ビジネスでは、意図しない行動、意図した行動を問わず、甚大なヒューマンエラーが起こることがあります。前者は知識や経験不足で起こることが多く、後者は仕事に慣れているベテランによって起こるミスになります。
ヒューマンエラーは、プロと言われる人でも体調不良など際には誰にでも起こりうるため、組織全体として原因を把握し適切なヒューマンエラー防止対策を実施することが欠かせません。
なぜなら、ヒューマンエラーは本人だけの問題ではなく、企業としてのマニュアルの有無、作業環境や設備、周囲の人なども影響してくるからです。
そこで、今回、ヒューマンエラーとは何か、ビジネスの業務で人為的ミスを減らすコツについて解説します。
「成功を祝うのはいいが、もっと大切なのは失敗から学ぶことだ。」
It’s fine to celebrate success, but it is more important to heed the lessons of failure.
<ビル・ゲイツ>
■ヒューマンエラーとは?
ヒューマンエラーとは、「人間が起こす(起因する)誤り(ミス)」と訳することができます。
達成する目的や目標に向い業務を行っている際に人的要因によりミスを侵してしまった際に利用する単語で、意図していない結果に至ってしまった場合などにも利用されます。
ヒューマンエラーを定義すると「すべきことをしなかった、またはすべきでないことをしたなどの人間の行為によって、意図しない結果が起こること」になります。
簡単に「人為的ミス」と言い換えることもできます。意図しない行動によるヒューマンエラーと意図した行動に起因するヒューマンエラーでは取るべき対策が異なります。
意図しない行動によるヒューマンエラーの原因は、知識やスキルの不足、思い違い、不注意などにあります。
これを防ぐには、従業員の研修や教育をしっかりと行うこと、段階を追って経験を積めるような仕組みを作ること、マニュアルや規則を整備することなどの対策が求められます。
意図した行動に起因するヒューマンエラーは手順の無視や手抜きが原因です。ミスをするときの心理状況を探ると、「大丈夫だろう」という慢心や過信、アバウトさなどがあることがほとんどです。
■ヒューマンエラーが注目される理由
現代は、技術の進歩により活動範囲が広がり、より高度のサービスを受けることができる反面、ヒューマンエラーによって引き起こされる被害も拡大してきました。
一つのミスが大きな事故に発展しかねない作業に人間が介在すると、巨額の損害を被るというリスクは避けられません。
そのため、自働化・無人化が対策として考えられるが、人間が全く介在しない仕事などはあり得ません。ミス対策を講じても、最終的に人間の注意力にゆだねられる仕事をなくすことはできないのです。
「便利さの文化」の背景には、常に危険も伴い、「便利さの文化」とは「危険文化」であると言い換えることもできます。この両側面は、ヒューマン・ファクターを含めて考えれば、決して単純な問題ではないことが分かります。
したがって、人間が作った物のほとんど全てにおいて、利便性が高まった反面ヒューマン・エラーによる危険性が潜在しており、従来に増してヒューマンエラーが注目される理由だと考えられます。
■ヒューマンエラーと2つの種類
ヒューマンエラーには、2つの種類があります。それが、「オミッションエラー」と「コミッションエラー」です。
■オミッションエラー
オミッションエラーとは、「するべきことをしなかったために起きたエラー(ミス)」を指します。「うっかり忘れてしまった」という場合も、こちらのパターンになります。
「すべきことをしなかった」とは、本来ならやらなければならなかった行為をつい忘れたり、途中を省いたりして適切に行わなかったために失敗してしまうことです。
本来であれば、行っていたチェックを怠りミスを発生させてしまった場合などが該当します。簡単に表現すると「うっかり」で起こるミスのことだと考えるとよいでしょう。
1、見落とし・やり忘れ
作業中の意図的ではない見落としややり忘れが結果的に大きなトラブルにつながることがあります。
・作業工程の見落とし
・メールの確認忘れ
