周りに年齢は自分とさほど変わらないか年下なのに、なぜあの人は短期間で起業家として大きな成長を遂げ、ビジネスの成功を勝ち取ったのだろうか?と不思議に思わせる人はいませんか?
起業家として成長スピードが早い人・遅い人の違いには、「経験学習サイクル」をいかに実践し、どのように「リフレクション」したかという秘密の鍵が隠れています。
そこで、今回は、経験学習とはの説明と経験学習サイクルとリフレクションの効果について解説します。
「人はおよそ70%を経験から学び、20%は観察学習や他者からのアドバイスによって学び、残りの10%は研修や書籍などから学ぶ。」
<マイケル・ロンバルド>
経営者の能力開発の70%以上は、困難な新規事業の立ち上げに何も無い所からチャレンジした結果、現場での経験によるものだと言えます。
なぜなら、自己啓発は大事ですが、読書やセミナー、企業研修など教室でなされる知識伝達型の研修プログラムが経営者の能力開発に寄与しうる部分はほんの僅かに過ぎず、その大半がビジネスへの挑戦と実行した経験によってもたられたものだからです。
つまり、経営者の経験学習とは、社長がビジネスを通して実際に経験した事柄から貴重な学びを得ることを指します。
経験学習では、単に経験するだけでなく、経験を次に活かすためのプロセスが重要であるとされており、そのプロセスを理論化したものが「経験学習モデル」なのです。
■経営者の成長に経験が欠かせない理由
モーガン・マッコールは、成功している大企業の経営幹部に対する大規模なインタビュー調査し、分析した結果、成功した上級管理職に共通する経験を「課題」「上司」「修羅場」という3つのカテゴリーに分類しました。
そして、好業績を上げた上級管理者は、他者である「上司」から価値観や社内政治の行い方を学び、さまざまな挑戦的な「課題」を遂行していくことを通じて自信や独立精神を養い、マネジメントや他者との関係性と配慮、心理的なタフネスなどを身に付けたという事実を発見しました。
つまり、ビジネスの「修羅場」の経験を通じて的確な「内省」することで、謙虚さやモノの見方を学んでいたということを明らかにしたのです。
マッコールがまとめた経験は、以下の通りです。
1、プロジェクトチームへの参画
2、悲惨な部門・業務の事態改善・再構築
3、新規事業・新市場開発などゼロベースからの立ち上げ
■経験学習サイクルとPDCAの違い
経験学習と似た概念として、PDCAが挙げられます。PDCAの4つのステップは、「Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)」。
PDCAが1つの業務の「改善」に重きを置いた手法であるのに対し、経験学習サイクルは、「経験」を「概念化」することによって、既存の枠組みを超えた学びや気づきを得られるのが特徴です。
経験学習サイクルは既存の枠組みを超えて、経験から学びを得るプロセスを示すフレームワーク、PDCAは業務の効率化・改善のための手法であることを押さえておきましょう。
経験学習理論は、デイビット・コルブによって提唱されました。その中核となる理論は、「具体的経験」、「省察」、「概念化」、「試行」の4段階からなる学習サイクルです。
【コルブの学習サイクル】
1、具体的経験:その人自身の状況下で、具体的な経験をする。
2、省察:自分自身の経験を多様な観点から振り返る。
3、概念化:他の状況でも応用できるよう、一般化、概念化する。
4、試行(:新しい状況下で実際に試してみる。
起業家にとってもビジネスの実践を通して良い経験を積み、そのプロセスをしっかりと振り返り、そこから教訓を引き出し実践し、さらにその実践した経験を振り返って行き、これを繰り返すことが経営者としての学びを深めるのです。
■経験学習サイクルの4つのプロセス
経験→振り返り→概念化→実践の4プロセスを詳しく見ていきましょう。
1、経験
最初の経験とは、会議で新規プロジェクトのプレゼンをした、社外研修を受講したなど、具体的な体験を指します。
ここでの経験は、仕事の場面に限ったことではありません。学生時代のクラブ活動やバイト体験などが、のちの振り返りの材料となることもあります。
起業家にとっては適度に難しく、成長が見込まれる目標を立て、実行することが良い経験の条件です。これを経験学習サイクルの重要な要素の1つ「適切なストレッチ(発達的挑戦)」といいます。
これは人から見聞きしたことではなく、自分自身が主体的に考えて行動した経験であることがポイント。自分ごととしての経験が、後の振り返り・概念化にも活きてきます。
2、振り返り
ある経験をしたら、次は「振り返り」が重要です。気づきや学びのきっかけとなる経験の後は、必ず「自分はこの経験から何を学んだか?」という振り返りを心がけましょう。
ビジネスにおいては「振り返り」と呼ばれるこの作業が、経験学習サイクルに必要な要素「リフレクション」です。
気づきや学びを深めるには、「具体的にはどういうことか?」と深める問いや、「他に気づいたことはないか?」と広げる問いを立てるのが有効です。「振り返り」において、 “その経験から何かを学び取ろうという意欲”があることが大前提です。
3、概念化
振り返りの後は、それを概念化することで、初めて他の経験に活かすことが可能になります。
経験した内容について振り返りを行い、「これはうまくいった(これはダメだった)。だから次はこうした方が良いのではないか」という仮説を立て、行動や方針を変更していきます。
「こうやったら上手く行く!」という手応えをコツや秘訣(ノウハウ)として昇華させるのがこの”教訓”のプロセスです。知的好奇心が刺激され「エンジョイメント」が得られます。
