無形商材で成果を出すエンタープライズ営業の進め方

投稿日: 作成者: KENJINS運営会社社長 カテゴリー: 専門家インタビュー   パーマリンク

無形商材を扱うエンタープライズ営業の基本と実践ポイント

「導入したのに使われない」「提案後に社内検討で止まる」といった課題は、目に見える商品を扱わない営業で起こりがちです。価値が形として存在しないため、顧客自身が導入後の成果を具体的に想像できなければ、決裁まで進みにくくなります。

無形商材の提案では、機能や実績を並べるのではなく、顧客が抱える経営課題と導入効果を結び付けることが出発点です。現状の業務、損失、達成したい指標を丁寧に確認し、「導入しない場合のリスク」と「導入後に得られる変化」を数値や事例で示します。提案資料も担当者向けの説明にとどめず、現場、部門責任者、決裁者それぞれの関心に合わせて構成すべきです。

エンタープライズ営業では、商談相手だけでなく、社内の複数部署や意思決定者を早い段階で把握します。課題の整理、関係者の合意形成、導入計画、効果測定までを一つの道筋として提示できれば、価格競争に陥らず信頼を獲得できます。初回商談後は議事録と次の行動を明確に共有し、検討が止まる前に継続的な接点を設けることが成果への近道です。

目次

  1. 無形商材営業とエンタープライズ営業の違いをまず整理する
  2. 無形商材を大手企業に売る際の購買構造を理解する
  3. 無形商材のエンタープライズ営業で成果を出す5つの力
  4. 無形商材のエンタープライズ営業プロセスを5段階で解説
  5. 無形商材のエンタープライズ営業で陥りやすい失敗
  6. まとめ

無形商材営業とエンタープライズ営業の違いをまず整理する

契約までの道筋が似て見えても、売る対象と意思決定の進み方には明確な差があります。両者を同じ型で捉えると、提案の焦点がぼやけたり、社内調整に必要な情報が不足したりするため、最初に役割を切り分けておくことが欠かせません。

項目無形商材営業エンタープライズ営業
主な難しさ価値を形で示しにくいことです関係者と承認プロセスが多いことです
提案の焦点導入効果や利用後の変化です経営課題との整合性と全社的な効果です
営業活動課題を言語化し、期待成果を具体化します部署ごとの利害を整理し、合意形成を進めます

無形商材では、サービスの機能を説明するだけでは価値が伝わりません。現状の損失、改善後の指標、導入に必要な条件を示し、顧客が利用後の姿を想像できる状態へ導きます。対してエンタープライズ営業は、担当者との関係構築だけで完結しません。現場責任者、情報システム部門、購買部門、経営層など、関係者ごとの関心を把握する必要があります。

両者が重なる場合は、優先順位を分けて考えるべきです。まず無形商材として成果を数値化し、そのうえで企業全体の承認手順に合わせて提案を組み立てます。この順番を守ることで、魅力の説明と組織内の合意形成を一つの計画に落とし込めます。

無形商材営業が難しいと言われる理由

商談の場で資料を見せても、顧客の表情が変わらないことがあります。形のある商品なら品質や大きさを確認できますが、サービスやコンサルティングのような無形商材は、購入前に価値を直接確かめられません。導入後の成果を想像できる材料が不足すると、担当者は必要性を感じても社内稟議へ進めにくくなります。

難しさの一つは、顧客自身が課題を明確に言語化できていない点です。「業務を効率化したい」という要望だけでは、何をどれだけ改善するのか判断できません。営業担当者には、現場の作業時間、発生している損失、目標との差を質問で掘り下げ、解決すべき問題を具体的な指標へ置き換える力が求められます。

成果が導入環境や利用者の行動に左右されることも、無形商材営業の壁になります。同じサービスでも、運用体制や社内の協力状況によって結果が変わるため、機能を説明するだけでは不十分です。導入手順、支援範囲、成果を測る時期まで提示し、購入後の不安を減らす必要があります。

筆者の経験では、売り込みを急ぐほど難易度は上がります。初回の接点では商品の説明より課題の整理を優先し、顧客が自社の問題と導入効果を結び付けられる状態をつくることが、受注への最も確実な近道です。

エンタープライズ営業で求められる長期視点と組織攻略

一度の面談で受注を決めるのではなく、半年後、1年後の事業成果から逆算して動く姿勢が、大企業との取引では欠かせません。検討期間が長い案件ほど、短期的な商談数や目先の反応だけで成否を判断すると、信頼を積み上げる機会を逃してしまいます。

