トップセールスや結果を出している営業マンほど、人が「買う」という行動を起こすための「心の動き」や「根源的な欲求」に沿ったセールスをしています。
顧客が商品・サービスに対して「興味を持つ」「話を聞きたくなる」「欲しくなる」「購入する」など。これらは全て、顧客の心(気持ち)が動いた結果です。
こうした心の動きの裏には、顧客の感情や行動を動かす「人間心理」や「返報性の法則」が購買の意志決定に大きく関わっています。
そこで今回、返報性の法則とは何か、無料のフリーミアムが購買意識を高める訳ついて解説します。
「ニーズとは、欠乏を感じている状態を指す。欲求とは、人のニーズが具体化したものであり、ニーズを満たす特定の対象のことである。欲求に購買力が伴うと需要となる。」
<フィリップ・コトラー>
■返報性の法則とは?
返報性の法則とは、相手から受けた好意や敵意などのアクションに対して、「お返しをしたい」と感じる人間にとってごく自然な心理のことを言います。
「返報性の法則」は、「返報性の原理」と同様の意味合いを持ちます。
基本的には、相手から受けた好意などに対し「お返し」をしたいと感じる人間心理を指します。
誰しも友人や同僚にピンチを救われたら、「次は自分が助けてあげたい」と思うでしょう。一方で、嫌なことをされたら、仕返しをしたい気持ちになることもあるはずです。
■返報性の法則の4つの分類について
返報性の法則は、以下の4つに分類することができます。
1.「好意の返報性」2.「敵意の返報性」3.「譲歩の返報性」4.「自己開示の返報性」
1、好意の返報性の法則
「誰かから褒められたら、こちらも褒めたくなる」というように、相手からの好意を返したくなる心理。
他者から何らかの『好意』を受けとった際に、お礼やお返しをしたくなる心理現象のことです。
相手から受けた好意を、好意で返したくなる心理です。
【好意の返報性の法則の事例】
・仕事で困っている時に助けて貰うと、相手が困っている時に助けたいと思う。
・スーパーで焼いたソーセージを試食させてもらうと、購入したくなる。
・旅行のお土産をもらうと、今度は自分もお土産を返したくなる。
・相手が自分を褒めてくれると、不思議と自分も相手を褒めたくなる。
・洋服を試着して丁寧な接客を受けると、つい洋服を買ってしまう。
2、敵意の返報性の法則
「悪口を言われたら言い返したくなる」など、敵意や悪意に対して仕返ししたくなる心理。好意の返報性とは逆に、こちらをよく思わない人に対してその向けられた敵意を返したくなることを言います。
【敵意の返報性の法則の事例】
・飲食店の接客で横柄な態度をとられると、同様の態度をしたくなる。
・相手から悪口を言われると、自分も悪口を言い返したくなる。
・嫌いという態度をとられると、自分も嫌いな態度を取りたくなる。
・FacebookなどSNS上で、自分の投稿を批判した相手に、敵意を覚える。
・いじめを受けた側は、反対にいじめをする側に回りやすくなる。
3、譲歩の返報性の法則
好意の返報性と似ていますが、人から譲ってもらえたことに対し、自分も譲ってあげようという、受けた恩を返したいという気持ちになる心理。
相手が譲歩してくれたら、次は自分が譲歩しなければいけない気持ちになる心理的な現象のことです。
【譲歩の返報性の法則の事例】
・レジで同時に並んだ際にお先にどうぞと譲られたら、反対にどうぞと譲りたくなる。
・電車の中でお年寄りに席を譲ったら、降りる時に相手から席を譲って貰えた。
・気になっていた商品を値引いてくれたら、買わないと申し訳無い気持ちになる。
・海外旅行に誘われて断った後、日帰り旅行に誘われると行かないと悪い気がする。
・価格を高めにし交渉で値引きすると、最初から適正価格で提示より承諾率が上がる
4、自己開示の返報性の法則
初対面の人と接する時に、「相手から気さくな態度で接してもらえると、自分も心を開きやすくなる」という心理。
相手がオープンに接してくれた時、自分も相応の秘密を開示しなければならないような気持ちになる心理現象のことです。
【自己開示の返報性の法則の事例】
・初対面で相手が壁を作らず個人的な話してくれると、自分も心を開いて話せる。
・友人が自分の秘密を特別に話してくれたら、自分も大事な秘密を話したくなる。
・相手がダメな部分を見せてくれると、自分もダメな所を見せやすくなる。
・自分の気持ちを相手に伝えたら、相手からも同じような気持ちを伝えられた。
・相手が本音を言ったことによって、自分の考えを本音で言えるようなった。
インターネット上のサービスには、基本機能を無料にすることで導入しやすくした上で、より高度な機能を利用する際に追加料金を求めるものも多いです。
このようなビジネスモデルは、「返報性の法則」を活かしたマーケティング手法になります。「フリーミアム」と呼ばれています。
■フリーミアムとは?
