バランストスコアカードとは?BSCが企業の目標達成に繋がる訳

投稿日: 作成者: KENJINS運営会社社長 カテゴリー: 働き方改革   パーマリンク

現在、日本企業には、激変する経営環境に対応するため、戦略と計画がどのように策定・実行されるかを評価、管理できる意思決定システムを早急に構築する事が強く求められています。

ですが、個人の目標管理制度、パフォーマンス評価、スキルアップ計画といった人事システムが、企業戦略とリンクしていないと言われています。

そこで、今回、バランストスコアカードとは?BSCが企業の目標達成に繋がる訳について解説します。

「何かに挑戦したら確実に報われるのであれば、誰でも必ず挑戦するだろう。

報われないかもしれないところで、同じ情熱、気力、モチベーションをもって継続しているのは非常に大変なことであり、私は、それこそが才能だと思っている。」

<羽生善治>

■バランススコアカードとは?
バランス・スコア・カード(BSC)とは、企業が持つ4つの視点(財務、顧客、内部プロセス、成長・学習)がどのように企業の業績やビジョンに影響を与えているかを可視化する業績評価システムです。

企業の戦略目標などを評価し、KGIやKPIの策定に結びつけるためのフレームワークです。

1、財務:株主に対してどのように行動するか
2、顧客:顧客に対してどのように行動すべきか
3、社内プロセス:どのような業務プロセスが必要になるか
4、学習と成長:どのように組織・従業員を成長させるのか

バランススコアカードは、財務的な業績評価指標である「財務」のほか、非財務的な業績評価指標である「顧客価値」「業務プロセス」「(人材の)学習・育成」の項目があります。

バランススコアカードを用いることで、きちんとした戦略目標ができ、経営をバランスよく進めることができます。

■バランススコアカードが生まれた背景
バランススコアカードが生まれた背景背景には、伝統的な経営管理システムや分析手法が精緻化したにも拘わらず、次第に機能しなくなってきたという事実があります。

近年、バランススコアカードが改めて注目されている理由としては、インターネットの登場により以前よりも「ビジネスの複雑化」という問題があります。

つまり、企業を取り巻く環境や前提条件がより複雑で厳しくなり、将来が過去の延長線上になく、予測が難しくなってきたのです。

ITが生まれ、テクノロジーが進化し、どの市場にも新興勢力や競合が増えた1990年代前半、ビジネスの不確実性は高まりました。

安定しているように見えた業界にも、次々にイノベーティブな企業が進出し、漫然と経営を進めるだけでは淘汰されるようになったのです。

企業に対する評価は財務的データだけでなく非財務的データも重要視されるようになりました。この将来予測が難しい時代に、「戦略の実行」を確実に実現するツールになります。

■バランススコアカードの役割
バランストスコアカードの発祥は、1992年にアメリカの「Harvard Business Review」において発表された業績評価システムだといわれています。

企業のヴィジョンや戦略を実行・管理するためのフレームワークであり、戦略目標を重要成功要因、業績評価指標、ターゲット数値、アクションプランとブレイクダウンし管理していきます。

多くの経営者は、顧客満足度やブランド調査という将来の収益に大きく影響する指標が重要だと十分認識はしているが、それらが定期的に測定されず、または測定されていても企業戦略とリンケージを持たない場合が多く見受けられます。

実際は、戦略の遂行状況は過去の企業活動の結果を示す財務指標(例えば毎月の売上げ・利益)でしか定期的に測定・管理されていないという事が多いです。

そのため、企業は会社全体に注力するのではなく、プロジェクト単体にリソースを分散させてリスクヘッジをすることが求められました。

これまで財務だけを見て計画を立てていた経営者たちは、細分化することが大切だということに気づいたのです。

多角的かつ具体的に事業計画を練るようになり、バランススコアカードが生まれました。バランススコアカードを用いることで、会社全体の財務状況という大枠だけでなく、プロジェクトごとの要素を軸に考えることができます。

■バランストスコアカードの4つの特徴
バランス・スコアカードの考え方は、下記のような有用性があり、近年では、単なる業績評価のシステムとしてだけでなく、戦略マネジメントシステム、さらには変革のフレームワークとして活用されることが多くなっています。

1、ビジョンと戦略の明確化
企業が社会的成功を目指して進む方向は、ビジョン(将来構想)と戦略によって決まります。バランス・スコアカードはこのビジョンと戦略の立案と検証をサポートし、より明確にします。

そして従業員や株主らステークホルダーが企業の進む方向を理解するのを助けます。

2、戦略の具体的活動への展開
ビジョンや戦略はともすれば抽象的なものになりがちですが、バランス・スコアカードはそれを具体的な戦略目標や施策に展開し、さらに現場のターゲットやアクションプランとして、各従業員が何をすべきかまで落とし込みます。