・上司への報告漏れ
2、判断ミス
作業に慣れてしまったことからの慣れや作業に対する知識不足やスキル不足など経験に関係なく発生しやすいミスです。
・作業中にトラブルが発生したが上司に報告する必要はないと独断で判断した
・期限までに間に合うだろうと独断で判断し依頼を請け負った
3、注意力・認知力の低下
慣れから発生することもありますが、疲労や焦りなど社員の精神状態の問題によって引き起こされるミスのことです。
・業務中に居眠り運転で事故を起こした。
・急いでいたので資料の誤字に気づかなかった。
業務プロセスにおいては、ミスを発生させないためのチェックポイントを随所に配置した手順を構築しています。
この手順を割愛してしまった場合や、忘れてしまった場合にはミスが起きる可能性が高く、慣れや業務への理解不足が要因として考えられます。
■コミッションエラー
コミッションエラーとは、「行為が誤って実施されたために起きたエラー(ミス)」を指します。実行の過程に誤りがあることから「実行エラー」とも呼ばれます。
「すべきでないことをした」というのは、やったことが正しくなかったために失敗してしまうことです。選択、順序、時間、質の間違いや失敗によって起こります。
手順そのものに誤りがあった場合、手順の順番を誤ってしまった場合など、何かしらの意図があり行った結果、ミスが起きた場合のことをいいます。業務に慣れている社員に起こりやすいエラーだと考えられます。
1、手抜き
作業を早く終わらせたい・楽に終わらせたいなどという気持ちから、手抜きをしてトラブルにつながることです。
・行うべき点検をせずに作業をした
・マニュアルで定められている工程を意図的に省いた
・基準に満たない製品を利益のために販売した
2、故意
中には悪意を持ってヒューマンラーを発生させるケースもあります。
・会社の情報を他社に流した
・会社のお金を横領した
コミッションエラーが起きないためには、手順を明確に指示することやマニュアルの整備、ミスが起きた際に確認や戻りができる仕組み作りが必要です。
■ヒューマンエラーの対策に必要な4つの観点
ヒューマンエラーの対策を講じる際には、ご紹介する4つの観点を意識して対策を検討することが有効です。
しかし、実際には人が起こす人為的なエラーになるため、完璧に0になると断言できる施策を講じることは難しいとされています。
1、検知
リスクは想定していないと回避することができません。そのため、日頃からリスクを予測する習慣を身につけることが大切です。
日常の中にある些細な危険にも目を光らせ、気づいたらすぐに改善するという癖をつけましょう。
ヒューマンエラーを防ぐには、発生の検知を迅速に行い対応することが必要です。
代表的な例がダブルチェックです。一人の人が作業をしセルフチェックを行った後に、他の人がチェックしミスを発見していく方法は、多くの場面で利用されます。
見落としや間違いに気が付けば、修正をして正しい処理を行うことが可能です。こうしたダブルチェックは人だけではなく、システム的な観点でも実施されることが増えてきている点も特徴の一つです。
2、情報収集
KYT(危険予知トレーニング)を行って、リスクに対するリテラシーを高めることも重要な対策です。ヒューマンエラーの対策に関しての他社事例や書籍などを利用した情報収集も有効です。
現在では、ヒューマンエラーの対策に関するセミナーも多く、オンラインでの受講も可能となっています。
こうした場面を利用し、自社に応用して活用していくこともヒューマンエラーの対策としては有効であると理解し積極的に情報収集を行っていきましょう。
3、分析
ヒューマンエラーが発生した時には、その原因やどのような事故につながったを分析する必要があります。エラーが発生したことを検出したら、迅速に被害を最小化する行動を起こす必要があります。
しかし、平時から備えがなければ、突発的に発生したエラーに対応することは難しくなります。根本的な原因が判明しない場合に講じた対策は、抜本的な解決策にはならない場合が多くなります。
例えば、下記のようなことです。
・転記ミスが多いので、不必要な転記作業をやめる。
