日本の営業の現場では、コロナショックから抜け出すためにから「年功序列」から「成果主義」へと徐々に人事評価制度が変わりつつあります。
現在、その評価基準の一つとして「コンピテンシー」の導入が注目されています。
会社の売り上げを効果的に上げるためには、営業マン一人一人の成長を促し、営業マン全体の生産性を高める必要があると言えます。それには、パフォーマンスを向上させるために、営業組織に「セールスコンピテンシー」を導入すると効果的です。
そこで今回は、セールスコンピテンシーとは何か?営業職にコンピテンシーが大事な訳について解説します。
「評価とは、その人の価値を決めることではない。評価の目的は、本人にさらに最善を尽くそうと思ってもらうことにある。ゆえに、社員に対する評価は、自発的に仕事の改善を促すものでなければならない。」
「評価において、はっきりさせるべきことは、その人の優れている点を成果に結び付けるために何をするかだ。」
<ピーター・ドラッカー>
■セールスコンピテンシーとは?
「セールスコンピテンシー」とは、営業の職務やセールス役割において、優秀な成果を発揮する「トップセールス」や「営業のハイパフォーマー」に共通して見られる「成果に繋がる行動特性」を指します。
「セールスコンピテンシー」(sales competency)という概念には、「営業スキル」「セールス技能」「提案力量」「行動力」「営業としての適性」「課題発見力」「ヒアリング力・傾聴力」など、様々な意味合いがあります。
法人営業を推進する上では、「セールスコンピテンシー」の数値が高いと、営業組織の役割に応じて安定的に良い成績を上げ続けることができます。
企業では、優秀な人材の残す成果のみならず「なぜ、継続的に営業成果を上げられるのか?」「なぜ仕事ができる営業マンとして活躍できているのか」など、より細かい背景に着目することでコンピテンシーが明確になって行くとされます。
■ハイパフォーマーの行動特性
人材の持つスキル・特性は以下のような捉え方をする事ができます。
・テクニカルスキル:業界・職種の専門能力やスキル
・ポータブルスキル:どの仕事でも共通して発揮されるスキル
・スタンス:ものごとに対する姿勢や指向
・ポテンシャル:そもそも持っている知的基礎能力や性格・個性
この分け方で見た時に、「コンピテンシー」は下段にある「ポテンシャル」や「スタンス」にあたるものです。
ハイパフォーマーの行動特性としては、以下の3つの数値が高いと言われています。
・専門知識や技術
・ノウハウ
・基礎能力
会社全体の売上を底上げするためには、トップセールスに共通する基本的な要素を観察し分析することが鍵となります。
それは、言い換えると何がその営業マンを高い売上成績を上げる「ハイパフォーマー」にしているのか?という核心的な要素を明らかにし、「モデリング」することが突破口になると言うことです。
なぜなら、会社の業績を左右するのは、営業マンの潜在的な基本的資質や思考ではなく、表に現れる行動や技能だと言えからです。
営業コンピテンシーの特徴は、明確な評価基準を用いるため評価者ごとの評価のブレが小さいという点にあります。
■コンピテンシーが生み出された背景・歴史
コンピテンシーはもともと、1950年代に心理学用語として誕生しました。ハーバード大学のマクレランド教授が1970年代前半に行った調査をきっかけに、人事用語として知られるようになりました。
マクレランド教授は、米国国務省からの依頼を受けて、外交官の「採用時のテスト成績」と「配属後の実績」の相関関係を調査しました。
その調査では一般的にイメージのある「学歴」と「業績」の相関は強くないという結果になりました。
一方で、高い業績を挙げる従業員には共通した「行動パターン」や成果を上げることに繋がる「性格」、「価値観」、「考え方」があることが判明しました。
その後、コンピテンシーは、「高い成果を上げる従業員に共通する行動特性」を意味する言葉として使われるようになります。
そうした要素を行動指針や評価基準に取り入れることで、従業員の望ましい行動を引き出し、組織全体の成果を上げるという狙いがあります。
■営業のコンピテンシーの例
コンピテンシーでは、具体的な行動そのものではなく、行動につながる「性格」「動機」「価値観」といった要素を重視しています。
そのため、可視化しやすい「知識」「行動」「技能」とは異なり、コンピテンシーには可視化しにくいという特徴があります。
営業のコンピテンシーとしては、以下のような特性が売れる営業マンの要素の一例として挙げられます。
・感情に流されず落ち着いて判断ができる「冷静さ」
・率先して行動した上で状況に応じて軌道修正をする「行動志向」
・初対面の相手に対して好印象を与える「第一印象度」
・問題の本質を見極めて解決を図る「分析思考」
そのため、トップセールスになるために必要不可欠になる「コンピテンシー」を探し、自社なりに定義する際には「どんな業務スキルがあるか?」を見つけ出すと良いでしょう。
