ジョブディスクリプションとは?即戦力の募集と評価にも有効な訳

投稿日: 作成者: KENJINS運営会社社長 カテゴリー: 専門家インタビュー   パーマリンク

世界的に成果主義へのシフトが進む近年、「ジョブディスクリプション」が注目されています。成果主義とは、従業員の仕事の成果や成績、実力などに応じて待遇を決定する人事制度です。

日本企業で用いられることはあまりありませんでしたが、ジョブ型雇用や外国人雇用で必要となることから、近年、重要視されるようになりました。

ジョブ型雇用は、明確なジョブディスクリプション「職務記述書」を元にし、特定分野のプロ人材であるスぺシャリストが雇用される画期的なシステムでだと言えます。

そこで今回、ジョブディスクリプションとは何か、即戦力の募集と評価にも有効な訳について解説します。

「仕事上の個性は、仕事に就くはるか前に形成されている。仕事のやり方は強みは弱みと同じように与件である。修正できても変更はできない。ちょうど強みを発揮できる仕事で成果を上げるように、人は得意なやり方で仕事の成果を上げる。」

<ピーター・ドラッカー>

■ジョブディスクリプションとは?
ジョブディスクリプション「job description」とは、従業員の職務内容を明確にし、特定の職務の内容を詳しく記述した文書のことを指します。

日本語では「職務記述書」と訳されています。担当する業務内容や範囲、難易度、必要なスキルなどがまとめられた書類で、欧米では求職時や人事評価の際によく使用されています。

これまで、日本の大手企業の場合、総合職で採用されるケースが多かったため、「ジョブディスクリプション」に相当するものがない場合がありませんでした。

一方で欧米の企業では、ジョブディスクリプション日々の業務を推進する際はだけでなく、新卒採用を行う場合にも必要不可欠な極めて重要なものです。

なぜなら、欧米では、ビジネスマン全ての職が専門職であり、総合職という概念や雇用形態が存在してないからです。

■日本とアメリカの雇用の違いとジョブディスクリプション

1、日本の新卒は、総合職で採用されるが一般的
総合職とは、社内の中核業務を担うポジションです。業務内容は多岐に渡り、総合職で入社した社員は将来の管理職、幹部候補として会社から期待を寄せられます。

日本の大手企業の総合職で採用された場合、様々な部署、仕事を経験しながら管理職になることを期待されているため、「ジョブディスクリプション」という概念がありません。

一つの業務を長く担当することもありますが、基本的にはジョブローテーションで異動があり、企業の展開する地域全域での転勤の可能性があります。

入社後は、人事部の判断により、適性に応じて配属や働く場所が決まりますが、数年で別部門に異動する可能性もあります。

転勤のメリットとしては、以下になります。

・会社組織の活性化
・ゼネラリスト育成の機会創出
・適材適所の人材配置
・これまでとは異なる勤務地で働くため、新たな学びを得られる
・転勤先によっては、全国各地を知るよい機会になる

日本の企業の場合、就業規則の中で転勤についての記載がある場合、転勤命令の拒否は難しいです。

2、欧米では新卒採用でも、ジョブディスクリプションが基本
アメリカと日本の企業では、雇用に対する考え方が異なり、終身雇用が前提とされていません。ジョブディスクリプションが基本的な採用採用基準になります。

日本で大手企業に就職する場合には、総合職として採用され、入社後に長い研修を受けたり、数年間は見習いのような期間で、入社後の本人の適性を見てから人事部により、正式に配属が決まるケースは殆どありません。

欧米企業では、もちろん転勤も自分で希望しない限りはありません。転勤は、単に勤務地が変わるだけでなく生活環境にも大きな影響を与えるため、時に退職に繋がるケースがあるからです。

新卒の学生を総合職として採用するシステムは、日本特有の仕組みです。

自分の将来を左右する適性を第三者によって判断され、自分の配属が決定されるということは、個人を重視するアメリカでは、理解し難いと考えられています。

■欧米での就職活動ではジョブディスクリプションが必須
アメリカの雇用には、そもそも総合職での採用といった概念がなく、どんな職種であれ、就業する時点でその役職に対する一定の専門的な経験や知識が求められます。

そのため、日本の大学生とは大きく異なり、大学時代にどの分野でプロ人材になるかを選び、専門スキルを身に付けるために、必要であれば自己投資を行い、プログラミングスクールに通ったり、資格取得のスクールで学ぶ学生が多いです。

欧米では、就職活動の前に自分が希望する職種でビジネスマンとしての経験を積むことが必須要件になるため、特定の企業で「インターンシップ」をするのが一般的です。

新卒であっても企業で経験を積んだ上で、希望する企業が募集しているポジションに対して履歴書を送ります。それぞれのポジションには、その役職に求められる経験やスキルが「ジョブディスクリプション」「Job description」として、求められるスキルが明記されています。

ですので、新卒採用と中途採用の区別もありません。なぜなら、年齢などに関係なく、仕事の経験によってポジションが変わるからです。公平を期するために、採用の際に年齢を聞くことは法律でも禁止されています。