・ミスの発生頻度が多い工程を機械化する方法を考える。
・選び間違えたらミスにつながるような物を作業場に置かない。
再発を防止するためには、その原因を分析し、類似したミスが起きないような対策につなげる必要があります。
4、対策
一定の業種では作業中のヒューマンエラーが怪我や大事故に直接つながるおそれがあります。原因の分析後には、対策の立案を実施します。再度、同じような事象がおきないためには、どのような対応が必要であるのか、今回の対応をどうするのかを決めていきます。
事前に考えられるエラー発生時の対策を用意しておくようにしましょう。対策の立案については、時には長期的な対応が必要な場合もあります。
そうした場合には、まずできることについても対策を講じ、順番に対応を行っていきましょう。
■ヒューマンエラーの防止に有効な7つの方法
ヒューマンエラーの防止対策は、単体で行うよりも複数を組み合わせて行う方がより効果的です。その点も踏まえ、自社における対策の優先順位を決め実施していきます。
1、人的作業の排除、効率化
ヒューマンエラーは人が要因となり起きるミスです。業務の中で、ヒューマンエラーの発生が想定可能な作業をやめる・減らすことで、ミスが発生する機会そのものを最小化させます。
出来るだけ人が処理を行うプロセスを排除していくことも方法の1つです。
ついつい・うっかり型の例は、下記のとおりです。
・記憶できない、思い出せないなどの記憶エラー
・見逃してしまった、聞き違えた、見まちがえたなどの認知エラー
・現状や今後とるべき対応に対する判断を間違える判断エラー
・とるべき方法や手段を間違えてしまう行動エラー
2、ヒューマンエラーを誘発する業務をシステム化する
システム化を行うことで、単純作業がなくなれば、その分、処理スピードも向上する場合があります。このように人手での処理を効率よく、かつ精度があがる仕組み作りを行いましょう。
複雑で理解が難しい業務はヒューマンエラーを発生しやすくなります。可能な限り業務を分かりやすいシンプルなものにしましょう。新しいアイデアや機器を採用して業務を行いやすくすることで、同様の効果が期待出来ます。
3、フールプルーフ
フールプルーフとは機器のなどについての考え方の一つです。利用者が操作や取り扱い方を誤ってもミスが起きない、あるいは誤った操作ができない仕組みを構築することを意味しています。
この物理的な制約を与えるという対策は、「業務をなくす」ということよりも実行可能性は高いです。
医療の場合でも、間違いやすい複数の薬剤を近くに保管しないなどの工夫がしやすいからです。例えば、入力項目に数字以外が入力されれエラーとなる、管理者の承認がなければデータを送信できないなどの仕組みとして利用されます。
このように、そもそもの環境においてミスを起こしにくい環境作りを行うことも対策として有効です。
4、ヒューマンエラーの発生する可能性を理解させる
本人にヒューマンエラーの可能性に気づかせ、注意を持って作業を行えるようにします。この行為は危険予知トレーニング(KYT)とも呼ばれます。
日頃から作業中にある隠れたリスクを予測させるトレーニングを行う・エラーの発生しやすい場所にラベルや標識を用意するなどの手段で、エラーが発生する可能性を作業中・作業前に理解させるのです。
5、マニュアルや手順書などを整備しておく
想定可能なヒューマンエラーの対策を記載したマニュアルや手順書を作成しておけば、多くのエラーを未然に防止出来ます。
チェックリストを活用し、作業に漏れが発生しないようにするのも良いでしょう。
「見落とし」「思い込み」「やり忘れ」といったヒューマンエラーは、「タスク管理」「ToDoリスト」などのツールを活用すると減少できます。
6、リテラシーの向上
ヒューマンエラーのリスクや課題についての勉強会などを通じ、従業員の意識改革を行うことも有効な対策です。ツールを活用すれば、ヒューマンエラーを可視化できます。
リテラシーの向上が図られると個々人の意識や注意力が高まるだけではなく、関係者での声掛けなども自然に発生してきます。こうした関係性により、ヒューマンエラーを起こしにくい職場環境を構築していきます。