エンタープライズ営業では、最初に顧客企業の経営方針、事業計画、組織構造を調べます。そのうえで、担当者が抱える業務上の課題を起点にしながら、部門責任者には投資効果、経営層には経営目標への貢献、導入部門には運用負担の軽減を示します。同じ提案でも、相手の立場によって響く価値は異なるため、説明内容を一律にしてはいけません。

攻略すべき相手を単純に決裁者だけと考えるのも危険です。現場の推進者、導入に関わる管理部門、予算を管理する部門などを把握し、それぞれの懸念や期待を整理します。関係者を図にまとめ、誰が賛成し、誰が慎重なのかを確認すれば、次に働きかける相手が明確になります。

長期案件では、売り込まない接点にも価値があります。業界情報の共有、課題の整理、検討状況の確認を定期的に行い、顧客の計画変更にも対応してください。提案を急ぐより、社内で説明しやすい材料を継続して渡すほうが、最終的な合意形成を進めやすくなります。

無形商材を大手企業に売る際の購買構造を理解する

「担当者が前向きだから、受注は近い」と判断していないでしょうか。大手企業の購買では、現場担当者の納得だけで契約が成立するとは限りません。導入効果を確認する部門、費用を管理する部門、契約条件を審査する部門など、複数の関係者が異なる基準で提案を見ています。

無形商材を大手企業に売る場合は、誰が何を確認し、どの段階で承認するのかを早期に把握します。次のように購買に関わる役割を整理すると、提案すべき情報が明確になります。

関係者主な関心提示する情報
現場担当者業務が改善されるか利用方法と具体的な効果です
部門責任者部門目標に貢献するか成果指標と導入計画です
経営層経営課題を解決できるか投資対効果と中長期の展望です
購買・法務部門契約や費用に問題がないか料金、責任範囲、契約条件です

関係者ごとに説明を分けるだけでは足りません。誰が社内で推進し、誰が慎重な判断をするのかを見極め、賛成者には社内説明用の資料を、懸念を持つ部門にはリスク対策を渡す必要があります。

購買構造を把握する最も効果的な方法は、承認手順を質問で確認することです。決裁者、予算の出所、比較対象、導入条件を商談中に整理してください。顧客の組織内で提案がどう動くかまで設計できれば、価格交渉だけに終始せず、合意形成を主導できます。

現場担当者と決裁者で重視する価値は異なる

同じ提案資料を全員に見せれば、社内の合意が進むとは限りません。立場が違えば、導入を判断する材料も評価する基準も変わるためです。無形商材の営業では、相手の役割に応じて伝える価値を組み替える必要があります。

相手重視する価値伝えるべき内容
現場担当者使いやすさと業務負担の軽減です操作方法、導入手順、日常業務の改善効果です
部門責任者目標達成と管理のしやすさです成果指標、進行計画、支援体制です
決裁者投資効果と経営への貢献です費用対効果、リスク、将来的な展開です

筆者が以前支援した案件では、現場担当者に機能と操作性を詳しく説明したものの、決裁者から「経営課題との関係が見えない」と指摘され、提案が一度止まりました。そこで、現場向けには作業時間の削減、決裁者向けには年間コストと事業成長への影響を示す資料へ分けたところ、社内説明が進み、翌月に承認を得られました。

この経験からも、相手ごとの関心を一つの提案に詰め込むより、役割別の資料を用意するほうが効果的です。現場の納得を決裁者の判断材料へ変換し、双方が自分の立場で導入意義を説明できる状態をつくってください。

稟議、比較検討、導入後運用まで見据えた提案が必要

提案が採用された瞬間は、取引の終点ではなく運用の出発点です。大手企業では、担当者が内容に納得しても、社内で承認を得て、他社との比較を経て、導入後の責任分担まで確認できなければ契約に進みません。営業担当者は受注だけを目標にせず、顧客が社内で説明し、安心して使い始められる材料を先に整える必要があります。

段階顧客が確認すること提案に含める内容
社内承認導入する理由と予算の妥当性です課題、期待効果、費用、承認者向けの要約です
比較検討他社との違いと選定基準です比較項目、実績、対応範囲、選定理由です
導入準備開始時期と社内の役割です工程表、担当者、必要な環境、支援内容です
運用開始後成果が出る仕組みと相談先です活用支援、評価指標、定例会、改善手順です

