新規事業の場合、まだ既存の商品やモノのない市場だったりするため、一見異なる業界も含めて大きめで競合や他社をとらえてポジショニングマップを作る必要があります。
顧客ニーズと競争優位性の両方を揃えた独自のポジショニングを見つけ出すことは、マーケティング戦略を立てる際の大きな課題です。
そんなときにポジショニングマップをうまく活用できると、効果的に独自のポジションを見つけ出すことができます。
そこで、今回はポジショニングマップとは何か、新規事業はポジショニングが重要な訳、ポジショニングマップの作り方について解説します。
■ポジショニングマップとは?
ポジショニングとは、ターゲット顧客に自社製品・サービスを認識してもらうため、競争優位性のある独自のポジションを築くことを指します。
新規事業の事業計画書に限らず、マーケティングの企画書などでも、必ずといっていいほど見るのがポジショニングマップです。
ポジショニングマップは、英語で、「positioning map」と表記されます。日本語では、自社の製品・サービスの競争優位性ある独自の場所を表すための地図という意味があります。
ポジショニングを導き出す作業を効果的に行う手法の一つを指し、縦軸横軸があり、競合の会社や商品、サービスがマッピングされていて、自分たちの商品やサービスがどの軸で差別化できているのかを示した図です。
市場における各商品のポジションを、縦軸と横軸からなる2次元で表現しますので、各商品の関係性をひと目で把握できます。
ある特定の製品・サービスの特徴を明確にするために製品・サービスをマッピングする場合と、業界構造に対する自社の戦略や位置づけを明確にするために市場全体をマッピングする場合があります。
それによって、まだ満たされていないニーズのある有望な市場を見つけ出すことにつながります。
■ポジショニングマップを作る理由
ポジショニングでもっとも大切なのは特定カテゴリーの中で、ナンバーワンになれるかどうかです。そして、ポジショニングマップは「No.1を取れるカテゴリー」を発見するために便利なツールとなります。
頭の中で競合と比較するだけではなく、実際に「図」を描いて比較していくのがポジショニングマップの特徴となります。
ポジショニングマップを作る理由は2つあります。
1、競合とは異なる自社の立ち位置を明確にするため
2、ターゲット顧客に必要とされるカテゴリーであるかを確認するため
何の市場リサーチもないまま自社の強みで事業を進めてしまうと、高い確率で同じような商品・サービスは市場に提供されていた、という残念なオチが待っています。
自社は「競合に負けないぐらい商品力はあるんだけどなぁ」という経営者もいるでしょう。
しかし、最終的に大切なのは、顧客がどう感じているかです。顧客がライバルと同じように感じているのだとしたら、それはポジショニングに失敗しているということです。
■ポジショニングマップの作り方
ポジショニングマップを作るには、まず、ポジショニングマップで作成した自社の立ち位置が、顧客の求めている需要とマッチしているか確認しましょう。
そんなこと当たり前のことだと思うかもしれませんが、競合との差別化ばかりに夢中になっていると顧客のことを忘れてしまうことも意外とあります。
それは、アイデアを出している段階で話が盛り上がり、顧客が欲しいものではなくて自社のやりたいことになってしまうケースです。
ポジショニングマップの作り方は、次の手順となります。
1、ポジショニングマップの軸を選定する。
2、選定した軸を縦軸、および横軸として、自社および競合の商品をプロットする。
ポジショニングマップは、どのような軸を選定するかによりまったく異なります。ポジショニングマップを作成する際の軸のとり方を、以下で見ていきましょう。
■ポジショニングマップを作る4つのポイント
前提として知っておかなければいけないのが、新規事業、新サービス開発の場合と、新商品開発の場合ではポジショニングマップの作り方がまったく異なるということです。
1、独立性の高い2軸を設定する
相関が高い要素を軸として選ばないのも、ポジショニングマップを作成する際のポイントとしてあげられます。相関が高い要素として典型的な例として、「価格」と「品質」があげられます。
価格と品質は多くの場合に比例するため、この2軸でポジショニングマップを作成すると、すべての商品が右肩上がりの直線状にプロットされます。
