経営者や幹部といった高い職位で活躍する人に特に求められる能力として「コンセプチュアルスキル」という能力があります。
コンセプチュアルスキルは、「正解のない」問題に直面したときに、問題の本質を見極め、周囲が納得できる最適解を導き出す能力を指すため、経営者が強いリーダーシップを発揮するためにも必要不可欠なものです。
半世紀以上も前に提唱された考え方ながら、近年あらためて重要度が見直されているのがこの「コンセプチュアルスキル」です。
そこで今回は、コンセプチュアルスキルとは?事業成長や組織力の向上に重要な訳について解説します。
■コンセプチュアルスキルとは?
コンセプチュアルスキルとは、知識や情報などを体系的に組み合わせ、複雑な事象を概念化することにより、物事の本質を把握する能力です。コンセプチュアルスキルは概念化能力とも言われ、抽象的な考えや物事の大枠を理解する力を指します。
具体的には論理思考力、問題解決力、応用力などが挙げられる。コンセプチュアルスキルはより上位のマネージャになるほど必要であると考えられています。
コンセプチュアルスキルを身に付けると、複雑で正解が見出しにくい物事を、論理的かつ創造的に考えられるようになります。
ハーバード大学のロバート・カッツは、マネージャに求められる能力として、ビジネススキルを大きく下記の3つに分類しました。
・コンセプチュアルスキル(概念化能力)
・ヒューマンスキル(人間関係能力)
・テクニカルスキル(業務遂行能力)
コンセプチュアルスキルは仕事における問題解決の上流部分である「事象の認識」「問題の構造的把握」「解決の方向性の案出」の一連の流れに必要になってくるスキルでもあります。
■コンセプチュアルスキルが求められる階層
コンセプチュアルスキルは、ロワーマネジメントでは求められる比率は少なく、ミドルマネジメント、トップマネジメントと組織の階層を上がっていくほど、必須となるスキルとなります。
なぜなら、組織の階層を上がっていくほど、自分自身で成果を生み出すことよりも、メンバーの力を借りて成果を生み出していくことが欠かせない要件になるからです。
そのときに必要なのが、ビジネスや課題の本質を見抜いて適切な解決策を考えたり、ミッションやビジョン、顧客価値といったものでメンバーを鼓舞したりすることです。
それに必要なのが「抽象的な概念」を扱うコンセプチュアルスキルです。
例えば、ミドルマネジメントでも問題解決やチームの士気をあげることは必要です。従って、組織の階層が下がれば必須度は減少しますが、ビジネスで成果を上げるためには、コンセプチュアルスキル高めれば役に立つ力なると言えます。
また、マーケティング分野やソリューション型の営業職、非正規雇用のメンバーを多く雇用しているような仕事では、ロワーマネジメントでもミドルマネジメントと同じように抽象的な概念を扱ったり、理念やビジョンで人を動かしたりする力が必要になります。
コンセプチュアルスキルは、実務を進めるためのテクニカルスキル、人間関係を作るヒューマンスキルを身に付けたうえで、さらに高い成果をあげるうえで役立つスキルだと言えます。
■コンセプチュアルスキルの向上で生まれる組織や個人の3つのメリット
コンセプチュアルスキルを磨き、経験や情報をもとに多くのことを学習・判断し、複雑な物事を論理的に考えられるようになれば、業務に合理化・効率化をもたらすことができます。
1、課題の本質的な解決が可能になる
何かの物事やトラブルに対症療法で向き合うだけでは、組織の成長やビジネスの成功は望めません。そのため、「コンセプチュアルスキル」をフルに活用して本質的な課題を見極め、解決策を導き出すことが重要になります。
コンセプチュアルスキルは、対象を抽象化することで本質を見極める能力です。コンセプチュアルスキルを高めて、枝葉末節ではなく、幹となる本質的な課題を見出して解決することで、プロジェクトの成功や早期のトラブル解決などが見込めます。
ビジネスは問題解決の連続です。枝葉末節の問題にもぐら叩きのように対応するのではなく、一気に根本的な課題を解決できれば、組織の生産性も大きく向上するでしょう。
2、仕事の全体像を共有しやすくなる
「コンセプチュアルスキル」によって物事の構造を分かりやすく捉え、それを組織で共有することで、何をしなければならないか、何のためにその業務はあるのか、何を優先させるべきなのか、仕事の全体像や方向性をメンバー間で共有することが可能になります。
コンセプチュアルスキルによる抽象化は、物事の構造を捉えることでもあります。構造を捉えて、チームや組織の進む方向性を定めることはリーダーに不可欠な力です。構造化して物事を単純化することで、仕事の全体像をメンバーに共有することも容易になります。
コンセプチュアルスキルによる抽象化と具体化は「たとえ話」や「事例」を扱う能力でもあります。単なる単純化だけではなく、たとえ話や事例を使った共有は若いメンバーにも分かりやすく伝わります。
