現在、人材の流動化やグローバル化が進む中、大手企業だけでなく上場を目指すスタートアップなどで、取締役やCXOなどの経営幹部人材やボードメンバーを獲得するための「エグゼクティブサーチ」が活発化してきています。
昨今では、経営陣に限らず、ミドルマネジメント層やITなど先端事業を推進することを目的に優秀なハイクラス人材を獲得するために「エグゼクティブサーチ」を活用する会社が以前より増えつつあります。
そこで今回、エグゼクティブサーチとは、経営幹部の紹介会社を活用するコツについて、解説します。
■エグゼクティブサーチとは?
エグゼクティブサーチとは、主に取締役やCXOんどの経営幹部を中心に重要なポジションに合致する優秀なエグゼクティブをピンポイントで探し出し、マッチングさせる人材採用手法のことを指します。
エグゼクティブサーチは、英語で「executive search」と表記され、主にオーナー経営者やCEOから依頼を受けて、取締役やCOO、CSO、CTOなどのCXOを採用するためのスカウト手法で、ヘッドハンティングと呼ばれています。
日本語では、「経営幹部の人材紹介」という意味になります。「管理職人材紹介」または「管理職あっせん」というニュアンスを持ちます。「executive 」という英語は一般的に、中間管理職より上のジョブタイトルにあたる「経営幹部」を指しています。
CXOや事業責任者などのマネジメント層、エンジニアや研究職などの高度な専門スキルを持った人材などが主なエグゼクティブサーチの対象となります。
こうしたハイクラスの人材は引く手あまたなため、企業にとって見つけるのが困難で、転職サイトや自社ホームページではなかなか採用につながりません。
そのため、エグゼクティブサーチ会社やヘッドハンティング会社に依頼して、ヘッドハンティングや引き抜きを行います。
ヘッドハンティングとは、企業の経営者・役員・幹部の企業で優秀な人材として従業している方を外部企業からスカウトし、外部企業に迎え入れることを意味しています。 これに対して、引き抜きとは、他社からスカウトを受けて、転職することを意味します。
いずれも優秀な人材が対象となりますが、ヘッドハンティングの場合、転職活動を行っていない経営人材を独自のルートで探し、転職を促すスキームが中心になります。
適した人材がいれば、ヘッドハンターが本人と連絡をとり、クライアント企業との面談につなげるという流れです。様々な手法でハイクラス人材を探し、転職へと導くことを推進するエグゼクティブサーチによる転職支援が、本来的な意味でのヘッドハンティングだと言えます。
■経営幹部やCXO採用にエグゼクティブサーチが必要な訳
経営層や幹部採用は、企業の戦略策定や業績にも直結するため、CXOと呼ばれる経営幹部としてビジネスで成果を上げることが可能なハイクラス人材が求められます。
CXOは、欧米企業の経営幹部を意味しますが、日本企業の会社法では、取締役に就任することもあります。
そのため、必要とされるのは、経験、スキル、実績だけではありません。従業員を牽引する人柄・リーダー性、企業文化や組織とのカルチャーフィットするかも非常に重要な要素となります。
特に社長、取締役、他のCXOなどの経をに担うボードメンバーとの相性が良いことが前提になります。
エグゼクティブサーチの目的は、以下のようなケースがあります。
・幹部や経営層などの重要ポジションに相応しい候補者が社内に見つからないケース
・組織力強化に向けて外部からリーダーとなる人材を迎えるケース
・新規事業の立ち上げや経営者を採用し事業承継を行いたいケース
・後継者問題などの課題解決に向けて必要な人材を採用するケース
経営に近いポジションほど極めて限定的な人物が求められ、結果、転職市場にマッチする人材が顕在化していないケースが多々あります。そのようなケースでは、エグゼクティブサーチ会社に対し、採用候補者のリストアップや、アプローチを依頼するという選択肢が生じます。
エグゼクティブサーチが対象とするのは、代表取締役社長、取締役、社外取締役、CEO、COO、CSO、CFO、CTO、CBO、CINOなどのCXOから、各事業部門責任者、部長、課長クラスまでが一般的です。
そのため、エグゼクティブサーチ業務にあたるコンサルタント自体も、MBA取得者や、各業界のスペシャリストが多くなります。
■エグゼクティブサーチ会社とは?
