製造業の生産の現場をはじめ、スタートアップの新規事業立ち上げのプロセスでも、何らかの突発的なトラブルや深刻な問題に遭遇した際には、抜本的な解決に導くことを避けては通れないことがあります。
そのような際に、「なぜ」という質問を提示し5回繰り返すことで、問題の根本原因となる「ボトルネック」を突き止め、再発を防止するための手法として、「なぜなぜ分析」が効果的だとされています。
ただし具体的な事象を提示するなど、正しい方法で行わなくては効果がありません。
そこで今回、なぜなぜ分析とは何か、問題解決に繋がる根本原因分析が大事な訳について解説します。
■なぜなぜ分析とは?
「なぜなぜ分析」とは、問題の根本原因や、ボトルネックとなる要因に到達するために、何らかの問題が発生した理由を、「なぜ」として質問することで、真の原因を追究する手法になります。
「なぜ?」を5回繰り返すことで、問題の発見と改善の施策へと繋げる方法になるため、別名「なぜなぜ5回」とも呼ばれています。「なぜなぜ分析」は、英語で「Five whys」を意味します。
ある問題に対して対策を講じるために、その問題を引き起こした要因に対して『なぜ』を提示し、さらにその要因を引き起こした要因『なぜ』を繰り返すことにより、真の原因となる「ボトルネック」への対策の効果を検証するフレームワークになります。
「なぜ問題が起こったのか?」「それはなぜか?」と、何度も掘り下げることで、問題のカイゼンに繋がる「センターピン」を見つけ出し、効果的な解決策や再発防止策の策定へと導くことが可能になります。
■なぜなぜ分析とカイゼンの違い
なぜなぜ分析の手法は、製造過程で生まれてくる問題の真の原因を究明して再発防止を立てることを目的として、トヨタ自動車で生み出されました。
現在、トヨタ生産方式である「カイゼン」の普及とともに、「なぜなぜ分析」も他の業界や製造とは異なる様々な分野でも使われています。
カイゼンとは、主に製造業の現場で必要となる生産業務を見直して今よりも良くして行くための改善活動のことです。「トヨタ式カイゼン活動」は、世界的なメーカーやスタートアップの新規事業の改善でも採用された手法として有名です。
作業や業務の中にあるムダを排除し、より価値が高いものだけを取り組めるように、作業や業務のやり方を変える活動を行うことを指します。
カイゼンは元々、製造業の現場の取り組みを指していますが、今は製造業のほか、多様な業種・業界で活用されています。
近年では、物流、建設業、サービス業、小売業など、さまざまな領域にカイゼンに関する取り組みは広がっています。
■なぜなぜ分析とRCAの違い
製造現場の問題には、複数の要因があり、真の原因をタイムリーに現場で見つける必要があります。
「なぜなぜ分析」は、現場で解決するために考えられた「RCA」の一つになります。「RCA」とは、英語で「Root cause analysis」になります。日本語で「根本原因解析」を意味します。
RCAは、「原因分析評価」の一つで、元々は製造現場の事故などの根本原因を究明することを目的に作られた評価方法になります。
RCAの考え方や取り組みは航空分野、医療分野、工業分野など幅広い分野で用いられています。
「RCA」は、様々な分野で再現性があるフレームワークになりますが、業界や分野により製造や現場のオペレーションが異なるため、「根本原因解析」の手法をカスタマイズすると効果的です。
「根本原因解析」は、「なぜなぜ分析」と同じく、本来の生産現場の事故原因の分析や評価だけではありません。
例えば、インターネットビジネスの対策の分析やサイトの評価、コンバージョンの改善にも応用することも可能です。
■根本原因分析が大事な理由
問題の解決や分析には、根本原因分析を行い、原因を特定して解決方法を見出す必要があります。
「根本問題解析手法」「Root cause analysis 」は、問題や事象の根本的な原因を明らかとすることを狙いとしています。
「なぜなぜ分析」は、以下の「根本問題解析手法」の中のひとつになります。
【根本原因分析の比較】
・PM分析:慢性不良
・FMEA:潜在不良
・FTA:発生確率予測
・なぜなぜ分析:突発的不良
根本原因分析 「RCA」は、適切な解決策を把握するために問題の根本原因を見出すプロセスです。
根本原因分析では、その場で発生している症状にただ対処して抑え込むよりも、根本的な問題を系統的に予防して解決する方がはるかに効果的であるという前提に立ちます。
分析の真価はその分析で何を行うかで決まります。特に重要なのは、根本原因分析した上で、中核的なプロセスやシステムの問題を修正することになります。
「なぜなぜ分析」は、突発的不良の問題解決だけでなく、将来の問題を予防したり、画期的な業務プロセスの創出ためにも利用できます。
■なぜなぜ分析の3つの目的
1、根本原因を解析し改善するため
根本原因分析の最初の目的は、問題や出来事の根本原因の解明です。
「なぜなぜ分析」は、故障・不良を発生させている要因を思いつきで考えるのではなく「なぜ」「なぜ」と段階を追って規則的に漏れなく出すための分析方法です。
例えば、設備の接合部分のパイプが直ぐに壊れるという場合、壊れたパイプをただ単に交換するだけでは、一時的な応急処置にしかなりません。
・その部品がなぜ故障するのか、寿命なのか?