右肩上がりの直線状にプロットされるのでは、実質的に1軸しか選んでいないのと変わりません。
そのため、ポジショニングマップで軸を決める際は、2軸の要素を独立させ、かつ重要度の高いものにすることが重要です。
例えば、2つの軸を機能と価格とした場合、機能と価格は比例するため有効なポジショニングマップになりづらいと言えます。
2つの軸は独立性の高い要素を選ぶことが重要になります。
独立性があっても、重要でない軸でマップを作ると、競合との差別化ができても大きな差別化要因とならないため、注意が必要です。
2、購買決定要因を重視する
ポジショニングマップを作る際にまず重要なのは、軸を決定する際に購買決定要因(KBS:Key Buying Factor)をよく考慮することです。
KBSとは、顧客が商品を購入する際に重視する要素です。
KBSと関係がない要素を軸として選んでしまうと、そもそも顧客にとっての差別化になりえません。
購買決定要因とは、購入対象となる製品・サービスに含まれる価値や価格のうち、顧客が商品の購買を決める際に重視する要素を指します。
顧客が商品・サービスを選択するときの購買決定要因を見極めた上でポジショニングマップを作成することが重要です。
購買決定要因が複数存在する場合、特に重要な2つの要因を軸に定めます。KBSをよく見極め、そのうちとくに重要な2つの要因を使用してポジショニングマップを作成していくことが大切です。
3、競合がとりづらく、空いているポジションを狙う
ポジショニングマップを作成する目的は、「競合と差別化でき、競争優位性のある独自なポジションを探す」ことにあります。
そのため、ポジショニングマップを作成するにあたっては、KBSに該当する重要な2軸を選びながらも、競合が存在しない領域がある軸の選定が重要です。
その領域が、競合がとりにくいポジションでありながら、自社でポジショニングが可能であれば、その領域が「競争優位性のある独自ポジション」となります。
ポジショニングマップを作成する際は、隙間の空いているところに自社の商品・サービスを位置づけます。その際、意識的に競合がとりにくいポジションを選ぶ必要があります。
それによって、競合の商品・サービスと重複しないポジションを獲得し、自社の競争優位性を確立しやすくなります。
4、将来に渡り、優位性を構築できるポジショニングをとる
ポジショニングを決める際には、出来る限り長い期間に渡って優位性を築けるようなポジショニングをとります。
そのために、時代の移り変わりや世間の関心に左右されず、将来にわたって優位性を保てる2軸を選ぶことが大切です。
また、時代が進むにつれて、商品・サービスに求められる要素が大きく変化する可能性があります。
その場合は、これまでと同じポジショニングマップに固執することなく、その時々に応じたポジショニングマップを構築し直す判断を行うことも大切です。
■ポジショニングマップの軸となる6つのパターン
ポジショニングマップにおける軸のとり方には、6つのパターンがあります。
「製品特性・仕様」「消費者へのメリット」「価格と品質の関係」「用途の特定」「競合製品」「他社製品と関連性」という軸を組み合わせて検討することで、競合に対して優位性のあるポジショニングを見つけ出しやすくなります。
1、製品特性や仕様に基づく軸のとり方
ポジショニングマップの軸としてまず考えられるのは、商品の仕様や機能をそのまま使用します。
仕様や機能とは、たとえばPCであれば、処理速度やHD容量の大きさ、自動車であれば最高速度や乗車定員、燃費などとなります。
商品の仕様や機能は、どうしても専門的になりがちです。
そのため、専門知識を持っている顧客をターゲットとするケースにおいて、これらを軸とすることが向いています。製品の特性や仕様に基づいた軸をとり、ポジショニングを決定します。
専門的な要素が強くなりやすいため、素人よりも専門知識を持っているターゲット層に訴求したい場合に向いているポジショニングです。
例えば、処理速度の速さ・容量の大きさ・最高速度・乗車定員・燃費・最小位回転半径などの観点から軸をとります。
2、消費者へのメリットに基づく軸のとり方
消費者が感じるメリットに基づいた軸をとり、ポジショニングを決定します。