稟議資料には、機能の説明よりも「なぜ今導入するのか」「導入しない場合に何が起きるのか」を記載すると、決裁者が判断しやすくなります。比較段階では、価格だけで競争せず、支援体制や成果が出るまでの条件を明確に示してください。

導入後の運用設計まで示せる提案は、無形商材の不安を具体的に減らします。開始後三十日、三か月、半年など評価時期を設定し、誰が何を確認するのか決めておくことが効果的です。受注後の成功条件まで共有できれば、顧客との信頼関係は契約後も続きます。

無形商材のエンタープライズ営業で成果を出す5つの力

受注率を高めるには、商品知識だけを増やしても足りません。顧客の課題を見つけ、社内の意思決定を進め、導入後の成果まで支える一連の力が求められます。無形商材を扱うエンタープライズ営業では、次の五つを日々の活動に組み込むことが有効です。

実践する内容
課題発見力表面的な要望から経営上の原因を掘り下げます
価値設計力導入効果を指標や金額に置き換えます
関係構築力現場から決裁者まで接点を広げます
合意形成力関係者ごとの懸念を整理し、社内説明を支援します
実行支援力導入計画と運用方法を示し、成果を確認します

課題発見力がなければ、提案は機能紹介に終わります。価値設計力によって「導入すれば何が変わるのか」を明確にし、関係構築力で情報を集める相手を増やしてください。その後、合意形成力を使って稟議や比較検討の障壁を取り除きます。

五つの力は、別々に伸ばすより一つの営業プロセスで連動させるべきです。初回面談では課題を確認し、提案時には成果指標を示し、契約前には関係者の懸念を解消します。受注後は実行支援力を発揮し、成果を次の提案へつなげます。まずは現在の案件を振り返り、どの力が不足しているかを確認すると、改善すべき行動が具体的になります。

課題仮説を立てる情報収集力

ニュース記事を読んだだけで、顧客の本当の課題が見えるわけではありません。公開されている経営計画や決算資料、業界動向、採用情報などを組み合わせ、企業がどの領域に投資し、どの業務に負荷を感じているのかを推測する必要があります。無形商材の提案では、この下調べの質が商談の深さを左右します。

情報収集では、事実と推測を分けて記録してください。例えば「新規拠点を開設した」は事実ですが、「管理業務が増えている」は仮説です。仮説を持って商談に臨むと、相手に「現在、その業務で時間がかかっている部分はありますか」「計画を進めるうえで障壁は何ですか」と具体的に質問できます。答えを聞く前から断定しない姿勢も欠かせません。

確認すべき情報は、企業の事業方針だけではありません。顧客が所属する部門の目標、担当者の役割、既存の取り組み、導入に関わる部署まで調べると、課題の背景が立体的に見えてきます。検索結果を並べるだけでは不十分です。情報同士のつながりを考え、提案につながる問いへ変換することが営業担当者の役割です。

仮説は正解を当てるためではなく、相手から本音を引き出すために使います。商談後は得られた事実で仮説を修正し、次回の質問と提案内容を更新してください。この検証を繰り返すほど、表面的な要望ではなく、顧客が優先して解決したい課題へ近づけます。

関係者を巻き込む調整力と合意形成力

会議に出席する人数が増えるほど、提案の承認が早まるとは限りません。関係者が増えれば、それぞれの立場から異なる懸念や要求が出るため、営業担当者には意見を整理し、合意できる着地点へ導く役割が求められます。エンタープライズ営業では、担当者との信頼関係だけでなく、組織全体を動かす準備が欠かせません。

まず、顧客企業の関係者を一覧にし、現場の利用者、推進責任者、情報システム部門、購買部門、決裁者などの役割を確認します。次に、各人が得たい成果と避けたいリスクを整理してください。現場は使いやすさ、管理部門は安全性、決裁者は投資効果を重視するため、同じ説明を繰り返しても納得は得られません。立場ごとに必要な資料や説明を用意することが、調整を進める近道です。

もちろん、関係者を増やすほど商談が複雑になり、意思決定が遅れるという意見もあります。しかし、窓口の担当者だけで話を進めると、後半で反対意見が出て計画が振り出しに戻る危険があります。早い段階で関係者を把握し、無理のない範囲で説明の場を設けるほうが、結果的に停滞を防げます。