その際、スキル的な側面だけではなく、成果につながる行動の元となる「性格」や「動機」「価値観」などの要素を洗い出して共通点を見つけ出すと更に効果的です。
■営業にコンピテンシーを導入するメリット
営業コンピテンシー評価のメリットは、大きく4つがあります。
1、優秀な人材の獲得、育成ができる
採用面接や人事評価にコンピテンシーを活用することによって、自社の事業や業務にあった特性を持っている、パフォーマンスを出しやすい人物を獲得、育成することができます。
人事評価制度によって、社員の能力や配属先での業績を客観的に判断できます。また、社員それぞれの強みと弱みを把握することで、最適な人員配置にもつなげることが可能です。
たとえ現時点ではスキルが不足していても、成果をあげるために必要なコンピテンシーを持ち合わせていることが分かれば、育成後の活躍を期待できます。
一方で、スキルは十分にあるけれども、コンピテンシーを持っていない場合は、自社が求めているような働きが望めない可能性が高まるため、採用しないという判断が先んじてできるのです。
2、従業員全体のパフォーマンス向上が期待できる
営業人材の採用面接、営業職の人事評価、営業研修にコンピテンシーを活用することで、営業パーソンにとってコンピテンシーは自分自身の評価や成長にも関わる重要な指標となります。
人事評価制度を人材育成の基準にすることで、営業マンそれぞれに達成してほしい目標を明確にします。さらに、達成するために必要な教育の計画が立てやすくなります。
そのため、コンピテンシーを営業マン同士の間で普及することができ、営業パーソンがパフォーマンスの出し方を理解し、営業のPDCAを回しながら自助努力することで、会社全体としての営業活動の生産性向上が期待できるでしょう。
3、納得感のある評価ができる
コンピテンシーを人事評価に取り入れることで、これまでは絶対的なKGIやKPIの達成率などの定量的な指標でしか評価できなかったものを、コンピテンシーによって成果を出すまでの過程の行動を評価することができるようになります。
また、コンピテンシー評価では、評価に値する行動が明確に示されているため、これまで上司からみた印象や感覚で評価されていた定性的な部分を、公平に評価することができるようになります。
これによって、評価を受ける従業員の納得感も高まるのです。評価基準が明確になるため、努力が反映される評価ポイントを従業員が理解しやすく、モチベーションのアップや生産性の向上が見込めます。
4、人事評価の負担が減る
定性的な要素を評価して優劣を付けることは大変難しく、特に人事・評価担当者が悩みやすいポイントです。
コンピテンシーを活用することで従業員の納得感を生むと共に、評価者の運用コストも低減させて、より効果的な人事評価の運用を行うことができます。
待遇について年功序列だけでなく、成績や業績も含めて評価する場合、評価基準を明確にする必要があります。そのため、コンピテンシー評価を導入することで、待遇の根拠を示すことが可能になります。
コンピテンシー評価は成果だけでなく、「行動=プロセス」を評価するための公平性を高められます。そのため、評価される従業員の満足度アップに繋がるでしょう。
■営業にコンピテンシーのデメリット
コンピテンシーを社内に導入する際には、ハイパフォーマーへのヒアリングを部門ごとに行い、職種・役割別のコンピテンシー項目を定める必要があります。
また、コンピテンシーを策定するためには、ハイパフォーマーの行動分析やヒアリング、コンピテンシーモデルの作成、人事評価などの運用面の整備など、導入までに掛かるコストが大きいということがデメリットと言えます。
「1人にだけ聞けば済む」というものではないため、コンピテンシー項目の設定に時間がかかるというのが、一番のデメリットです。
また、ハイパフォーマー自身が「なぜ自分が高い成果を上げられているのか」「何が他のメンバーとは違うのか」ということを認識できていないと、ヒアリングを行っても、コンピテンシーを明確にできないこともあるでしょう。
この他、いったん設定したコンピテンシー項目を長期間、変更せずに運用し続けていると、時代の変化に対応できなくなるという課題もあります。
コンピテンシーを導入する前には、「どのように活用していきたいか」「どのような方法であれば、無理なく導入することができるか」などを慎重に検討しましょう。
■コンピテンシーの導入方法と活用ポイント
コンピテンシーモデルを作成するには、まず「目指す人物像」を明確にします。
例えば、「好業績を上げる」「営業効率がよい」などの目標に対するコンピテンシーを把握し、それぞれに適した評価を整理していきます。
コンピテンシーモデルを作成する手法としては、実在する人物を「モデリング」することが最も一般的に用いられる手法です。
なぜなら、実際に高い成果をあげているハイパフォーマーをモデルとしてコンピテンシーを策定するため、現実に即したコンピテンシーモデルを作成することができ、比較的実用的だからです。
