職能資格制度とは?日本経済を支えた職能資格制度の弊害とは?

投稿日: 作成者: KENJINS運営会社社長 カテゴリー: 運営会社社長   パーマリンク

これまで日本の人事制度と言えば、職能資格制度が最も主流でした。日本企業の成長を支えてきた制度ですが、欠陥も指摘されています。この制度の能力基準は厚生労働省が明確に定めており、公開もされています。今回は、職能資格制度のメリットと、職能資格制度の弊害について解説します。

■職能資格制度とは?
職能資格制度とは、等級制度の種類の1つで、企業が従業員に求める職務遂行能力によって等級づけを行う制度です。従業員の職務遂行能力を基準にした等級制度で、主に日本で発展した等級制度です。

従業員の職務遂行能力とは、階層に応じて従業員が職務を遂行できる能力を指します。階層には新入社員からリーダー職、管理職まで幅広い階層があり、階層ごとに求められる職務遂行能力が異なります。職能資格基準は、従業員の資格等級を設定し、資格等級ごとに求められる基準を設定したものです。

■職能資格制度の3つのメリット
多くの日本企業で導入されている職能資格制度にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

1、ジェネラリストの人材育成に役立つ
職能資格制度では対象となる専門職務を定めず、人事異動を行って様々な職種・業務を経験させることができるのでジェネラリストを育成しやすいメリットがあります。

等級が職務(職種)を超えて設定されていることから、特に、ジョブローテーションなどを通じて、ゼネラリストを育成してきた大企業に向いています。また、熟練工の「長年の経験と勘」が重要視された製造業にも適しています。

様々な職種・業務を経験する職能資格制度では職務経験に偏りが生じないので、バランスのとれた社員が集まる職場を形成することができます。能力を適正に評価する制度によって企業は優秀な人材の流出を防ぐことができ、社員側は役職にこだわらず能力向上に集中することができるでしょう。

2、ポスト不足への対応が柔軟にできる
職能資格制度は、職責と異なるため役職はあまり関係がなく、一律で職能を評価されるため非管理職であっても昇給を望めることで、モチベーションが上がりやすいとされています。

職能資格制度では社員に様々な職種・業務を経験させることができます。そのため、不測のポスト不足に対して経験のある社員を割り当てやすく、会社として柔軟な人事配置が可能です。

また、多くの経験を積んだジェネラリストが常に存在するので、職場全体として人事配置のバランス調整が容易なメリットもあります。

一方、他の制度では、社員に多くの職種・業務に対する経験をさせないため、ポスト不足に対しては外部から採用することとなり、比較的高いコストがかかります。

3、長期間での人材育成に適している
職能資格制度は長期間を通して、様々な職種・業務を経験させるために、社員の能力に見合った処遇を与えるための制度になります。職能資格制度は、長い期間を掛けて熟練工や管理者を育てる環境に適しています。

また、企業の基準で社員の能力を判断して処遇を決めるため、会社が求めているものが社員に伝わりやすい特徴があります。評価される能力は、潜在的な能力と顕在している能力に分けられます。そのため、様々なポジションで汎用性の高いスキルを獲得することができ、人材の長期在籍の見通しがある場合は有効な制度といえます。

一方、職務等級制度では比較的短期間で専門性の高いスキルを獲得することとなるため、汎用性の高いスキルを獲得することには比較的不向きといえます。

ただし、社員の能力は経験を積むごとに向上していくという考えをもとにすると、勤続年数が長い社員ほど高い能力を持っていると判断されやすくなります。そのため、職能資格制度が導入されている企業では勤続年数が長い社員の方が評価されることが多いと言えるでしょう。

■職能資格制度の3つのデメリット
1、年功序列的な運用になってしまう。
職能資格制度は、高度経済成長期から日本の多くの企業に採用されてきたシステムです。ゼネラリスト育成を目指してジョブローテーションを導入している大企業や、専門性が問われる製造業に適しており、現在でも多くの企業に採用されています。

一方で、勤続年数に応じて能力はあがっていくものという考えに基づいているため、どうしても年功序列的な運用になってしまいがちです。

2、職務遂行能力が引き下がることが想定されていない。
職能資格制度は、一旦到達した職務遂行能力が引き下がることは本来予定されていませんので、資格や等級を引き下げる降格は、役職を解く降格とは異なります。

また、職務をまたいだ能力評価は難しく、一定期間勤続すればそれに応じて能力も上がっていく=賃金等級も上がるという結果として年功序列に陥りやすいデメリットがあります。