これによって、従業員の行動が戦略を実現する活動に結び付きます。

3、バランスのとれた業績評価
バランス・スコアカードはその名のとおり、バランスのとれたスコアカード(評価表)です。次でご説明するように4つの視点でバランスよく戦略を考えます。

さらに、財務と非財務、内部情報と外部情報、過去と現在と将来、短期的視点と長期的視点、ステークホルダーなど、さまざまな意味でバランスのとれた評価を実現します。

4、継続的な経営改善
バランス・スコアカードは上記のようにビジョンと経営戦略を立案し、具体的行動にまで落とし込み、業績評価指標として評価します。

その結果、立案した戦略が正しかったかどうか見直され、経営資源の再配分も含めて、経営の改善を継続的に図ることになります。

■バランス・スコアカードの導入効果
ある会社では、景気低迷の中、新しい収益源を模索していましたが、バランス・スコアカードの導入により、新しいビジネスモデルが創出されました。

バランス・スコアカードは、収益拡大のための戦略立案、社内変革ツールとして利用することが可能です。

・戦略や計画を組織や社員へ浸透させることができる。(ビジョン浸透)
・戦略や計画と整合性ある目標を数値化して設定することができる。(目標の数値化)

・業務プロセスや社員意識の変革を促進する。(社員の意識改革)
・将来どうしたいのか、今何をすべきかが明確になった(ビジョン定義)

・戦略的思考が身に付き、成功する為のポイントが浮き彫りになった(CSF定義)
・部門目標だけでなく、個人レベルでの目標が具体化された(KPI設定)

・業務に対する理解が進み、新しい業務プロセスの構築に役立った(変革)
・新しいビジネスに必要な要素が判明し、何が足りないのか理解できた(モニタリング)

・間接部門による財務的な貢献度を意識するようになった(ミッション定義)
・間接部門の役割、重要性を再認識させられた(コアバリュー定義)

・非財務数値による業績評価で社員のモチベーション向上に繋がった(KPI設定)
・社内プロセスを見直すきっかけとなり、業務改善が進んだ(変革)

・必要なスキルが明確になり、そのための研修が行われるようになった(変革)

バランス・スコアカードは、収益を創出する営業部門等だけでなく、会社を支える間接部門のコスト削減や効率化にも効果を発揮することができます。

ツールとして提唱されて20年以上が経過し、その導入や効果も実績が増えて来ています。今だからこそバランス・スコアカードの有用性に目を向けてみては如何でしょうか?

■バランストスコアカードの4つの視点
バランストスコアカードでは、従来のフレームワークが財務面の指標を重視していたのに対し、財務に加えて、顧客、業務プロセス、学習と成長という財務以外の視点を加えた計4つの視点によって構成されます。

視点にウェイトを置きながら、状況に応じて目標達成のための計器盤の役目を果たしていくのです。

それぞれの視点の具体的な説明及び代表的な業績評価指標は以下のとおりです。

1、財務の視点
バランススコアカード(BSC)の4つの視点を評価し、各視点の因果関係や相互関係を客観的に把握できることで、経営の問題点などを見出し売上・収益向上の戦略ができます。

株主や従業員などの利害関係者の期待にこたえ企業業績として財務的に成功するためにどのように行動すべきか。

代表的な指標としては、売上高、利益率、利益額などのP/L指標や自己資本比率などのB/S指標の他に、最近注目を集めているROEやEPSなどの株主に対する指標などがあげられます。

2、顧客の視点
顧客の視点から、顧客に対する有益な製品・サービスが提供できているか客観的に判断すること、会社の視点から、顧客満足度と収益のバランスを把握することで、現場レベルでの対策、方向性を考えることができます。

企業のビジョンを達成するために、顧客の立場からまたは顧客に対してどのように行動すべきなのか。

代表的な指標としては、前者の顧客の立場からの視点としては満足度や繰り返し購買率などが、後者の企業の立場から顧客をみる視点としては、顧客当たり売上高や顧客当たり費用などがあげられます。

3、業務プロセスの視点
業務フローの改善やコストダウンの見直しなどそれぞれの関係性を把握して、生産性を向上するためにはどのような業務改善をすべきかについて客観的な視点から対策を講じることができます。

財務的目標の達成や顧客満足度を向上させるために、優れた業務プロセスを構築します。

代表的な指標としては、サービスや製品を開発するイノベーションプロセス、サービスや製品をデリバリーする生産や購買や販売などの各オペレーションプロセス、サービスや製品を提供した後のアフターサービスなどのプロセスごとに様々な指標が想定され、それはビジネスモデルによって大きく異なります。

4、学習と成長の視点
バランススコアカード(BSC)を活用することで、人材採用、研修、能力開発、リーダーシップ育成などの会社の経営戦略にプラスに働く人材育成方法を客観的に判断できます。