合意形成では、全員を同じ意見に変える必要はありません。反対理由を明らかにし、受け入れられる対策と判断期限を合意できれば、次の段階へ進めます。議事録には決定事項、未解決の論点、担当者、期限を記録し、認識のずれを残さないようにしてください。

価値を言語化する提案力

「便利そうですね」という反応だけでは、社内決裁や契約にはつながりません。顧客が本当に知りたいのは、サービスを導入した結果として、どの業務が変わり、どの指標が改善し、投資に見合う成果を得られるのかという点です。無形商材の営業担当者には、見えない価値を相手が判断できる言葉へ変換する力が求められます。

まず、顧客の発言をそのまま提案書に載せず、背景にある損失や目標を整理してください。「作業を効率化したい」という要望であれば、月間の作業時間、担当者数、処理の遅延、改善後に生まれる時間を確認します。数値が得られない場合でも、現場の具体的な行動や困っている場面を記録すれば、導入効果を説明する材料になります。

提案では、機能、変化、成果を一続きに示すと伝わりやすくなります。例えば、作業を自動化する機能によって入力時間を減らし、その結果として担当者が顧客対応に使える時間を増やすという流れです。機能の説明で止めず、顧客の経営目標や部門の評価指標に結び付けることが欠かせません。

価値は営業担当者が一方的に定義するものではなく、顧客との対話で確かめていくものです。提案後は「この成果を社内で説明できますか」「不足している根拠は何ですか」と確認し、表現を修正してください。顧客自身が導入理由を語れる状態まで整えることが、提案を受注へ変える最も効果的な方法です。

無形商材のエンタープライズ営業プロセスを5段階で解説

初回の接点から契約、導入後の成果確認までを一つの流れとして設計すると、長期化しやすい大手企業との商談でも次の行動が見えやすくなります。無形商材は価値を事前に確かめにくいため、各段階で顧客の不安を減らし、社内で判断できる材料を渡すことが欠かせません。

段階営業の目的主な実践内容
第一段階接点をつくります企業情報を調べ、相手に関係する仮説を示します
第二段階課題を明確にします現状、損失、目標、導入条件を質問します
第三段階価値を具体化します機能を成果指標や費用対効果に結び付けます
第四段階合意形成を進めます関係者ごとの懸念を整理し、稟議や比較検討を支援します
第五段階成果を定着させます導入計画、支援体制、評価時期を共有します

第一段階で商品の説明を急ぐと、顧客に必要性が伝わりません。公開情報と商談で得た事実を分けて整理し、相手の経営課題に関係する問いを用意してください。課題が明確になったら、導入後の変化を数値や業務の場面で示します。

第五段階まで見据えることが、無形商材営業の信頼を高めます。契約前に導入後の役割分担や成果確認の方法を決めておけば、顧客は購入後の不安を抑えられます。各段階の終了条件と次回の行動を記録し、案件が止まる前に関係者へ働きかけてください。

ターゲット選定とアカウントプランニング

限られた営業人員で大手企業を開拓するなら、知名度だけを基準に訪問先を決めてはいけません。自社の無形商材が解決できる課題を持ち、導入効果を出せる条件がそろった企業を選ぶことが、成果につながる案件を増やします。

候補企業を選ぶ際は、事業規模だけでなく、経営方針、成長投資の有無、組織上の課題、既存の取り組みを確認してください。公開情報を調べたうえで、導入の必要性、決裁に至る可能性、継続利用の見込みを評価すると、優先順位を付けやすくなります。

確認項目見るポイント営業活動への反映
課題との適合度自社サービスで解決できる問題があるか提案の切り口を定めます
導入の緊急度計画や制度変更で対応期限があるか接触時期を決めます
組織と関係者推進者、利用部門、決裁者が誰か関係構築の順番を設計します
事業の継続性導入後も活用が広がる余地があるか中長期の支援案を用意します

候補を絞った後は、企業ごとに一枚の計画書を作ります。経営課題、想定される決裁手順、関係者の関心、初回に投げかける質問、次の接点まで記録してください。アカウントプランニングは資料作成が目的ではなく、顧客企業の中で誰に、いつ、何を伝えるかを決める活動です。商談の進展に合わせて仮説を更新し、優先順位と行動を毎週見直すことで、場当たり的な営業を防げます。

