ESG評価の高い企業は、事業の社会的意義、成長の持続性など優れた企業特性を持つと言われています。
欧米の企業ではすでに「ESG投資」は、全投資額の3分の1を超えるほどの規模になり、金融機関にとってESGは重要な指標となっています。
そこで今回、ESG投資とは何か、企業がESG投資に着目する必要性がある理由について解説します。
■ESG投資とは?
ESG投資とは、環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視・選別して行なう投資のことです。ESG投資は、財務情報だけでなく、環境(Environment)と社会(Social)、ガバナンス(Governance)の視点を取り入れて判断するのがESG投資です。
従来主流であった財務情報のみに焦点をあてた企業選定ではなく、非財務情報も考慮することで、地球環境はもちろん企業そのものの持続可能性にもつながるという考え方が近年世界中で広まっています。
財務情報とは、売上や経費、予算、資金管理、資金調達(融資・株式発行)、余剰資金の運用について帳簿や財務諸表にまとめた資料を指します。
財務情報だけでは、企業の社会的責任や環境問題への対策を反映しにくいのが特徴です。
現在、企業が社会や消費者から支持され、長期的に安定して発展していくか評価するには財務情報だけでは不十分という見方広がっています。
■ESG投資とSDGsの関係
ESGとよく似た言葉にSDGsがあります。「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」を指し、2015年に国連で採択されました。
以下のように意味や対象がそれぞれ異なります。
ESG:企業が取り組むべき課題(企業や投資家)
SDGs:国連の持続的な開発目標(各国政府、企業、個人)
ただし、ESGとSDGsは全く別物という訳ではなく、「SDGsの達成にESGへの取り組みが必要不可欠」な活動になります。
国連では2030年までに世界中の貧困や環境問題を解決することを目標としています。
17のゴールと169のターゲットが設定されたSDGsは国連が定めた世界全体の目指すべき「目標」であるのに対し、ESGはそれらを実現するために企業や投資家たちが実践すべき手段や活動の規範であると言えるでしょう。
ESG投資の拡大は、企業のSDGsや、カーボンニュートラルへの取り組みの促進につながります。
■ESG投資が拡大した社会的背景
2015年(平成27年)9月に、国連サミットで持続可能な開発目標(SDGs)が採択されました。これは2030年(令和12年)までに、持続可能でよりよい世界を目指す国際指標です。
SDGsを達成するため、具体的に取り組むべき企業の課題がESGになります。
そしてESG投資が生まれた背景には、以下のような要素があります。
・企業の財務情報だけでは長期的な収益性を図るのが困難。
・人財の活用(人的資本)など非財務情報の重要性が高まっている。
・世界的な環境問題が企業業績に大きな影響を与えている。
・サプライチェーンでの人権問題が消費者の購買判断に大きな影響を与えている。
・「ESGへの取り組みが企業の持続的成長に必要」という認識の広まり。
これまで投資家は、企業の営業利益やキャッシュ・フローなどの株価指標・財務情報をもとに投資判断を行ってきました。
ESG投資は、こういった財務情報に加えて、企業のESG活動への評価・分析を基に投資を行うことです。短期的な利益追求のために生産活動をするより、環境や社会へ配慮しながら長期的に活動することが企業に求められているのです。
日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、ESGの観点を投資に取り入れたことが注目を集めるキッカケとなりました。
■企業がESG経営を実践するメリット
企業におけるメリットは、投資マネーの獲得ではありません。企業がESG経営を実践するメリットを解説します
1、ステークホルダーとの関係性構築
ESG投資をすることで地球温暖化や女性活躍に取り組む企業の後押しになります。そのため、間接的にあなたの資金がESGの取り組みに役立つのです。
ESG経営に取り組むことで、ステークホルダーの関係性を強化できます。企業には多くのステークホルダーが存在します。株主はもちろん、顧客や従業員も該当します。
また、日本でも480を超える企業・団体が、健全なグローバル社会を築くための国際的なイニシアティブ「国連グローバル・コンパクト(UNGC)」に署名(2022年5月時点)している今、大手企業のサプライチェーンに属する中小企業にとってもESGは他人ごとではありません。
近年SDGsに関する情報が豊富になり、消費者もサステナブルなサービスや商品に関心を持つようになりました。自社の取り組みを明確に伝えることで、消費者とのつながりが深く強固にすることもできるでしょう。
2、将来のリスクを低減
ESGに取り組むこと自体が企業の持続可能性を高めることも忘れてはなりません。