例えば、本で「ポジショニング」という学びをしたとしましょう。これについて「マーケティングでは、ポジショニングが重要ということを学んだぞ」と振り返るのも大切ですが、そこで終わりにしてはいけません。
重要なのは、学んだことを抽象化・概念化して、他に転用できるレベルまで落とし込むこと。「ポジショニング」という考え方は、市場調査や企画案作成でも活かせそうだ」などと、今後の取り組みや他の事例に転用できないかを考えましょう。
4、実践
概念化の次に必要となるのが、実践です。もし振り返りや概念化といった内省ばかりで実践をしなければ、せっかく得た気づきや学びを活かすことができません。
教訓を職場で実践するプロセスです。実践してまた新たな経験を得ることで、次の新しいサイクルステップ1「経験」に移行します。
先ほどの例でいえば、本で学んだポジショニングを日々の業務に活用するなど、実践までやり遂げるよう意識しましょう。ただの気づきや学びで終わらずに行動に移せるかが、成長する人・しない人の分かれ道にもなります。
■起業家として経験学習サイクルを自分で回す
経験学習サイクルを自分で回せるようになるためには、リフレクション(振り返り)のクセをつけることが必要です。
「喉元過ぎれば熱さを忘れる」という言葉通り、ヒヤリとしたり、失敗した!と思っても、時と共に記憶は薄れていきます。忘れた頃に同じ過ちを繰り返してしまわないよう、記憶が新しいうちにリフクレション(振り返り)を行います。
起業家には失敗の経験が成長に欠かせない要件になるので、時には再挑戦に向けて「臥薪嘗胆」という強い思いを持つことも必要だと言えます。
臥薪嘗胆(がしんしょうたん)とは、大願成就を成し遂げるために苦労に耐えるという意味を持ちます。
中国の春秋時代、越との戦いに敗れた呉では、王の夫差が、復讐心を忘れないよう、堅いたきぎの上に寝ていたのが「臥薪」。その後、今度は越が呉に敗れ、越王の勾践は、恥を忘れないよう、苦い熊の肝をなめたのが「嘗胆」です。辛苦に耐え最終的に越は呉を討ち果たしたのです。
【リフレクションの具体的なやり方】
起業家としての目標を立ててからプロジェクトに臨みます。その目標に対し、できていること、改善が必要だと思うことを振り返り、客観的に内省します。簡単にリフレクションを行うフレームワークとして、下記のKPT法があります。
KPT法はそれぞれ、下記の3つの視点で自身の行動(経験)を振り返っていきます。
・できていること・続けるべきこと(Keep)
・課題点(Problem)
・次に試してみたいこと(Try)
例えば、ブログを書いたりステークホルダーに進捗状況を報告する際にもKPTの観点から振り返る習慣づけをお勧めします。
■まとめ
一人前の経営者になるためには、ある程度の期間が必要となります。経験学習サイクルは、一過性の短期間のものではなく、何回も継続的にサイクルを回し、徐々に気づきや学びを深めていくものです。
チャレンジした結果から得られ価値ある教訓は、成功体験や失敗したプロジェクトの要因を自分の中で整理していくプロセスを乗り越える過程で、ようやく真実が見えてくるものです。
その際、以下のような質問に対して自身で答え、自分の経験を言葉や方程式として書き留めるとリフレクションに絶大な効果があります。
【教訓を引き出す質問例】
・「つまり、ひと言でいうと?」
・「ポイントをまとめると?」
・「次にまた同じような場面に遭遇したら役に立ちそう?」
・「メンバーのために書き残しておくとすればどんなこと?」
・「それを方程式で表現するとすれば、どんなふうに描けるだろうか?」
・「それを図で表現するとすれば、どんなふうに描けるかな?」
起業家は、さらにサイクルを継続していく過程で非連続の中から一流の経営者としての成長を見せます。「習うは一生」という言葉を胸に、経験学習サイクルを進化し続けていただければと思います。
■最後に
起業家の「気づき」には、コミュニケーションやコーチングが非常に重要です。なぜなら、 周囲と対話して自分では思いつかなかった視点から経験を眺めることにより、多くの「気づき」を得ることが可能になるからです。
つまり、起業家として経験学習を加速的に促進させるためには、ビジネスでの自分の経験について他者と対話し、経験を振り返る機会を積極的に作り出すことが重要だと言えます。
スタートアップの新規事業立上げにおいては、「振り返り」と呼ばれるこの作業がこそ、経験学習サイクルに必要な要素「リフレクション」になります。
起業家として尊敬できるメンターから良いリフレクションが行われ、経験から得られる学びが大きくなります。
経営者になると社内の人間からビジネスの問題点を指摘されたりすることは極端に少なくなります。ですが、メンターから振り返りのフィードバックを受ける際は、厳しい意見でも柔軟に耳を傾けましょう。
その際、自分に肯定的なフィードバックだけではなく、批判さえも”自分と違う考えに触れる経験ができラッキー”と、前向きに受け容れる姿勢を持つことも必要です。
会社は経営者の器以上にはならないと言われます。ゆえに経営者の成長が会社の成長に直結すると言っても過言ではありません。
起業家として1on1ミーティングやコーチングを定期的に受けることで、経営者は自分の考え方や方向性を整理し、前向きな経営判断の能力を高め、エネルギー全開で大きな目標達成に向けて突き進むことが可能になるのです。
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