・過剰な振動や熱影響などのストレスを受けたのか?
・部品の構造に問題があり、早く故障するのか?
・もしそうであるならば、ストレスの発生源は何か?
など、原因と疑わしき要因を列挙して要因ごとに調査し、不具合や欠陥があれば、対策を施して問題を解決していきます。
この要因を列挙する過程、つまり「なぜなぜ」と5回考える過程が「なぜなぜ分析」の基本になります。
2、理想と現実のギャップを埋めるため
根本原因に潜む根本的なあらゆる問題を解決または相殺する方法、あるいはそこから学ぶ方法を完全に理解することです。
本来、あるべき姿と現状のギャップが問題になります。
あるべき姿へと改善するためには、なぜ、そのような問題が起きたのか把握することが欠かせません。
なぜなら、「ボトルネック」が、分からなければ、効果的な対策ができないからです。
ビジネスの問題が発生した要因を見付けるための分析が要因分析です。その根本的な要因分析を行う手法として、「なぜなぜ分析」があります。
「なぜなぜ分析」の目的は、「問題の真の原因を見つけ、その対策で再発を防止する」ことです。 ただし、通常、真の原因の追究は現場で即時に改善が対応できる範囲にします。
問題の内容やトラブル勃発時に解決の責任者が誰になるかにもよりますが、最初の段階では、システム、仕組み、ヒューマン的な範囲、会社レベルでの範囲まで拡大しません。基本的な取り組みは、あくまでも現場レベルの追究になります。
3、なぜなぜ分析で、3Mの削減するため
根本原因分析から学んだことを応用して、3Mに取り組むなど系統的に将来の問題を予防したり成功を再現したりすることです。
3Mとはムリ・ムダ・ムラのことを指します。まずはそれぞれの概念を説明します。
・ムリ:能力以上のことをして、負担が大きくなること。
・ムダ:付加価値を生まない作業や業務プロセスのこと。
・ムラ:仕事の品質が一定ではないという状態のこと。
例えば、仕事量や材料・完成品の品質、作業手順などが一定でないことを指します。
このような、日常業務にどうしても生じやすい「ムリ・ムダ・ムラ」を削減するために、「なぜなぜ分析」を行った上で、「カイゼン」のプロセスに取り組む活動は、生産性の向上に効果的な手法だと言えます。
「ムリ・ムダ・ムラ」を無くしていくことは業務負担の削減、スピードアップ、コストの低減、品質の安定・向上に大きな効果を発揮することができます。
■なぜなぜ分析の特徴
根本原因分析を効果的に行うにはいくつかの中心的な指針があります。
こうした指針に従うと分析の質が高まるだけではなく、アナリストは担当者やクライアントから信頼され賛同を得られるようにもなるでしょう。
・問題のみではなく、根本原因の修正と対処に注力する。
・問題への対処による短期的な解決の重要性を無視しない。
・根本原因は複数ある可能性があり、その可能性は低くないことを認識する。
・問題が起きた際に誰が1人に対して責任があるか探すことはしない。
・なぜ、どのように起こったかを解明することに注力する。
・系統的に考え、根本原因の主張を支持する明確な因果関係の証拠を見出す。
・是正するための行動方針の判断材料になるように、十分な情報を提供する。
・将来的に根本原因を予防 (または再現) できるようにする方法を検討する。
上記の指針が示しているように、根深い問題や原因を分析する場合は、広範で総合的なアプローチを取ることが重要です。
「なぜなぜ分析」では、根本原因の発見に加えて、行動や意思決定につながる背景と情報の提供にも努めなければなりません。
優れた「なぜなぜ分析」は、問題のカイゼンに繋がる実用的な分析になると言えます。
■効果的な根本原因分析を行う際の3つのポイント
情報を明確化して答えに近づくための質問をしましょう。
1、チームで協力して新たな視点を得る
「なぜなぜ分析」を推進する際には、1 人でも大きなチームでも構いませんが、他者の目があれば、答えを出すまでの時間が短くなり先入観に対するチェックも行えます。
他者から意見を得ると別の視点も得られ、前提を疑うことができるようになります。
