそうな事業の展開を分析し、原因を追究することが成功のステップだと捉えるタフな起業家が多いです。
優秀な起業家の特徴として、サンクコストの呪縛から逃れ、新たな事業展開の可能性のある市場を探求するといった前向きな目的で、積極的にピボットを行う傾向があります。
アイデアを元にした新規ビジネスの場合、ビジネスモデルの転換や顧客層の切り替えなど、多くの戦略を試すべきです。それは、革新的な新規事業であればある程、新しいが故に、試した戦略のうち失敗する数の方が多いからです。
ただし、経営資源に乏しいスタートアップの起業家が大きな失敗を繰り返すわけにはいきません。一つの戦略に経営資源の全てを賭ける博打のような「オールイン」の考えは捨て、サンクコストの低い戦略を沢山マーケットで試すべきです。
そして、成功するまで試し続けることが成功の扉を開けるマスターキーになるのです。
■最後に
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