初回接点からヒアリング設計まで

最初の数分で商品の説明を始めると、顧客が抱える背景を聞き逃してしまいます。初回の接点では、相手の企業情報や役割を踏まえた仮説を準備し、会話の目的を「売ること」ではなく「課題を確かめること」に置くべきです。公開情報から読み取れる事実と、確認したい推測を分けておくと、質問も具体的になります。

ヒアリングでは、現状、理想の状態、発生している損失、改善の期限、導入に関わる人を順番に確認します。「何に困っていますか」と聞くだけでは答えが抽象的になりやすいため、「その作業に月何時間かかりますか」「改善できない場合、どの目標に影響しますか」と事実を掘り下げる質問を用意してください。相手の言葉を要約し、認識が合っているか確かめることも有効です。

筆者が支援したある企業では、初回商談でサービス説明を控え、業務の流れと社内の承認手順を聞くことに集中しました。当初は単なる作業時間の削減が課題だと思われましたが、実際には月末の報告遅延が経営会議に影響していると判明しました。提案の切り口を変えた結果、決裁者との面談につながりました。

初回面談の成果は、次回提案に使える情報が残っているかで判断します。商談後は事実、仮説、未確認事項、次に聞く質問を記録し、相手の回答に応じて設計を更新してください。丁寧な準備が、無形商材の価値を伝える土台になります。

提案、稟議支援、受注後の深耕営業まで

契約書に署名された時点で、営業活動を終えたと考えるのは早すぎます。無形商材は導入後の使われ方によって成果が変わるため、契約前から利用開始までの流れを設計し、顧客が社内で説明しやすい状態をつくることが継続取引につながります。

段階営業担当者の役割確認する内容
提案課題と導入効果を結び付けます成果指標、費用、導入条件です
稟議支援社内説明に必要な材料を渡します投資理由、比較結果、リスク対策です
契約・導入準備関係者と開始までの工程を決めます役割、期限、支援範囲です
利用・定着活用状況を確認して改善します利用率、成果、現場の課題です
深耕営業新たな課題と展開先を探します他部署への活用、追加支援の可能性です

提案段階では、機能の一覧ではなく、現状の損失と導入後の変化を示してください。稟議支援では、決裁者が短時間で判断できる要約資料に加え、購買や法務が確認する契約条件も整理します。導入前に担当者と工程を共有すれば、開始直後の混乱を抑えられます。

受注後の深耕営業は、追加商品を売り込む活動ではありません。利用結果を確認し、当初の課題が解決されたか、別の部門にも同じ問題がないかを聞き取ることから始まります。成果を顧客と共有したうえで次の課題を提案すれば、単発の契約ではなく、長期的な関係へ発展させられます。

無形商材のエンタープライズ営業で陥りやすい失敗

案件が長期間動かないとき、顧客の関心が低いと決めつけるのは危険です。無形商材のエンタープライズ営業では、営業側の進め方に原因があり、顧客が判断できない状態をつくっている場合があります。失敗のパターンを先に知れば、商談の停滞を早い段階で修正できます。

失敗例起こる問題見直す行動
機能説明を急ぎます顧客の課題と提案が結び付きません現状と目標を先に質問します
担当者だけを追います決裁段階で反対意見が出ます関係者と承認手順を確認します
価格だけで比較されます価値ではなく費用で判断されます成果指標と導入後の変化を示します
受注後の支援を曖昧にします利用が定着せず、継続につながりません役割、工程、評価時期を決めます

実際にあるクライアントでは、担当者から高い評価を得ていたにもかかわらず、稟議に入った途端に案件が止まりました。確認すると、決裁者向けの投資効果と、情報管理部門が求める安全対策を資料に含めていませんでした。関係者別に説明資料を作り直した結果、社内審査が再開されました。

失敗を防ぐには、商談の進捗だけでなく、顧客が次に何を判断するのかを確認してください。各面談後に未解決の懸念、必要な資料、関係者、次回の期限を記録し、案件を担当者の感覚だけで管理しないことが最も効果的です。

機能説明に偏り、経営課題へ接続できない

新しい機能を順番に紹介しても、顧客の経営会議で採用理由として扱われるとは限りません。機能は手段にすぎず、経営層が判断するのは、事業のどの課題を解決し、どの成果を生み、投資に見合う効果を得られるかという点です。説明が製品の範囲で止まると、価格や既存サービスとの違いだけで比較されます。