エグゼクティブサーチ会社とは、クライアント企業からの依頼を受けて、提示要件に合う人材を探し出し、スカウトしてマッチングを図った上でクライアントに紹介を行う企業のことを指し、ヘッドハンターとも呼ばれます。
日本では、優秀な人材確保のため、1970年代に在日外資系企業がエグゼクティブ・サーチ・ファームを活用したことが始まりになります。
これまで、エグゼクティブサーチを利用する企業としては外資企業が中心でしたが、激しい人材獲得競争や社会変化に合わせた既存事業の変革や新事業立ち上げなどを背景に、日系企業においてもヘッドハンティングサービスの利用は広がっています。
その後、2000年代に入り、日本企業も積極的に外部から優秀な人材を求めるようになり、エグゼクティブサーチの需要も増大しました。経営幹部や新規事業の責任者、トップセールスなど、転職市場では採用が難しい人材の採用手法として利用されています。
日本企業がエグゼクティブサーチ会社に人材紹介を依頼する理由は様々ですが、新規事業・海外事業展開、M&Aの際などに、社内だけでは不足する優秀な人材を確保することが代表的な目的として挙げられます。
エグゼクティブサーチには、主に2つの種類があります。
1、リテイナーファーム
エグゼクティブサーチを企業が活用する際に料金体系としてリテーナーを貰うケースが多くあります。リテーナーとは、日本語で着手金を意味します。リテーナーフィーは、採用の成否にかかわらず発生する費用のことです。
リテーナーフィーが発生するのは、転職市場の人材プールから候補者を探すのではなく、最適な人材をさまざまな手法で調査し、アプローチするなど事前の活動が重要かつ比重が高いことが理由になります。
クライアント企からの依頼内容によっては、求めるハイクラス人材が見つかるまでサーチ活動を続け、長い場合は1年以上の期間に及ぶケースもあります。
そのため、経営陣やトップマネジメント層を探す場合に利用されるケースが多いスキームになります。
候補者を探し出し、アプローチを行うには、エージェントとなる紹介会社に相応の手間やコストがかかるため、採用活動のスタート時に着手金「リテイナーフィー」を依頼企業から貰います。なお、リテーナーフィーは成立の可否にかかわらず支払われます。
さらに、人材獲得に成功した際には、採用ポジションの年収の数十パーセントを報酬として支払う場合もあります。
2、コンティンジェンシーファーム
コンティンジェンシーファームは、「成功報酬型」の人材紹介会社です。成功報酬型とは、採用が決定した場合にのみ費用が発生する料金体系です。
幹部や経営層候補となるトップマネジメント以外にも幅広い人材の発掘を行っており、紹介料などの費用は、採用決定後に発生します。
成功報酬型の人材紹介で、トップマネジメント以外にも、実務層やミドル層など広範囲のポジションの採用に利用されています。
コンティンジェンシーファームの特徴は、サーチフィーがかからない点です。
求人広告の場合、応募者が全くいない場合でも広告掲載費用が発生します。求人広告と比較すると、リスクを抑えたエグゼクティブ人材の採用に繋がります。
■エグゼクティブサーチの3つの特徴
1、情報収集能力
エグゼクティブサーチファームは、求められる人材を探し出す情報収集能力に優れています。サーチする際は、クライアントが求める人材はどのような人物なのかを掘り下げて分析し、その人材がどのような業界や企業に存在するのか目星を付けるのです。
限られた登録者の中から候補者を選ぶサービスと違って、ヘッドハンターが独自の業界内ネットワークや、社長・経営者とのネットワークを駆使して人材をリストアップしていくケースが多く、この情報収集能力こそが最大の強みです。
続いて人脈やあらゆるネットワークを駆使して潜在的な候補者を探し出し、キャリアや業績・実績などを精査して人材をリストアップします。有力なコネクションを持ち、サーチ能力に長けているのがエグゼクティブサーチファームです。
2、スクリーニング力
エグゼクティブサーチファームのヘッドハンターの多くは、傑出したスクリーニング能力を持ちます。