3、メンバーのパフォーマンスを引き出しやすくなる
組織の方向性・業務の全体像の共有が進めば、自分の業務の意義を正しく理解し、組織の中での位置付けにも納得できるようになります。
また、仕事の全体像や価値、そして、自分たちが成し遂げるビジョンがメンバーに伝われば、メンバーのパフォーマンスも高まります。
なぜなら、自分に求められている仕事が、全体の中でどう位置付けられて、どんな意味があり、どんな貢献に繋がるか伝わることは、メンバーの内発的動機付けに繋がるからです。
やる気が高い状態で、かつ同じ方向を向いて仕事することは、ミスや失敗の減少、組織内の協力体制、メンバーからの提案や挑戦に繋がり、組織のパフォーマンスが向上します。現場のスタッフやローワーマネジメントであっても、「コンセプチュアルスキル」を身に付け、自ら問題の発見・解決・業務改善に取り組むことの効果は計り知れないと言えます。
4、イノベーションを生み出しやすくなる
物事を構造化して考えることができるようになれば、そこから大胆な課題解決策や斬新なアイディアを導き出せるようになります。コンセプチュアルスキルによる抽象化や構造化は、イノベーションを生み出す土壌ともなります。
「顧客の価値」「自分たちの介在価値」といった抽象化した情報を扱えると、いまのビジネスモデルや商品・サービスの形に囚われない新しいビジネスを考えることも可能になります。
ラテラルシンキング+多面的視野+柔軟性+チャレンジ精神の発露によって、既存の価値観や手法からはみ出したビジネスモデルを生み出すことも可能になるはずです。・
■コンセプチュアルスキルの7つの要素
コンセプチュアルスキルは先の見えない時代(VUCAの時代)と言われる現代において、非常に重要なスキルとされています。
コンセプチュアルスキルには「事象の認識」「問題の構造的把握」「解決の方向性の案出」の3つの流れに関するスキルでもあります。これらを遂行するための7つのスキルを紹介します。
1、分ける(分割・分解する)スキル
「わかる」の語源はそもそもをたどると「分ける」から来ていると言われています。事象を正しく認識するためにはまずは分類を行う必要があります。
例えば、
・部下の報告で何を伝えたいのかよく分からない(事実と意見が分けられていない等)
・仕事の段取りが悪い・遅い(行うべきことが作業レベルに分けられない)
などの背景には「分ける」スキルが身に付いていないことがあります。
一方で仕事が早く、成果も残すビジネスパーソンは、
・現状を俯瞰して、的確な現状把握をしている
・行動がスムーズし、ムダな動きが漏れがない
・発言している内容が聞き取りやすく理解しやすい
などの特徴があります。
仕事がデキるビジネスパーソンは仕事のあらゆる場面で「分けて」(分割・分解して)考えて行動しているのです。すなわち、分けて考えられる人 、分割思考を意識的もしくは無意識的におこなっている人なのです。
2、マトリクスで整理するスキル
分けて括るスキルを劇的にパワーアップさせるのがマトリクスです。マトリクスとは、「行列」です。行という縦軸と列という横軸をもつ表のことです。このマトリクス、すごく単純な仕組みなのですが、いろんなことを考えるときに、とても便利なツールです。
マトリクスを使用するためには分類とラベリングしたものを組み合わせる必要があります。これによって、分析から対策までのプロセスをカバーすることができ、仕事の生産性が向上します。
有名な『7つの習慣』に出てくる、とりわけ有名なマトリクスです。縦軸に「重要/重要でない」という2つの行、横軸に「緊急/緊急でない」という2つの列をとって、2×2のマトリクスを作っています。
時間の使い方を4つの領域に分けて理解することによって、第2領域を重視することの大切さを、自然と理解することができます。
3、図式化するスキル
問題の構造的把握において重要なのが、図式化になります。事象を整理するためによく使われるのが要素間関係図や因果連鎖図などが例として挙げられます。
図式化を行う上での注意点は一つ一つの線や図形に意味を明確に持たせることです。例えば、実線と点線で異なる意味を付与する、矢羽根型の図形はプロセスのステップを意味するなど直観的にその線や図形が何を意味するのかが理解できる図式化を行うことが重要になります。
4、数字を正しく解釈するスキル
世の中の数字は恣意的に操作されたデータも多くありません。
例えば、交通事故の死亡率が90%抑制されましたという報告が上がっていたとしてもシートベルトを締めていた案件のみに限定して算出している可能性もあります。我々は数字や周囲の意見に流されることなく、本質を見抜くことが求められます。
他にも平均値だけを頼りにしすぎて分布を把握していないことにより、適切な打ち手が講じられないといった失敗も発生してしまうこともあるでしょう。
このように数字を分析・調査する際は調査対象の偏見や下心が反映されていないか、母集団に特別な性質はないかなどを把握する必要があるのです。