企業のヴィジョンを達成するために組織や個人として、どのように能力向上を図るか。代表的な指標としては、社員定着率、従業員満足度、能力向上率などがあげられます。

これらの視点に基づき、戦略目標の因果関係や関連を図式化したものが、いわゆる戦略マップと呼ばれるものになります。

■バランストスコアカードの活用の6つの手順
バランストスコアカードの活用については、以下の6ステップに従って進めてゆきますので、再度整理して紹介します。

1、企業のビジョンと戦略の策定
まず、企業の置かれている市場環境や競争環境などを踏まえた上で、全社としてのヴィジョンと企業経営の戦略を策定します。ビジョン、ミッション定義、コア・バリュー定義を行います。

そもそも会社の使命や存在価値は何か?そのビジョンは?を明確にして認識します。そのうえで”戦略の可視化”を図ります。

2、各視点の戦略目標(KGI)と重要成功要因(CSF)の抽出
次に、財務、顧客、業務プロセス、学習と成長の各視点に基づき、前段で策定した企業のヴィジョンと戦略に従った戦略目標(KGI)を抽出します。

そして、その戦略目標を達成することにダイレクトに紐付く重要成功要因を決定します。その際に、SWOT分析(クロス分析)などにより重要成功要因を洗い出すことも有効です。

3、ターゲット数値及びアクションプランの設定
続いて、抽出した戦略目標と重要成功要因を実現・評価するための重要評価指標(KPI)を決定します。これらは、ある程度の時間軸に従って設定することも有効です。

そして、その重要評価指標を全社的に承認することにより、社内での共通言語として目指すべきラインを共有します。

業績評価指標としては、KGIとKPIが一般的に利用されることが多く、主に下記の2つを指標とします。

・KGI:Key Goal Indicator(重要目標達成指標)
・KPI:Key Performance Indicator(重要業績評価指標)

例えば、4つの視点ごとに下記の通り設定されます。

1、財務の視点:売上高成長率、営業利益率
2、顧客の視点:新規案件数、既存リピート率
3、社内プロセスの視点:アポイント取得数、訪問顧客数
4、学習と成長:営業増員数、研修実施数

4、バランストスコアカードの完成と戦略マップの作成
これまでのステップを踏まえ、整合性・ストーリー性のあるバランストスコアカードを完成させます。

合わせて、戦略目標の関係性を戦略マップとして作成することにより、それぞれの戦略目標のつながりが明示され、全体像をメンバー間で共有することに役立ちます。

5、バランススコアカードの落し込みと運用
ここで、全社のバランストスコアカードを事業部、部課、個人単位など上位から下位までのレイヤーに展開します。

それぞれのレイヤーでのバランストスコアカードの戦略目標の達成が全社の戦略目標達成につながるよう整合させ、各レイヤーの方向性を一致させます。

6、モニタリング
最後に、バランストスコアカードの運用として、設定した重要評価指標のターゲット数値の達成度を確認し、PDCAサイクルにより振り返りと改善活動を継続的に行います。

重要評価指標の達成は各レイヤーの評価につなげると、より効果的にバランストスコアカードを運用できます。

また、設定した重要評価指標の実現が重要成功要因を通じて戦略目標の達成につながっているかのチェックも行い、その状況に応じてバランストスコアカード自体のブラッシュアップを行うことも肝要です。

■まとめ
バランストスコアカードは、企業を将来の競争優位へ導くために必要な計器をマネージャーに提供するものになります。企業のミッションや戦略を、戦略的業績評価やマネジメント・システムのフレームワークを提供する包括的な業績評価指標に置き換えることができます。

その特徴は、「財務の視点」「顧客の視点」「社内ビジネスプロセスの視点」「学習と成長の視点」という、4つのバランスのとれた視点に沿って、企業の業績を評価することです。

企業は、これにより財務的な成果を追跡すると同時に、将来の可能性を築き上げるための進路を見守ったり、将来の成長に必要な無形資産を取得したりすることが可能です。

バランストスコアカードの基本的な考え方として、トップダウンでヴィジョンや戦略を組織の末端までアクションプランに落とし、それを体系的かつ定量的に管理するというものがあります。

これは、外部環境の変化が限定的または予測可能で、トップダウンの意思決定で事業活動を展開する場合にはマッチする考え方です。

バランストスコアカードは、非財務情報を重視するバランスのとれた業績評価手法としてだけでなく、戦略を多面的に考えるツールとして評価され、顧客だけでなく他のステークホルダーの視点も積極的に反映するようになりました。

その流れで、最近の企業経営で避けて通れないSDGs(持続可能な開発目標)を検討する際にも、大いに活用されています。

■最後に
会社の成長には、目的に向かって戦略を立て、絶えず改善しながら進んでいくための経営戦略が必要です。しかし、場合によっては問題点を見失うこともあります。

そこでバランススコアカード(BSC)により4つの視点からバランスよく可視化することによって、気付きが生まれ、より早く戦略的な実践へとつなげていくことが期待できます。

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