「なぜなぜ分析」は一度ビジネスに適用して終わり、ではありません。適用後の結果をチームで取得・分析し、状況の変化に沿った、より効果的な施策を生み出して行くことで、分析の効果を最大化していくことができるでしょう。
2、将来の根本原因分析に備える。
根本原因分析を行う場合、そのプロセス自体も意識することが大切です。「なぜなぜ分析」を行う際には、しっかりとメモを取り、記録として残すことで、分析のプロセス自体に関する質問を投げかけましょう。
満足する分析結果が得られたら、その結果をもとにビジネスに活かしていくのが「分析結果の実践」です。分析が上手く行っても、実際のビジネスに落とし込めなければ意味がありません。
例えば、新規事業のビジネスモデルの分析やサイトの改善の場合、ビジネスニーズと環境に最も向いているテクニックや手法があるかどうかを検討することも大切です。
3、成功の根本原因分析も忘れずに行う。
根本原因分析は、何かがうまくいかなかった箇所を把握するのに良いツールです。通常は問題の診断手段として使いますが、成功の根本原因を見出す場合にも同様に役立ちます。
成功や期待以上の成果、早期の達成の原因を探る場合は、何かが上手くいっている理由の根本原因である「KFS」を明らかにすると良いでしょう。
KFSとは、「Key Factor for Success」を略した言葉です。日本語に訳した場合、「重要成功要因」となり、成功へと導くための鍵や要素のことを指します。
現在では経営だけに限定されることなく、ビジネスシーンにおいて「事業を成功に導くための要因」という意味合いで使われています。
KFS分析を行うと、鍵になる要因を優先し先手を打って確保することができ、ある事業分野の成功を他の分野の成功に繋げる再現性のあるノウハウとして確立できる可能性があります。
■まとめ
「なぜなぜ分析」は、発生した問題事象の根本原因を探る分析手法として知られています。
何らかの問題に対してなぜそれが起きたのか原因を見極め、さらにその原因に対して「なぜ?」を問うことを繰り返し、直接原因だけではなく、その背後にある根本原因を抽出します。
一般的に、5回「なぜ」を繰り返すと、根本的な原因にたどり着くことができると言われれいます。
可能性のあるすべての原因を掘り下げて吟味すればするほど、根本原因を見出せる可能性も高くなります。単なる別の症状ではなく、問題の根本原因を見つけられたと思っても、さらに質問を重ねることができます。
例えば、以下のような質問などです。
・他でもないこれこそが根本原因だと信じられる理由は何か?
・この根本原因を修正して問題の再発を防ぐにはどうしたら良いか?
理解に近づくために、「なぜ」、「どのように」、「ここでは何を意味しているのか」などのシンプルな質問をしましょう。
「命令を質問の形に変えるだけで、気持ちよく人に受け入れて貰えるだけでなく、質問を受けた人の創造性も発揮される。」
<トーマス・エジソン>
■最後に
スタートアップの起業家として新規事業を立ち上げ、短期間で最大の結果を出したいなら、「なぜなぜ分析」を駆使し、ビジネス全体に対して最もインパクトのある「センターピン」を狙い撃ちすることです。
なぜなら、多くの価値を生み出している、上位20%の行動や顧客、商品などを正確に見極め、そのボトルネックの部分を重点的に強化していけば、劇的な「パフォーマンス」の向上に繋がるからです。
どんなことであれ、物事の「本質」を見極め、「センターピン」を狙って倒すことができれば、ボーリングで全てのピンが一気に倒れるかのように、全体に対してインパクトを与える「結果」を出すことができるのです。
日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」では、中小企業ベンチャー企業の新規事業の立ち上げ時に、「なぜなぜ分析」を含めた「根本原因分析」を共同で行うことで、新規事業のセンターピンを見極め、狙い撃ちする実行支援を推進しています。
「KENJINS」では、新規事業を立ち上げ時に不可欠な「トラクション」を獲得するための豊富な「知見」を持ち、「壁打ち相手」となる顧問やプロ人材が5000人以上います。
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