フリーミアムとは、「フリー=無料」と「プレミアム=割増料金」の造語で、基本的なサービスや製品を「無料」で提供し、さらに高度なサービスや機能に関しては、有料で行う事により収益を得るビジネスモデルになります。
無料のサービス自体が魅力的で、利用や導入がし易いことや、有料と無料の境目が明確で有料のサービスの優位性がはっきりしていることなどが必要条件であると言えます。
そのため、サービスに触れる敷居を下げて、利用者の間口を広げる事が有効であるとされていましたが、ビジネスの成立には適切な無料ユーザー層を集め、その一部を有料サービスに戦略的に導くことが重要な施策になります。
ただし、フリーミアムは、その仕組み上、初期投資ゼロで行える戦略ではありません。最初に投資を行いサービスや商品を作り、無料で試してもらうことで認知を得て、そこからようやく課金して貰えるフェーズに移行できます。
■返報性の法則を応用したフリーミアムの3つメリット
返報性の法則は、日常生活だけでなく、ビジネスの現場でもよく見られます。スーパーマーケットでの商品試食や、試供品の無料提供などには、返報性の法則が利用されている典型例になります。
1、新規ユーザーを獲得しやすい
フリーミアムは無料サービスで集客するため、消費者がサービスを活用するまでのハードルは低く、新規ユーザーを集めやすいのが特徴です。
世の中には沢山の広告が溢れています。高度に発達した情報化社会のおかげで、情報が氾濫しているといっていいほどの情報に囲まれています。
一般的に新規顧客の獲得ハードルは高く、1対5の法則においては、「新規顧客獲得には既存顧客維持の5倍コストが掛かる」とされています。
新規顧客は、購入を決定する前に商品を試すことで、自分に合うかどうかを確かめることができます。「興味があるけれど、購入に踏み切れない」そのようなお客様の購入を後押しできるでしょう。
その点、「返報性の法則」を活かしたフリーミアムでは無料サービスを入り口にすることで、新規顧客獲得コストを抑えつつ集客も期待でき、有料プランへの移行数増加も見込めます。
仮に新規顧客がすぐ有料プランへ移行しなくても、メルマガ配信などを活用し、顧客との関係性を維持することもできます。
2、有料サービスの購入ハードルを下げられる
いきなり有料プランの利用を促すのは難しいですが、一度価値を感じているユーザーであれば、有料プランに対する購入ハードルは低くなっており、有料プランへ移行する可能性が高いです。
特にtoBサービスの場合は、企業担当者が導入前に社内稟議を実施することが多く、実際の使い勝手が不明瞭では承認が下りにくいなど、導入ハードルは高いです。
無料であれば企業にとっても導入ハードルが下がり、「返報性の法則」が働くため、お試しで導入も検討されやすく、スムーズな導入が見込めるでしょう。
ただし、入り口が無料であり、課金して貰えるまでには一定の時間が掛かるため、資金に余裕がないと運営が難しいという面があります。
特に試供品を作る必要があったり、人件費が多く掛かる事業でフリーミアムを実現させるには、コストが増えるため黒字化するまで耐えるのが困難です。
3、ユーザーの口コミを集めやすい
フリーミアムでは、無料サービスで導入ハードルを下げて大量のユーザーを集客するため、製品への口コミや評判を集めやすいのが特徴です。
集めた評判や意見をもとに製品改善や機能修正を実施できるうえ、ユーザーが自発的にSNS等で口コミを拡散すれば、自社サービスへの認知も広がります。
収益に貢献しない無料ユーザーであっても、その数が増えればクチコミの増加が期待でき、短期間でサービスへのフィードバックを多く得られるので、改善に繋げることが可能です。
レビュー内容を分析することでユーザーの需要を深堀りし、素早くサービスに反映することができるでしょう。
口コミは見込み客が購入可否を決める重要な判断材料だと考えられます。
無料サービスの提供により、ユーザーとその口コミを積極的に集め、「返報性の法則」で見込み客を後押しできるのは、フリーミアムの大きなメリットです。
■人によって返報性の法則が作用しないことがある理由
心理学で「同属性の法則」という概念があります。人は自分に近い性格傾向の人を好みます。
つまり、「ギバー」は「ギバー」を好み、お互いに助け合い、貢献し合い、高め合います。圧倒的なスピードで自己成長し、ビジネス的にも急成長するのです。
アダム・グラトンによれば、人との関わり方については大まかに3つのタイプに分類できるそうです。
1、ギバー
自己犠牲を払ってでも他人に対し惜しみなく与える人。
⇒見返りを求めない。
ギバーの傾向が強い人とお付き合いすることができれば、あなたは沢山のものを得られるはずです。しかし、そういう人にあなたが近づいても、「まったく相手にされない」ということがあるかもしれません。
こうした人たちは、「テイカー」であるかを瞬時に見抜き、決して付き合わないようにします。もし、あなたが「ギバー」から相手にされないとしたら、「For Me」の傾向、「テイカー」の傾向が強いことを見抜かれているからです。
2、テイカー