環境分野への取り組みに特化した資金を調達する際に発行される「グリーンボンド」も増えています。「グリーンボンド」は企業の環境分野への取り組みをアピールすることが出来るため、投資家だけでなく企業にとってもメリットがあります。
緊張状態が続く国際情勢や大規模な自然災害、パンデミックに加え、急速なテクノロジーの進化など、将来の予測が難しい時代における企業経営の難易度は非常に高いと言えるでしょう。
現代の企業には、そのような予測困難な中にあっても経営を持続する力が求められています。
つまり、CO2排出削減など既存事業の課題を改善していきながら、同時に持続可能な社会においてどのような価値提供をしていくのかという、新たな事業設計や目標設定が重要になるのです。
3、新たな投資機会の獲得
新たな投資機会の獲得は企業にとって大きなメリットになるでしょう。今もなおグローバルで拡大するESG投資は、日本においても目を見張るものがあります。
ESG投資に取り組まない場合には「ダイベストメント」されてしまう可能性があります。実際に、オランダの年金機構「ABP」では投資先からたばこと核兵器の製造メーカーを除外すると発表されています。
そのため、今後は段階的なダイベストメントが実施されるでしょう。ダイベストメントとは、投資している株式や債券、投資信託などから資金を引き揚げることを指します。
従来は赤字事業やノンコアな事業からの撤退の際に用いられていましたが、ESG投資の拡大を受けて、ESGに取り組まない企業への投資を辞めるケースも増えています。
投資家だけでなくESG経営に取り組む大手企業は、サプライチェーン全体にも同様の取り組みを求めるため、中小企業にとっても、新たな取引先の獲得ができるチャンスになります。
■まとめ
企業にとってはESGに取り組むメリットは投資家の評価が上がるだけではありません。ESGへの取り組みを課題として掲げ、積極的に対応・開示することで、長期的な収益力の向上、ブランド力や企業価値の向上にも繋がります。
ESGは事業活動や企業活動の中核に据えるべきものであり、企業全体、そして企業間連携をもって取り組むことが重要です。
ESG投資を行う機関投資家や株主が、環境問題や社会問題について積極的に経営者と議論・意見交換を行うことで、より良い企業運営を目指すことを指します。
欧米ではこれらを株主に代わって行うエンゲージメント代行業者も存在します。
ESGのG(企業統治)には、多様性の促進や人材育成、労働環境の改善を管理、監督する役割りが含まれます。
ESG投資や環境問題の改善に取り組むことは、投資家からの評価だけではなく、従業員のエンゲージメント向上にもつながるでしょう。新規採用にもよい影響を及ぼすと考えられます。
「真の自然保護活動家とは、この世界が父から与えられたのではなく、子から借り受けたものであることを知っている人のことである。」
<ジョン・ジェームズ・オーデュボン>
■最後に
アメリカの経営学者であるフィリップ・コトラーは、企業の社会貢献にマーケティングを応用する「コーズマーケティング」を提唱しています。
コーズ・リレーティッド・マーケティング「CRM:cause-related-marketing」は、自社商品・サービスの売上の一部を特定のNPO団体に寄付するキャンペーンなどを実施し、企業ブランドの向上を促進する手法のことを指します。
また、特定企業の商品の販売や広告を通じて、特定の団体や社会的課題に関する情報を発信し、行動変化を促す企画を通じて、環境問題への支援を行うこともあります。
コーズマーケティングという言葉を構成している英語の「Cause」には「社会的大義」の意味があります。また、Marketingは「売れる仕組みを考える活動」を指すビジネス用語です。
コーズマーケティングを実施する背景には、企業である以上、あくまでも利益と社会貢献を結び付けながら、販売促進、企業のブランドイメージの向上に繋げたいという企業側の意図があります。
日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」では、企業側が社会・環境貢献に寄与したいという目的がゆるぎない姿勢が大事だと考えています。
なぜなら、企業が積極的に社会課題の解決に関与し支援することは、社会の期待に応え、評判やイメージを高める効果が見込めるからです。
ESG投資に取り組むことは、企業ブランドを向上させ、売上やファンを増やすことに繋げることが期待できます。マーケティングという市場を動かす手法で、社会課題を解決に導くことができるのは、消費者との距離が近い企業ならではの方法になります。
戦略的なPRやブランディングに取り組みたいと考える企業様は、ESG投資の意義やコーズマーケティングに精通した顧問やプロ人材に相談しながら、自社や業界の特性を活かし、消費者が共感するストーリー性のある社会貢献活動を企画し、推進しましょう。
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