スクリーニングとは「ふるい分け」などの意味を持つ言葉です。ヘッドハンターは、面談などを通じて候補者とコミュニケーションを重ね、相手が要件を満たす人材か、求めているポジションに適性があるかなどを判断します。
採用難易度の高いトップマネジメント層の採用にあたっては、候補者の精査の際に、単に過去のキャリアだけを把握し、推薦する訳ではありません。
クライアント企業にマッチした価値観や人柄を備えた人物かどうか、求めているポジションに適性があるかどうかなど、面談などを通じて多面的に見極める高度なスキルが必要になります。
専門的な目線で事前に選抜されるため、クライアント企業は求める人材像に限りなく近い人物と会うことができるのです。
3、アプローチと交渉
クライアントとの打ち合わせを行い、ブラッシュアップしたリストをもとに電話や手紙、メールなどでアプローチを行います。
エグゼクティブサーチファームは人材の発掘と紹介を専門としているため、人材に対する交渉能力が高いのも特徴です。
転職希望者と比べて、現職で活躍している有能な人材を見つけるには高度なテクニックを要しますが、優れたエグゼクティブサーチファームでは転職市場に現れないハイクラス人材を探し出すことができます。
その理由としては、転職を希望していない在職中の人材でも、アプローチに対する反応があれば面談の機会を設けてもらえるように促し、信頼関係を築いているからです。
エグゼクティブサーチファームに依頼すれば、アプローチから交渉までスムーズに進められるでしょう。
■エグゼクティブサーチのビジネスモデル
ここでは、登録型の人材紹介と比較してビジネスモデルやコスト構造についてご説明します。手法の違いから、従来の人材紹介サービスを「登録型」、ヘッドハンティングを「サーチ型」とも言います。
1、登録型の人材紹介
登録型の人材紹介では、データベースに多くの求職者を集めておくことで、クライアント企業から依頼があった時に、登録者の中からマッチングして候補者を紹介する仕組みを作っています。
候補者発掘にはそれほど手間がかからないため、リテイナーフィー(着手金)はかからず、候補者が採用に至った場合のみ紹介手数料が発生する成功報酬型を採用している人材紹介会社がほとんどです。
主な対象としては、一般社員からミドルマネジメント層まで幅広く、対応実務層の採用に向いています。比較的候補者の数が多いミドル層の採用には、登録型の人材紹介が適している場合が多いです。
2、エグゼクティブサーチ型の人材紹介
エグゼクティブサーチ型の人材紹介の場合は、クライアント企業からの依頼を受けて、市場全体から候補者をサーチします。主な対象は、経営者、経営幹部などのエグゼクティブそう、もしくは高度専門職になります。
時に独自の人脈やネットワークを駆使しながら時間をかけてサーチするケースもあります。
候補者発掘には、相応の手間やコストがかかるため、着手金と成功報酬がかかるリテイナー型が多く取られています。トップマネジメント層や、発掘難易度の高いミドル層の採用において有効な手段の一つになります。
■まとめ
エグゼクティブサーチは、自社ニーズに合う候補者を積極的に探し出してアプローチを行う人材紹介になります。
特徴としては、転職市場で見つけることが難しい経歴・経験や特殊技能をもっている人材を採用したい場合、ヘッドハンティングサービスの活用は効果的です。
希少なスキルや経験を持つハイクラス人材は、企業からの引き留めもあります。
仮に転職したいと考えても、常に複数の会社からスカウトの話を持ち掛けられている、転職エージェントから頻繁に連絡があるなど、オープンな転職市場に出てくる前に転職が決定してしまうケースが多いです。
このようなポジションの場合、労働人口のわずか5%と言われる転職希望者に限らず候補者を探してくるヘッドハンティングは有効な採用手法と言えます。
サーチコンサルタントが、クライアントの企業理念、現在の経営課題、将来の展望、理想の人事組織体系について詳しく理解しているとともに、採用ポジションが期待されている点、中長期で達成すべき課題、理想とする人物像などを深く理解しています。