自分が与えるのではなく、まずは自分が受け取ることを優先する人。
⇒受け取る目的を達成するために与える。
「テイカー」は「テイカー」を引き寄せます。自分のお金儲けばかり考えている人が、「詐欺的な儲け話」にダマされたり、会社のお金を社員に持ち逃げされたという話をよく聞きます。
テイカーの周りには、「自分のことしか考えない人」が集まるので、ダマし合いや、お金の奪い合いが勃発するのです。
もしあなたが、人からダマされたり、お金のトラブルに遭うのだとすれば、それはあなたに「テイカー」の傾向が強い可能性があります。
3、マッチャー
与えることと受け取ることのどちらを優先するのではなく、損得のバランスをとろうとする人。
⇒人間関係の損得は五分五分であるべきと考えバランスを取る。
マッチャーは、ギバーとテイカーのちょうど中間。常に公平という観念に基づいて行動します。
与えられなければ与えないし、何かをして貰ったら恩を返すというタイプです。自らの行動によって損益が出ないようにと自己防衛していきます。
■日常やビジネスで返報性の法則を活用すると効果的な訳
返報性の法則を活用すると、恋愛やビジネスなど様々な面でメリットを感じられるケースが少なくありません。
返報性の法則によって感じられるメリットには、次のようなものがあります。
・好きな人に告白すると、相手にも好きだと思って貰えやすくなる。
・マーケティング部門や営業、販売職などで、仕事で成果を出しやすくなる。
・誰かを助けたり、助けられたりなど、人から親切にして貰いやすくなる。
・親しくない人にも心を開くキッカケとなり、人との距離を縮めやすくなる。
・返報性の法則をマスターすると、対人スキルがアップし人間関係が上手くいく。
営業マンであれば、新規顧客に何度も営業先に足を運んで丁寧に対応することにより、「返報性の法則」に加え、「単純接触効果」も発揮できるため、相手との距離が縮まって信頼を得ることができます。
「こんなに親切にしてくれたから、契約しよう」と要望を通しやすくなることも少なくありません。
顧客に喜んでもらうことを意識すると、相手からも良い返事を貰いやすくなります。
「返報性の法則」はビジネスでも、日常生活でも使わない手は無いと言い切れる程、良いこと尽くしの究極の「人間心理の原則」だと言えます。
■まとめ
「返報性の法則」とは、「自分の行いはやがて周り回って自分の元へ帰ってくる」という話を学術的に説明した人間心理の法則のことです。
人の良い部分を探して褒めたり、物であれば「お返し」をあげる人も多いのではないのでしょうか。
日本では、お中元とお歳暮と文化がありますが、両者は共に、お世話になった方へ日頃の感謝を伝えるために贈り物をする風習です。お互いのことを考えるキッカケとなり、人間関係を深める良い機会にもなります。
感謝という気持ちが根底にありますが、「返報性の法則」に則った人間の反応は、人は相手に扱って貰ったように相手を扱いたいと思い、行動するようになると言えます。
相手を褒めることは好意を与えていることですから、「好意の返報性」で相手も好意を返してくれる可能性が高まり、人間関係が上手く行く最高の「潤滑油」になります。
また、褒めることによってプラスのラベリングが行われ、その通りに能力もアップするという「ラベリング効果」が生まれます。そうすると更に、期待された人ほどその通りの結果を出せるという「ピグマリオン効果」も期待できます。
「返報性の法則」を活用する際は、「相手を喜ばせたい」という純粋な気持ちが大切です。
ただし、見返りを求めすぎたときには相手に下心を感じ取られ、返報性の原理が働きづらくなります。
■最後に
「返報性の法則」をビジネスで活用するには、相手が自発的に「お返しをしたい」思って貰う必要があります。つまり、土台に信頼関係がなければなりません。
いきなりお返し狙いで行動するのではなく、まずはしっかりとコミュニケーションして意思疎通を図り、相手からの信頼を得られるように行動しましょう。
大手企業を対象にしたビジネスを展開している場合、新規開拓を強化したい際には、いかにして役員クラスや決裁権限を持つキーマンとアポイントを獲得することが課題になります。
現在、検索エンジン広告が一般的になりましたが、BtoBのビジネスモデルで商品やサービスを開発し提供している企業では、広告に対する費用対効果が合わなくなっています。
知名度の低い中小企業やベンチャー企業の場合には特に、大手企業の役員クラスとのアポイント獲得のハードルが高く、強力な紹介者でもいない限り、キーマンと商談する自体がそう簡単ではありません。
そのような販路拡大の課題を持つ企業に対して、新規開拓に必要な営業活動の支援を行うことを目的に、営業顧問のチームを作り上げ、人脈や業界でのコネクションを駆使した「トップダウン営業」による紹介営業の実行支援を行っています。
【無料お試し】が可能ですので、まずは会社アカウントを登録し、是非、どのような営業顧問がいるか選定をしてみてください。
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