まず顧客の経営方針や中期計画を確認し、提案するサービスがどの目標に関係するのかを整理してください。例えば、分析機能を説明する場合は、「データを集められます」で終わらせず、「判断に必要な情報を早く確認できるため、報告の遅れを減らし、出店計画の検討を前倒しできます」と変換します。機能、業務上の変化、経営成果を一つの流れで示すことが必要です。

数値を使える場合は、削減できる時間や費用、改善する期間、成果を測る指標を提示します。正確な数値がまだ出せないときは、導入後に何を測定し、いつ効果を確認するのかを合意してください。経営課題へ接続するには、顧客の言葉を引用しながら、現状と目標の差を可視化することが最も効果的です。

提案資料は機能一覧ではなく、経営課題を解決する筋道として構成すべきです。商談後に「このサービスで経営上の何が変わるのか」を顧客へ問い直し、説明が伝わるまで表現を修正してください。担当者が社内でその価値を説明できれば、決裁者との会話も進めやすくなります。

キーパーソン不足で案件が停滞する

担当者との会話が順調でも、社内の承認が進まなければ商談は止まります。大手企業では、利用部門の担当者だけで予算や契約を決められないため、決裁者や情報システム部門、購買部門との接点がない状態は大きなリスクです。窓口の相手が社内で提案を進める役割を担えるか、早い段階で見極めてください。

これは料理でいえば、調理を任せる人と味を最終確認する人が決まっていないまま、材料だけをそろえるようなものです。どれほど優れた食材を用意しても、誰が調理し、誰が提供を承認するのか不明確なら、完成まで進みません。営業でも同じように、関係者の役割と意思決定の流れを把握する必要があります。

対策として、商談中に「導入を検討する際、ほかにどの部門が関わりますか」「最終的な承認者はどなたですか」と質問します。相手が答えにくそうな場合は、導入準備や運用確認を理由に関係者の同席を提案してください。決裁者へ直接つなぐことだけを急がず、社内で推進してくれる協力者を増やすことが有効です。

キーパーソンは肩書だけで判断せず、社内で影響力を持つ人として探すべきです。賛成者、慎重な部門、予算を管理する担当者を図に整理し、それぞれに必要な情報を渡します。案件の停滞を感じたら、顧客の関心ではなく、未接触の関係者と未解決の懸念を確認してください。

まとめ

成果につながる営業活動は、巧みな話術だけで決まりません。顧客の経営課題を調べ、現場の悩みを整理し、関係者ごとに価値を伝え、社内承認から導入後の運用まで支える一連の設計が必要です。短期的な受注だけを追うと、契約前の不安や利用開始後の課題を見落としてしまいます。

無形商材を扱う場合は、目に見えない価値を具体的な成果へ置き換えることが出発点です。業務時間、費用、売上、判断の速さなど、顧客が確認できる指標を設定し、導入しない場合との違いを示してください。機能説明を重ねるのではなく、顧客の目標にどう貢献するかを言葉にすることが受注への近道です。

エンタープライズ営業では、担当者との関係だけで案件を進めてはいけません。現場の利用者、部門責任者、情報システム部門、購買部門、決裁者を把握し、それぞれの懸念と判断基準に合わせて情報を届けます。稟議資料、比較検討の根拠、導入工程、成果確認の方法まで用意すれば、顧客は社内で提案を進めやすくなります。

営業活動の質は、顧客が自社の言葉で導入理由を説明できるかによって決まります。商談後は未解決の論点と次の行動を記録し、仮説を更新してください。受注後も利用状況と成果を確認し、新たな課題を見つけられれば、単発の契約を継続的な信頼関係へ発展させられます。

本田季伸のプロフィール

Avatar photo 連続起業家/著者/人脈コネクター/「顧問のチカラ」アンバサダー/プライドワークス株式会社 代表取締役社長。 2013年に日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」を開設。プラットフォームを武器に顧問紹介業界で横行している顧問料のピンハネの撲滅を推進。「顧問報酬100%」「顧問料の中間マージン無し」をスローガンに、顧問紹介業界に創造的破壊を起こし、「人数無制限型」や「成果報酬型」で、「プロ顧問」紹介サービスを提供。特に「営業顧問」の太い人脈を借りた大手企業の役員クラスとの「トップダウン営業」に定評がある。

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