エグゼクティブサーチでは、社長、役員、経営幹部などエグゼクティブ層を対象とした人材の紹介を行います。
経営層の刷新や新規事業の立ち上げなどに関わる採用の場合、情報保持のために、ある時期までは採用活動を公にしたくないこともあります。エグゼクティブサーチは広く求人を募るような採用手法ではないため、限られた担当者のみで採用活動を進められます。
エグゼクティブサーチ会社には、ハイクラス人材の紹介に留まらず、企業分析、事業戦略立案、アセスメント、その他コンサルティング全般のサービス提供をしている会社が多いです。
優秀な人材は引く手あまたな存在です。企業として選ばれるという意識で臨む必要があります。自社の魅力やポジションの役割、期待する役割などを丁寧に伝える、相手の希望をしっかり聞く姿勢も必要になります。
「マネジメントの才能は、幸いにも音楽や絵画とは違って、生まれながらのものではない。経営の才は、後天的に習得するものである。それも99%意欲と努力の産物である。その証拠に、10代の優れた音楽家はいても、20代の優れた経営者はいない。」
<江副浩正>
■最後に
エグゼクティブサーチは原則として経営幹部や事業部門責任者クラスといったエグゼクティブ層の人材を採用することが目的となります。
しかし、必ずしもそれらのハイクラス層だけを指すとは限らず、即戦力や経営幹部候補としてミドル層が対象となることもあります。
エグゼクティブサーチは、大手企業を問わず、上場を目指すスタートアップが、外部からボードメンバーとなる経営幹部人材を招き入れることで組織力の強化や社内活性化を図りたい場合にも効果的です。
自社の後継者として適任の人材が社内にいない場合の解決策としてもエグゼクティブサーチは有効だと言えます。
エグゼクティブサーチ会社は、課題解決に必要な人材の要件定義、ハイクラス人材のサーチだけでなく、ヘッドハンティングに必要な情報収集、スカウトのアプローチにおいて、長年に渡って培った独自の経験と価値あるノウハウを持っています。
また、リサーチャーやヘッドハンター独自の情報網や、候補者へのカウンセリング力、候補者とクライアント企業の要望をうまくすり合わせる調整力など専門性の高い実務能力も備えています。
エグゼクティブサーチ会社は、白紙の状態から人材を探していく訳ではなく、自社の持つ独自の人脈、業界ネットワーク、人的なコネクションを駆使してスカウト業務を推進して行きます。
「スタートアップ系」「上場会社系」「IT系」「メーカー系」「医療系」「ゲーム会社系」「建設系」など、特定の業界に強みを持つエグゼクティブサーチ会社もあります。
■良い会社からエッドハンティングなら転職したい方へ
現在、企業が経営判断から優秀な人材を社外に求める一方で、エグゼクティブ人材は、売り手市場の中で自分の能力をより活かしより評価してくれる企業で働きたいと考える傾向が強まっています。
ヘッドハンティングでは、ヘッドハンティング会社から連絡を受けるまで、基本的に“待ち”の姿勢になります。そのため、本気でキャリアアップ転職を考える場合には、自分から能動的に転職活動を進めることも重要です。
転職を考えている人材もエグゼクティブサーチのサービス内容をよく理解することに加え、自身の得意分野や実績が、企業が求める人材要件と合致しているのかも確認することが重要です。
例えば、知識・経験・スキル、人脈、そして経営のノウハウを豊富に持つCXOに当てはまる場合、経営コンサルティング型の「エグゼクティブサーチ」を活用することで、非公開のハイクラス求人を紹介して貰うことができるため、役職と年収アップを実現しやすくなるでしょう。
日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」では、顧問紹介サービスで培った経験や実績に裏打ちされた知見、課題解決能力、経営コンサルティングのノウハウによって満足度の高い経営幹部人材の紹介とマッチングを実現させています。
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