組織において教育体制を整備したり、定期的に研修などを行うことが有効です。また、基準を設けて、能力があると判断できる者にのみ業務を行わせるという対策も必要な場合もあります。
7、過去のヒューマンエラーを参考にする
会社では過去に何らかのヒューマンエラーが発生しているものです。
同じミスを繰り返さない・似たようなミスを起こさないためには、発生してしまったヒューマンエラーの原因を分析し、具体的対策を考えた上で全ての社員に周知します。
ヒューマンエラーは発生させないことが一番よいのですが、発生してしまったものも重要な経験として今後につなげなくてはいけないと考えましょう。
■ヒューマンエラーを減らすポイント
ヒューマンエラーを完全に防止することはできません。
なぜなら、ビジネスを推進する上では、社長や現場の担当者を含めて、どんな人間でもミスをしてしまう可能性があるからです。
しかし、ヒューマンエラーを極力減らしていくことは可能です。ヒューマンエラーはミスした本人を叱ったり、「安全第一」などのお題目を掲げたりするだけで、たやすく改善できるものではありません。
ヒューマンエラーを防ぐために最も効果的な対策は、エラーを誘発する業務そのものをやめることです。エラーというものは実施する必要がある業務にともなって起こるものです。
つまり、そもそもリスクのある業務を無くすことができれば、エラーも無くなるという考え方です。
この考え方を機会最小といいます。ヒューマンエラーの対策では、基本的に機会最小から検討すべきです。リスクのある業務を「やめる」「なくす」「減らす」という対策は、あらゆる対策の中でも極めて効果が高いからです。
あらゆる「ヒューマンエラー=人為的ミス」は、以下の際に起こりやすくなります。
・作業を終えるまでの時間がない時
・作業が単調すぎるまたは複雑すぎる時
・組織に安全重視の考えや空気が欠落している時
・生産性・効率性・スピードばかりが重視される時
どこに原因があるのかを深掘りし、それを踏まえてヒューマンエラーが起きにくい仕組みや環境を作り、少しずつエラーを減らしていくことが改善のポイントになります。
■まとめ
ヒューマンエラーとは、予め定めた作業工程の基準や期待を裏切る行為を指します。
ヒューマンエラーとしては、事故や不良の原因となる作業員や操縦者の故意・過失を指し、設備・機械の不具合や故障、およびそれが元になって事故や災害が発生し、その場合、「人災」と呼ばれることもあります。
多くの企業では、ヒューマンエラー再発防止のために是正処置を講じていますが、効果が少ない企業が多く見られます。 これを撲滅するには、ヒューマンエラーの発生原因を知って、対策を講じなければなりません。
ヒューマンエラーは、人間の行動あるいは意思決定のうち、「やるべきことが決まっている」ときに、「やるべきことをしない」あるいは「やってはならないことをする」際に起こります。
故意に「やるべきことをやらない」または「やってはならないことをする」は、違反と呼ばれ、これもヒューマンエラーに分類されます。
ヒューマンエラーは人間が直接引き起こすエラーだけではなく、人間を取りまく作業環境、施設や設備、教育訓練、企業の安全への取り組み方など多くの要因が含まれます。
これらをヒューマンファクターと言います。ヒューマンエラーを防止する時の対策の対象だと考えられています。
働きやすい、作業のしやすい環境であれば、手元の作業においてのミスを軽減する期待が持てます。従業員の心身が健全であれば、疲労などを要因とするミスを軽減するなど相乗効果をもたらす結果を期待できます。
■最後に
ヒューマンエラーの対策は、平時から常に備えがあってできるものです。事後的に対策をしようとしても、取り返しのつかない事態にまで発展していることもあります。
一つ一つの対策が事故を防止する防護壁となり、最悪の事態を回避することへと繋がっていきます。そのため、実際に対策が可能かどうかを検討しながら、なるべく初期段階でエラーを防止できるようにすることが大切です。
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