■内容紹介
その日、私は銀行で通帳に記入を行っていました。銀行のATMに通帳を差し込んで待ちます。
……ジーカチカチ、……ジーカチカチ。
音が止まるまでぼんやり突っ立っていましたが、内心はドキドキです。きちんと予定通りにお金が振り込まれていなければ、あとで大変なことになるとわかっているからです。
祈るような気持ちでATMをにらんでいると、やがて音が止まり、通帳がスーッと出てきました。
それを引っこ抜くように取り出すと、記帳された部分を開いて数字を追います。
「……なんや、これは……」
ぽつんと口から言葉が漏れました。
四〇軒の店子のうち、家賃の支払日どおり、きちんと支払ってくれていたのは、わずか一五軒。
「どういうことや」
私はもう一度つぶやくと、その場に立ちすくんでしまいました。
使った分のお金を払う。必要な対価としてお金を払う。決められた日時を守って払う。
ごくごく普通の暮らしをしている方や、日々、常識的な生活をしているのならば、当たり前のことです。考えてみてください。スーパーマーケットでキャベツを買って、お金を払わずに持って行きますか? 喫茶店でコーヒーを飲んで、お金を払わずに店を出ていきますか? バスや電車に乗るときに、お金を払わずに乗っていきますか?
そして、借りている部屋の家賃を払わずに住み続けられますか?
……ありえない。
それが、当然のごとく約束の期日に払われていない。
それまで、真っ当とまでは言いませんが、ごくごく普通の感覚を持って生きてきた私の「常識」が覆された瞬間、そういうこともあり得るのだと、思い知らされた瞬間なのでした。そして、それが私が半生を費やすことになる、「回収業務」の始まりだったのです。
――これは賃貸マンションや繁華街のテナントビルの家賃回収に奔走しつづけた、私の家賃回収残酷体験記です。
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顧問本人 業種:コンサルティング・リサーチ・専門事務所