アメリカでは極端な話、いくら優秀な大学を出ていても、大学での専攻が全く違ったり、その職に必要な経験が無ければ、そのポジションに就くということは通常はあり得ないくらい、人材の採用基準が高いです。

例えば、クリエイティブ職としてWEBデザイナーを希望している際には、ポートフォリオとなる実績がなければ、まず採用されないという、非常に実践主義的な考え方です。

■ポートフォリオとは?
ポートフォリオとは、主にクリエイターが実績をアピールするための作品集という意味で使われるケースが多いです。

就職活動に置き換えると、Webデザイナーの場合、UIに強みを持つWeb制作会社の採用面接に行く時は、自分のUIスキルがアピールしやすい資料となります。

ポートフォリオは、英語の「portable(ポータブル)=携帯用の」に通じます。その意味から考えても、ポートフォリオは、就職活動を始めて面接に進んだ段階で作れば良いというものではありません。

転職活動をすると決めた時点だけでなく、クリエイターとしての自己紹介の資料として日頃から準備・携帯して置くべきものです。

フリーランス場合は特に、ポートフォリオは常に準備・携帯して置くべき自己をPRする上で非常に大事な資料になります。

新たな仕事を獲得する上では、「ジョブディスクリプション」と同様に、一度作成して満足することなく、スキルと導入実績を増やしながら定期的にブラッシュアップすることが重要になります。

■企業がジョブディスクリプションを導入する3つのメリット
近年、日本でも海外同様にビジネスマンの働くモチベーションが変わり始めています。

特に、グローバル展開を進めている企業では、外国人の労働者が増えるにつれ、ジョブディスクリプションに基づくグローバルな人材マネジメントに移行するケースが増えています。

1、成果に応じて報酬が大幅にアップする。
給与基準が明確な職務給は、成果、スキルアップへの意欲向上への火種となる要素を持っています。

勤務時間や雇用のあり方が多様化した現代では、「会社にいる時間で給与が決まる」という考え方は賃金の上でも納得ができない社員が増える可能性があります。

2、成果に応じて報酬が大幅にアップする。
個人の成果や責任、業務の種類に基づいて給与が決まる職務給と成果主義の組み合わせで給与が決まるようになると、働く時間は関係なく、成果に応じて報酬を得ることが可能になります。

そのため、時短勤務となってしまう子育て世代や介護、またはその両方を抱えるダブルケアといった時間的制約のある社員もモチベーション高く業務に取り組めるようになります。

3、社内にスぺシャリストを育成できる。
社内でスペシャリスト人材の育成や活用が進んでいくことも期待できます。

年功序列型の賃金体系で採用される職能給制度では勤続年数が給与に反映されるため、若手人材や中途採用の即戦力人材のモチベーションが下がりやすいというデメリットをカバーできるのもメリットです。

この点で、他社にて経験を重ねた専門職人材を採用しやすい、ということもメリットとして言えます。

■ジョブディスクリプションに関係する職能給と職務給の違い
これまで、日本の企業の多くにジョブディスクリプションに相当するものがなかったのは、欧米企業の賃金制度が基本的に職務給であるのに対し、日本では職能給が普及していたことが大きな理由になります。

1、職能給とは?
職能給とは、従業員個人の「職務遂行能力」を基準とした賃金制度のこと。後ほど紹介する職務給と同じく、基本給を構成する要素の一つです。

職能給の評価基準としては、職務に対する「知識」や「経験」、職務に必要な「技能」や「資格」、リーダーシップやコミュニケーション能力、ストレス耐性などの「ヒューマンスキル」が挙げられます。

これらのスキルは、企業での職務経験を通じて身に付く能力とされているため、職能給は役職や勤続年数を基に判断されることが多いようです。

また、職能給は「終身雇用」や「年功序列」を前提としているため、成果にかかわらず勤続年数に応じて賃金が上がるという一面があり、「人に仕事を付ける」という考え方が根本にある賃金制度だと言えるでしょう。

2、職務給とは?
職務給とは、担当する職務の内容や責任の度合いに応じて給与を支払う賃金制度のことを指します。

職種や業種の専門性を重視することから、成果主義や同一労働同一賃金といった制度とマッチしやすいと考えられています。

そのため、働き方の多様性や働く人材の多様性が広がってきた昨今では、注目を集めるようになっています。

職務給は、業務や職種の難易度や責任の度合いで評価するため、同程度の業務レベル、責任の度合いであれば、勤続年数に関係なく同評価で賃金が決まります。

「人に仕事をつける」の職能給に対し、こちらは「仕事に人をつける」になります。

■ジョブディスクリプションに記載する項目
欧米の企業がジョブディスクリプションを作成する目的は、それぞれの社員の職務について明確に規定し、曖昧さを排除するためになります。

業務上の無駄や非効率が少なくなり、組織の生産性向上に繋がることが、ジョブディスクリプションによる人事管理のメリットの一つになると言えます。ジョブディスクリプションに記載される代表的な項目は、下記のような内容になります。