5、因果関係を把握するスキル
問題の構造を正しく把握するためには因果関係を正しく理解する必要があります。そのうえで相関性がありそうな事象の因果関係を把握する際は4つのパターンで検証するとよいです。
(1)「Aが原因で、Bが結果である」
(2)「Bが原因で、Aが結果である」
(3)「AもBも何か他の原因の結果である」
(4)「AとBは実は無関係」
これらの4つのパターンでしっかりと検証を行い、問題の構造を正しく把握することが重要になります。そして、問題を正しく理解できたら実行に解決に向けて実行に移すことも忘れないようにしましょう。
6、組み合わせてアイデアを生むスキル
問題を把握した後は解決策を考える必要があります。そのためにアイデアを生み出す組み合わせの能力が必要です。
世の中のほとんどの仕事は誰かの課題を解決したいというニーズをプロダクト、またはサービスなどに繋げることが求められます。
その際に、ニーズの複数のポイントとプロダクトやサービスなどの複数のポイントを網羅的に組み合わせるということを素早く行うことで解決策のバリエーションは広がり、どの解決策が最も効果的かを検証することが重要になるのです。
7、物事を要約するスキル
最後に大きな仕事を進めるためには影響力の大きい人間を動かす必要があります。その際に正確かつ簡潔に伝えるために必要なスキルがサマライズです。
サマライズをするためには、
(1)全体の見取り図を事実をもとに提示する
(2)相手にとって興味のある内容を詳細に伝える
(3)自分なりの意見や考察を伝える
という3つのステップを踏む必要があります。
このように明快に話をすることができるようになれば、必要なことが必要な人に間違いなく伝わるようになるのです。
■コンセプチュアルスキルを高めるポイント
コンセプチュアルスキルは、思考力を高めるトレーニングを日々実践することで高めることが可能です。
物事の「物事の抽象化」「言葉の定義」「概念の具体化」、3つのトレーニングを実施することでコンセプチュアルスキルを高めることも可能です。
ただし、コンセプチュアルスキルを向上させるためには、新規事業の立ち上げなど難易度の高いプロジェクトへの参画が必要不可欠になります。
その際、実施の仕事を通じた上司による教育を効果的に行うためには、ある態度の権限を委譲しエンパワーメントすることと、本人の中から答えを導き出すコーチングが欠かせません。
すなわち、上司が部下に一定の責任を割り当てた上で、部下が助けを求めた際には、質問を通じて考えを引き出したり思考を広げたりする手伝いをするのです。
与えられた権限の中で、上司のサポートの下、自律的に考え決断をしていくことで、少しずつ思考の枠を広げ、判断の精度を高めていくことができます。
このようにメンターと起業家育成に近い取り組みの繰り返しが、クリティカルシンキングやラテラルシンキングを鍛えることへと繋がって行くのです。
■まとめ
コンセプチュアルスキルは、抽象化や構造化によって物事を単純化したり、本質を見出したりする力です。
単純にして本質を見出すことで根本的な問題解決を実現できたり、抽象化・構造化することで異業種や全然違う世界の成功例を取り入れたり、相手に伝わりやすいように事例やたとえ話を用いて話したりすることができます。
従って、クリティカルシンキングはビジネスの方向性を見出して大きな意思決定を行ったり、ミッションやビジョンでメンバーを鼓舞したりする必要がある経営層には必須のスキルです。また、問題解決やコンセプトやビジョンで相手を動かす力は、マネージャーやプレイヤー層にとっても成果をあげる力となります。
コンセプチュアルスキルを身に着けると、曖昧で抽象的な答えのない問いや課題に対しても周囲や部下を納得させ、答えを導き出すことができ、課題解決のための計画を立てることもできるようになります。
多くの部下を持つことになるマネジメントレベルの高い層には必要不可欠なスキルになるでしょう。
■最後に
働き方の多様化が進んだことで、組織の中に起きる問題や解決すべき課題も多様化しています。論理的思考や多面的視野、柔軟性やチャレンジ精神を武器に困難な状況を乗り切っていくことが必要です。
コンセプチュアルスキルは先天性の高いスキルとも言われています。従って後天的には、なかなか育成し難いスキルになります。新たに外からコンセプチュアルスキルの高い人材を採用することは組織全体の底上げを図るためには効果的な手段の1つと言えます。
また、コンセプチュアルスキルの高い人材は「本質を見抜くのが得意」「合理的な思考・行動を好む」という特徴があります。
こういった人材を起用するメリットは「新規、あるいは今後注力するべきプロジェクトにおいてリーダーシップを発揮することができる可能性がある」ことが挙げられ、組織の生産性や成果の向上を見込むことができます。
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