労働契約上では、使用者に当然に認められるものではなく、合意により変更する場合以外は、職能資格制度について定めた就業規則等に引き下げがあり得る旨を明記するなどし、特別の労働契約上の根拠を持たせることが必要となります。

3、人件費が高騰しやすくなる。
人件費をものともしないほどの成長を続けていた時期には職能資格制度は問題になりませんでした。しかし、バブル崩壊後の低成長時代に入ると人件費が企業の業績を圧迫するようになり、正規雇用者の数を減らすようになりました。

また、多数の職種で共通する能力を設定しようとすると、基準があいまいなものになってしまいます。実際の能力と関係なく形式的に昇級する社員が増えるだけでなく、ポストも不足するようになります。

そのため、昨今の成果主義を基盤とする人事評価とはマッチしづらく、企業の実情に合わせて新たな評価基準を導入する企業が増えています。

■これからの職能資格制度運用
職能資格制度を長期的・持続的に運用するには、人事評価制度と併せた体制が必要でしょう。

人事評価制度は、従業員の業務成果・業務過程・時には介護育児等の家庭事情を評価し、賃金・昇進・賞与・異動などの処遇を決定する制度です。職能資格制度も能力を見て賃金を決定するため、広義での人事評価制度の一つだといえるでしょう。

職能資格制度と人事評価制度を併せた体制として、具体的には次のような取り組みが考えられます。

1、能力評価(職能資格制度)×業務成果評価(目標管理制度・業績評価)
能力評価と業務成果により賃金等級を決定し、業務成果で賞与を決定する

2、能力評価(職能資格制度)×業務過程評価(コンピテンシー評価)
能力評価と業務過程により賃金等級を決定する

3、能力評価(職能資格制度)×業務成果・業務過程評価(360度評価)
能力評価と業務成果や業務過程で賃金等級や異動、育成方針を決定する

能力評価のみで賃金等級を決定するのではなく、業務成果や業務過程においての基準を設け、それらを複合的に評価して賃金等級を決定する方法が望ましいです。

■まとめ
職能資格制度は、全ての従業員に平等に昇格や昇給の機会を与えられるため、モチベーションを維持しやすく、多くの企業で採用されてきた制度です。一人一人の能力に着目して処遇を決めることにより、社員のスキルアップへのモチベーションは高まるでしょう。

一方で、運用が年功序列的になってしまい、実際の仕事ぶりとかい離しやすいことや、人件費が高くなってしまうといった理由から、昨今では運用が困難になる企業も多く見られます。

派遣社員や契約社員も増加し、アウトソーシングも活発に行われています。転職現場でも即戦力となるスペシャリストが求められ、長期間育成コストをかけられる状況ではなくなりました。職能資格制度には逆風が吹く状況になったと言えます。

職能資格制度をうまく機能させるためには、デメリットを補う人事評価指標や制度を並行して運用する必要があります。人事評価制度の構築に役立つサービスをうまく活用し、充実した評価体制の構築を目指してください。

■最後に
また、最近のスタートアップ組織構築の傾向としては、正社員の採用に固執せず、再社員では採用が困難なハイスキルなフリーランスの顧問や副業のプロ人材の活用が常識になりつつあります。

その際、特定の課題解決プロジェクトを推進するためには、専門のチームを作り、各々のチームで独立して事業を動かす「プロジェクト組織」を機能させる必要があります。

以下のような考えをお持ちの企業様は、

「他の顧問紹介会社では費用対効果が合わなかった」
「自社の商品やサービスに合わせた顧問契約を結びたい」
「顧問ごとにフレキシブルな料金体系で仕事依頼したい」
「顧問との直接契約によるトラブルは回避したい」
「1人顧問への依存や顧問とのミスマッチは避けたい」
「人数無制限で営業顧問を積極的に活用したい」
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本田季伸のプロフィール

Avatar photo 連続起業家/著者/人脈コネクター/「顧問のチカラ」アンバサダー/プライドワークス株式会社 代表取締役社長。 2013年に日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」を開設。プラットフォームを武器に顧問紹介業界で横行している顧問料のピンハネの撲滅を推進。「顧問報酬100%」「顧問料の中間マージン無し」をスローガンに、顧問紹介業界に創造的破壊を起こし、「人数無制限型」や「成果報酬型」で、「プロ顧問」紹介サービスを提供。特に「営業顧問」の太い人脈を借りた大手企業の役員クラスとの「トップダウン営業」に定評がある。

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