・職務のポジション名
・目的
・責任
・内容と範囲
・求められるスキルや技能
・資格など

特に職務内容と範囲については、どのような業務をどのように、どの範囲まで行うかといったところまで詳細に記述されます。

また、各社員の職務の成果は、ジョブ・ディスクリプションに記述されていることができたかどうかという客観的な基準で判定されるため、評価への不満や不公平感が起こりにくくなります。

■ジョブディスクリプションは人材募集にも役立つ訳
中途採用社員の不満の多くは、勤続年数は多いが自分より劣ると思われる人が自分より給与が高いことです。

反対に、成果を期待して高額の契約をしたのに、全く社内で振るわない中途採用社員を迎えた場合も多くの社員に不満をもたらします。

この不満を払拭し、互いに納得感のある賃金で、新しい仲間を迎え入れるために職務給をベースに「ジョブディスクリプション」を作成すると良いアピール材料になります。

人材を募集する場合も、採用したいポジションのジョブディスクリプションを求人情報として提示し、雇用契約を結びます。

求職者は、ジョブディスクリプションを見た上で応募するかどうかを決めるのが一般的であり、ミスマッチが少なくなるメリットがあります。

ジョブディスクリプションの作成にあたっては、その職務に就いている人へのインタビューに基づき、人事や部門のマネージャー、時には幹部クラスも加わって議論しながら定義していくのが通例です。

ただし、企業の戦略やビジネス状況が変化すれば、職務の目的も内容も変わるため、作成したジョブディスクリプションは定期的に見直しをかけ、更新していくことが重要です。

■ジョブディスクリプションの導入のポイント
成果主義に近い給与体系となる職務給制度は成果が上がらない、業種、責任の範囲から賃金が上がりにくい部署が発生するなどのデメリットがあります。

例えば、一般事務職として勤務する従業員は、コミュニケーション能力、事務処理能力を磨き、社内の潤滑剤として活躍しているはずなのに、営業職や専門性の高い職種の人材と給与のベースが分けられており、非生産部門として高い賃金設定となりにくいということが起こります。

成果ベースでの考え方も、会社への帰属意識や愛着心を育てにくいという面もあり、離職防止への対策を考える必要があります。

特定の職務に特化した人材の採用で業務推進力の向上が期待できる反面、採用コストが増える可能性があり、さらに、特化型の人材は、配置転換時に融通が利かない、その職種が必要でなくなった場合の処遇に困る、という面もあります。

また、成果を公平に評価するために、より細かな評価が必要になります。

■まとめ
ジョブディスクリプションとは、「職務記述書」を指します。海外の企業では、採用応募時に会社と求職者にとって事前に作成することが必須となる仕事情報にあたります。

人事評価にも利用できる書類になるためで、ジョブディスクリプションの中に記載された職務内容の達成が、仕事に対する評価に大きな影響を与えます。

日本企業でも外国人の採用が盛んとなった近年、日本企業でも用いられるケースが増えてきました。必要とするスキルや経験を明記したジョブディスクリプションを用意しておくことで、下記のようなメリットが得られます。

【採用する側】
特定の業務領域の経験を持っている人材を採用・育成しやすい。

【採用される側】
・明確に分けられた領域でキャリアを積むことができる。
・その分野のスペシャリストとして成長する機会を得やすくなる。

これまで日本の雇用形態では、「職能給」が導入されてきましたが、欧米では「職務給」制度がメジャーになっています。社会経験を増すに従って、ほとんどの職業のビジネスマンが自然とフリーランスとして生きていくための技能と専門性を高めていきます。

今後、日本でも、「職能給」から「職務給」への移行する会社が確実に増えて来ることが予想されています。職務給制度の元では、年齢は関係なく、仕事の「内容」や「スキル」そして「実績」によって報酬が大幅に変わります。

仕事の難易度や重要度が賃金に影響を与えるため、「ジョブディスクリプション」が必要となります。

■最後に
職務内容が、人材の募集と人事評価の基本となる海外企業では、「人材募集と評価時にジョブディスクリプションが必要」といったように、日本以外の企業で働く場合には、当たり前の書類になります。

欧米では、企業が人材を募集する際には、正社員を問わずフリーランスへの仕事依頼の場合でも、求職者や人材紹介のエージェントからジョブディスクリプションの作成が必須要件になります。

なぜなら、求人情報にジョブディスクリプションが明記されれば、求職者は自分の能力に見合った希望の職種を選択し、適切な報酬で仕事をすることが可能になるからです。

フリーランスの場合は特に職務内容が明確になるため、安心して職務に当たることができると言えます。起業家大国のアメリカでは、今や3人に1人はフリーランスです。

その理由としては、欧米企業では、フルタイムの従業員をたくさん抱え込むよりも、フットワークを軽くするためにプロジェクト単位で雇えるフリーランサーの需要がものすごく高いからです。

海外では、「リソースマネージャー」というコネクターがおり、企業の課題や要望に合わせてフリーランサーをアサインすることを仕事とする「フリーランスエージェンシー」が機能しています。

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本田季伸のプロフィール

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