感覚的・感情的な要素が強くなりやすいため、定性的な要素で訴求したい場合に向いているポジショニングです。
商品の仕様や機能そのものではなく、商品が顧客に対して満たすニーズや、提供するベネフィット(恩恵)にもとづいて軸をとることもできます。
ニーズやベネフィットは、仕様や機能に比べれば感覚的となります。
そのために商品のポジショニングをより一般的な表現で、定性的に訴求しようと思う場合にこれらを軸とするとよいでしょう。
例えば、高級感・プライベート感・楽しさ・安心感・手軽さなどの観点から軸をとります。
3、価格と品質の関係に基づく軸のとり方
価格と品質の組み合わせで軸をとり、ポジショニングを決定します。
高価格・低価格・高品質・低品質の4つの要素から選ぶため、衣服や食材などの日常的に使う商品・サービスを検討する場合に向いているポジショニングです。
例として、「リーズナブルな品質で、お買い得な価格」で訴求する場合などが挙げられます。
4、用途に基づく軸のとり方
ある特定の用途に絞って軸をとり、ポジショニングを決定します。自社の商品・サービスを品質面や価格面で差別化することが難しい場合に向いているポジショニングです。
商品が、どのような機会や用途で使われるかも、ポジショニングマップの軸にできます。
例として、「アウトドアスポーツ専用の自動車」「アウトドアかインドアか」「人事か営業か」「人事や給与精算に特化したシステム」などが挙げられます。
5、競合製品に基づく軸のとり方
競合製品の特性やメリットにもとづく軸の選択も、ポジショニングマップ作成の際の戦略の一つです。
「高品質なのに低価格」など、競合と明確な差別化ができる際に有効です。
競合製品の特性・メリット・価格・用途の差異に基づいた軸をとり、ポジショニングを決定します。2軸のうち片方の軸に対し、明確に差異を認識できる場合に有効なポジショニングです。
例として、「他社より高品質なのに低価格」、「(自動車の場合)7人乗りなのに小回りが効く」などが挙げられます。
6、他社製品との関連性に基づく軸のとり方
自社製品・サービスと他社製品・サービスとの関連性に基づいた軸をとり、ポジショニングを決定します。
直接競合する商品・サービスとの差別化を図る場合に向いているポジショニングです。
例として、自動車の良さを訴求する際、同じ移動手段として関連性のある飛行機の例えを用いて「ビジネスクラス並みのゆとりと快適性を兼ね備えた乗り心地」という表現で訴求することなどが挙げられます。
■ポジショニングマップ作成時の注意点
ポジショニングマップを作成して、競合よりも優位に立てそうなポジションを見つけたとします。しかし、顧客にとっては「違いがわからない」というポジションも存在するので注意が必要です。
ですので、いくら顧客にとって必要性を感じているポジションであったとしても、それは顧客にとって理解できるポジションでなければ意味がないということです。
ポジショニングの考えでは事実よりもイメージの方が遥かに大切になるのです。
また、どれだけ優位なポジショニングマップを見つけたとしても、自社(自分)のスキルでは不可能なことでポジショニングすると信用失墜に繋がります。
ですので、できないことでポジショニングしてしまうと逆効果の結果を生んでしまいますので、実現できないことは公言しないようにしてください。
■まとめ
今回は、独自のポジショニングを見つけ出すのに有効なポジショニングマップについて説明しました。
適切なポジショニングマップを作れることで、ヒット商品につながるポジショニングを発見したり、効果的なマーケティング戦略を立てたりできる確率が上がります。
会社の規模によっては容易にポジショニングを変えることが難しい場合もありますが、一度、マップを作ってみたら早い段階で市場に投入してテストしてみることも大切な取り組みになります。
なぜなら、商品やサービスをリリース後、マーケットや顧客からの反応が悪ければ、ポジションを変更したり事業の方向性をピポッドすることも重要な取り組みになるからです。
市場の反応を得ることで初めて「こんな軸の取り方もあるんじゃないか?」と革新的なアイデアが多数出てくることもありますので、ビジネスの現場で場数を踏むことをオススメします。
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