しかし、作成したコンピテンシーがモデルとしたハイパフォーマー個人の特性に偏ってしまっていないか、他の従業員でも獲得しうるものであるかは確認をする必要があります。
■営業マンの育成におけるコンピテンシーの導入
営業マンの人材育成にコンピテンシーを導入することも、一般的な活用シーンの一つです。ハイパフォーマーを育成する営業研修内で、コンピテンシーの要件を伝え、浸透させていくことで、従業員が成果を上げる行動を取ることを促します。
そのためには、事前に自社の商品やサービスを販売し、圧倒的な成果を上げた「コンピテンシーモデル」を定め、営業研修内で「どのように考え、行動すればパフォーマンスを出すことができるか」を伝えて行くと効果的です。
また、営業研修をするだけではなく、「セールスコンピテンシー」に基づいて個人の成長目標を設定することで、従業員の積極的な行動を促します。
従業員が成果創出に向けて何をすればいいのかを明確にすることができ、達成可能性を高めることができるので、従業員のモチベーション向上も期待ができます。
■まとめ
コンピテンシーを企業に導入する際は、ハイパフォーマーへのヒアリングをもとに、コンピテンシー項目を明確に定めます。
明確なコンピテンシー項目があることで、「企業が営業に何を期待しているのかが明確になる」「営業パーソン一人一人が、コンピテンシーを意識した行動が取れるようになる」といった効果が期待できます。
そのため、営業マン一人一人の成長が期待でき、生産性の向上に繋がって行くでしょう。また、コンピテンシーを営業職の人事評価に活用することにより、評価のブレが発生しにくくなり、営業担当者が評価に納得しやすくなります。
営業人材の採用や面接に取り入れれば、自社にマッチしたハイパフォーマー候補人材を採用しやすくなり、入社後の活躍が期待できるでしょう。
このように、セールスコンピテンシーを導入すると、人事評価や採用にもよい影響をもたらすと言えます。
ハイパフォーマーに共通する行動特性を意味するコンピテンシーには、「営業マン一人一人の成長」や「セールス活動の生産性の向上」に繋がるといった効果が期待できます。
営業の現場に「セールスコンピテンシー」を導入することは、営業マンの能力開発が実現するため、売上アップにダイレクトに繋がります。
また、営業職の人材採用の際にも会社の経営理念にマッチする「セールスコンピテンシーモデル」作成し効果的に活用することで、会社の業績を向上させる優れた人材の採用に繋がるため、会社全体の業績アップに良い影響がもたらされるでしょう。
売上成果を高めるだけではなく、コンピテンシーを使った評価を取り入れることで、「カルチャーフィット」する幹部人材の獲得、トップセールスになる可能性の高い人材を発掘し、育成をより効果的に行うことができるようになります。
経営にとって重要な要素である営業力の向上や営業人材マネジメントに、「セールスコンピテンシー」を取り入れてみてはいかがでしょうか。
■最後に
商談を推進する際は、誰が決定権者であり、プロジェクトの予算の決裁権を持っているのかを把握して、どのような承認ルートで決まるのかというBANT条項を把握することで成功率は高くなります。
BANT(バント)とはBudget、Authority、Needs、Timeframeの頭文字をとった略語です。
・Budget:予算
・Authority:決裁権
・Needs:必要性
・Timeframe:導入時期
どの項目も法人営業(BtoB営業)における案件について、リード情報として掴んで置かなくてはならない情報です。
しかし、多くの中小企業の経営者やベンチャー企業の起業家は、購買活動を成立させる上で最も重要な鍵と言える、大手企業の役員クラスや決裁権を持ったキーマンとのアポイントの獲得が困難という課題を抱えています。
日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」では、このような課題を解決するために、人脈コネクターとなる「営業顧問」のコネクションを活かし、決裁権限のあるキーマンを対象にした「トップダウン営業」の実行支援を行っています。
具体的には、営業顧問の人脈リストもしくは、企業様が作成した見込客へのアプローチを行い、企業様が想定しているターゲットとなる見込客とのアポイント取得をベースに営業支援を展開します。
その際、営業代行会社とは異なり、同行営業まで行うことを基本にすることで、リード顧客との関係性に構築に掛かる時間と労力をショートカットし、有効商談に繋げクロージングに至る可能性を高めています。
また、クライアント企業の要望により顧問の報酬体系を工夫することで、「成果報酬型」でアポイントの取得から案件化を高め、「受注=クロージング」するまでをサポートすることも可能です。
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